中小企業に顧問弁護士は必要?導入すべきタイミングと活用法
「うちのような中小企業に顧問弁護士は必要ないだろう」「法務部がなくても何とかなっている」と考える経営者の方は少なくありません。しかし、法務部を持たない中小企業こそ、実は法的リスクに対して脆弱な状態にあります。従業員を1人でも雇用した時点で労務トラブルのリスクは発生し、取引先が増えれば契約トラブルの可能性も高まります。本記事では、中小企業に顧問弁護士が必要な理由と、導入を検討すべき具体的なタイミング、そして効果的な活用法について解説します。
INDEX
「中小企業に顧問弁護士は不要」は本当か?
「顧問弁護士は大企業のもの」という認識は、実態とは異なります。むしろ法務部門を持たない中小企業こそ、外部の法律専門家によるサポートが必要です。
法務部がない企業ほど顧問弁護士が必要
大企業には通常、法務部門が設置されており、日常的な契約書チェックや労務管理、法改正への対応を社内で完結できます。一方、中小企業では経営者自身がこれらの業務を担っているケースが大半です。
日々の業務に追われる中で、契約書の細かな条項を精査したり、労働法の改正内容を確認したりする時間を確保することは現実的に困難でしょう。その結果、自社に不利な契約条件を見落としたり、法令違反に気づかないまま事業を続けてしまうリスクが生じます。
法務部を設置するには年間数百万円の人件費がかかりますが、顧問弁護士であれば月額3万円〜10万円程度で、必要なときにいつでも専門家に相談できる体制を整えられます。これは中小企業にとって、非常に費用対効果の高い選択肢といえるでしょう。
中小企業が抱える法的リスクの実態
「これまでトラブルがなかったから」という理由で顧問弁護士の必要性を感じていない経営者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、中小企業が直面する法的リスクは年々高まっています。
まず、労務トラブルの増加があります。未払い残業代の請求、ハラスメントを理由とした損害賠償請求、不当解雇を主張する労働審判など、従業員との間で発生するトラブルは深刻化しています。SNSで情報が拡散しやすい現代では、一つの労務トラブルが企業イメージの低下につながることも珍しくありません。
次に、取引先との契約トラブルがあります。口頭での約束やメールのやり取りだけで取引を進めてしまい、後になって「そんな話はしていない」と言われるケースは少なくありません。契約書を作成していても、自社に不利な条項が含まれていることに気づかず署名してしまうこともあります。
さらに、法改正への対応遅れもあります。個人情報保護法、労働基準法、下請法など、企業活動に関わる法律は頻繁に改正されます。知らないうちに法令違反をしてしまい、行政処分を受けるリスクもあるのです。
これらのリスクは、大企業よりも中小企業に大きな影響を与えます。売上規模や従業員数が限られている中小企業では、一度の法的トラブルで経営基盤が揺らぐこともあり得るからです。
中小企業が顧問弁護士を導入すべきタイミング
では、具体的にどのようなタイミングで顧問弁護士の導入を検討すべきでしょうか。以下の4つの場面が目安になります。
従業員を1人でも雇用したとき
従業員を雇用した時点で、企業は労働基準法をはじめとする労働関連法規を遵守する義務を負います。雇用契約書の作成、労働条件通知書の交付、就業規則の整備(従業員10名以上の場合は届出義務あり)など、対応すべき事項は多岐にわたります。
特に注意が必要なのは、雇用時の対応が後のトラブルに直結するという点です。雇用契約書に不備があれば「そんな条件は聞いていない」という争いが生じやすくなりますし、試用期間の設定が適切でなければ、能力不足の従業員を解雇できない事態に陥ることもあります。
従業員を採用する段階から顧問弁護士に相談しておくことで、こうしたトラブルを未然に防ぐことができます。就業規則の整備について詳しくは「就業規則の作成・見直し」をご覧ください。
新規事業・新規取引を開始するとき
新規事業の立ち上げや新たな取引先との取引開始は、ビジネスチャンスであると同時に、法的リスクが高まるタイミングでもあります。
新規事業では、その事業分野特有の法規制を確認する必要があります。許認可が必要な事業であれば、その取得手続きを進めなければなりません。また、新しいビジネスモデルが既存の法律に抵触しないかどうかの検討も欠かせません。
新規取引先との契約では、相手方から提示された契約書をそのまま受け入れてしまうと、自社に不利な条件が含まれていることに気づかないまま取引を開始してしまうリスクがあります。継続的な取引であれば、一度不利な条件で契約してしまうと、その後の交渉で条件を改善することは難しくなります。
契約書のリーガルチェック(法的チェック)を顧問弁護士に依頼することで、不利な条項を事前に発見し、修正交渉を行うことができます。契約書チェックの詳細については「契約書の作成・リーガルチェック」で解説しています。
過去に法的トラブルを経験したとき
一度法的トラブルを経験すると、その対応に多大な時間とコストがかかることを痛感される経営者の方も多いでしょう。「もっと早く相談しておけばよかった」「契約書をきちんと確認しておくべきだった」という後悔の声は少なくありません。
トラブルを経験したタイミングは、まさに顧問弁護士の導入を検討すべきときです。同様のトラブルの再発を防止するための体制整備はもちろん、まだ顕在化していない他のリスクについても点検することができます。
トラブルが発生してから弁護士を探す場合、すぐに対応してもらえるとは限りませんし、自社の事業内容を一から説明する必要があります。顧問弁護士であれば、日頃から自社のことを理解しているため、トラブル発生時にも迅速かつ的確な対応が可能です。
会社を成長させたいと考えたとき
事業拡大、従業員増加、新規取引先の開拓、新規事業への参入など、会社を成長させる局面では、法的リスクも同時に増大します。
例えば、従業員が増えれば労務管理の複雑さは増しますし、取引先が増えれば契約書の量も増えます。海外取引を始めれば国際法務の知識が必要になりますし、M&Aや事業承継を検討する際にはさらに専門的な法務サポートが求められます。
会社の成長を見据えて早めに顧問弁護士との関係を構築しておくことで、成長の各段階で適切なサポートを受けることができます。「トラブルが起きてから」ではなく「トラブルを起こさないために」という予防法務(トラブルを未然に防ぐための法務活動)の観点が重要です。
中小企業の顧問弁護士は大企業と何が違う?
顧問弁護士と一口に言っても、大企業向けと中小企業向けでは求められる役割が異なります。
大企業向け顧問弁護士の特徴
大企業が顧問弁護士に求めるのは、主に高度に専門化した分野での対応です。例えば、M&A、国際取引、知的財産、金融規制対応など、特定の専門分野に精通した弁護士が求められます。
大企業には法務部門が存在するため、日常的な契約書チェックや一般的な法律相談は社内で完結できます。顧問弁護士に依頼するのは、社内では対応が難しい複雑な案件や訴訟に発展した場合などに限られることが多いでしょう。
そのため、大企業向けの顧問弁護士は、特定の専門分野に特化した大手法律事務所であることが一般的です。分野ごとに複数の法律事務所と顧問契約を結んでいる大企業も珍しくありません。
中小企業向け顧問弁護士に求められる資質
中小企業が顧問弁護士に求める役割は、大企業とは大きく異なります。法務部門がない中小企業にとって、顧問弁護士は「社外の法務部」として機能する必要があるからです。
まず、幅広い分野に対応できる総合力が重要です。契約書のチェックも、労務問題も、債権回収も、すべて一人の顧問弁護士に相談できることが中小企業にとっては便利です。分野ごとに別々の弁護士に依頼する手間とコストを省けるからです。
次に、相談のしやすさ、敷居の低さが挙げられます。「こんなことを聞いても良いのだろうか」とためらわせるような威圧感のある弁護士では、日常的な相談に結びつきません。ちょっとした疑問でも気軽に相談でき、迅速に回答してくれる関係性が理想的です。
そして、経営者視点でのアドバイスができることも重要です。法律論として正しいことと、経営判断として適切なことは、必ずしも一致しません。例えば「法的には勝てる見込みが高いが、訴訟に費やす時間と労力を考えると和解した方が経営上は得策」といった判断ができる弁護士が中小企業には求められます。
弁護士法人エースでは、代表弁護士自身が複数法人の代表を兼任する経営者でもあるため、法律論だけでなく経営視点からのアドバイスも可能です。顧問弁護士の選び方について詳しくは「顧問弁護士の選び方」をご覧ください。
中小企業が顧問弁護士を活用するポイント
顧問弁護士と契約したものの「あまり使わなかった」という声を聞くことがあります。せっかく顧問料を支払っているのですから、効果的に活用することが大切です。
日常的な相談を遠慮なく行う
顧問弁護士を活用できていない企業に共通するのは、「こんな些細なことで相談して良いのだろうか」という遠慮です。しかし、些細に見える問題が後に大きなトラブルに発展することは珍しくありません。
「取引先からこんなメールが来たのですが、どう返信すべきですか」「従業員からこんな相談を受けたのですが、どう対応すべきですか」といった日常的な相談こそ、顧問弁護士の本領発揮どころです。
問題が小さいうちに相談することで、トラブルを未然に防いだり、万が一トラブルになった場合でも早期に適切な対応を取ったりすることができます。電話やメール、LINEなど、手軽な方法で相談できる顧問弁護士を選ぶことをおすすめします。
弁護士法人エースでは、顧問先企業の方にはLINEでの連絡も対応しており、ちょっとした相談もすぐに行えます。「弁護士に相談する」という心理的ハードルを下げることで、予防法務の効果を最大化しています。
契約書のリーガルチェックを依頼する
取引先から提示された契約書をそのまま署名してしまうのは、非常にリスクの高い行為です。契約書には、自社に不利な条項が含まれていることも少なくありません。
例えば、損害賠償の範囲が過度に広く設定されていたり、解約条件が相手方に一方的に有利だったり、知的財産権の帰属が不明確だったりすることがあります。こうした条項を見落としたまま契約を締結してしまうと、後からの修正は困難です。
顧問弁護士にリーガルチェックを依頼することで、問題のある条項を事前に発見し、修正交渉を行うことができます。また、自社から契約書を提示する場合には、自社に有利な内容の契約書を作成してもらうこともできます。
就業規則・社内規程の整備を相談する
就業規則は、会社と従業員との関係を規律する重要な文書です。法令に適合した就業規則を整備しておくことは、労務トラブルを防止するうえで不可欠です。
就業規則の整備が不十分だと、問題のある従業員への対応が困難になります。懲戒処分を行うにも、就業規則に根拠規定がなければ処分の有効性が争われます。解雇する場合も、解雇事由が就業規則に明確に定められていなければ、解雇が無効とされるリスクが高まります。
労働法は頻繁に改正されるため、過去に作成した就業規則が現在の法令に適合しているかどうかの確認も必要です。顧問弁護士に定期的に就業規則の見直しを依頼することで、常に最新の法令に対応した体制を維持できます。
弁護士法人エースでは、グループ内に社労士法人を有しており、就業規則の作成・見直しについても弁護士と社会保険労務士が連携してサポートします。法的な観点と実務的な観点の両面から、実効性のある就業規則を整備できます。
顧問弁護士の具体的な活用方法については「顧問弁護士の活用事例」も参考にしてください。
費用面の不安を解消|中小企業向け料金プラン
顧問弁護士の導入をためらう最大の理由は、費用面への不安ではないでしょうか。「毎月の固定費が増えることへの抵抗がある」「費用に見合う効果があるのか分からない」という声はよく聞かれます。
顧問弁護士の費用相場は、中小企業向けで月額3万円〜10万円程度です。日本弁護士連合会のアンケート調査によれば、多くの弁護士が月額3〜5万円を設定しています。
この金額で何ができるかというと、一般的には月3時間程度の法律業務(電話・メール相談、簡単な契約書チェックなど)が含まれます。訴訟対応など時間のかかる業務は別途費用がかかりますが、顧問契約があれば通常料金から1〜3割程度の割引を受けられることが多いです。
費用対効果を考える際のポイントは、「トラブルが起きた場合のコスト」と「トラブルを防いだ場合のメリット」を比較することです。
例えば、未払い残業代の請求を受けた場合、請求額に加えて付加金(未払い額と同額)や遅延損害金が加算されることがあります。さらに弁護士費用や従業員対応に費やす時間的コストを考えると、数百万円の損失となることも珍しくありません。月額5万円の顧問料で、こうしたトラブルを1件でも防ぐことができれば、十分に元が取れる計算になります。
弁護士法人エースでは、月額5万円からの顧問契約プランをご用意しています。月3時間相当の法律業務に加え、電話・メール・LINEでの相談は無制限、予約不要でいつでもご連絡いただけます。個別案件については通常料金の2割引で対応いたします。
顧問弁護士の費用について詳しくは「顧問弁護士の費用相場と料金体系」をご覧ください。
まとめ
中小企業に顧問弁護士は必要かという問いに対する答えは「法務部がない中小企業こそ、顧問弁護士が必要」です。法務部を持つ大企業と違い、中小企業では経営者自身が法務面の対応を行わなければならず、専門家のサポートなしにはリスク管理が困難だからです。
顧問弁護士の導入を検討すべきタイミングとしては、従業員を1人でも雇用したとき、新規事業・新規取引を開始するとき、過去に法的トラブルを経験したとき、会社を成長させたいと考えたときの4つが挙げられます。
中小企業の顧問弁護士に求められるのは、特定分野の専門性よりも、幅広い分野に対応できる総合力、相談しやすい敷居の低さ、そして経営者視点でのアドバイスができることです。
顧問弁護士を効果的に活用するためには、日常的な相談を遠慮なく行うこと、契約書のリーガルチェックを依頼すること、就業規則・社内規程の整備を相談することがポイントとなります。
費用面については、月額5万円程度の顧問料でトラブルを1件でも防ぐことができれば、十分に費用対効果があるといえます。「トラブルが起きてから」ではなく「トラブルを起こさないために」という予防法務の観点で、顧問弁護士の導入をご検討ください。
弁護士法人エースでは、中小企業の経営者の方に寄り添う「パートナー型」の顧問弁護士サービスを提供しています。グループ内に社労士法人を有し、弁護士全員が通知税理士登録済みのため、法律・労務・税務をワンストップでご相談いただけます。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
顧問弁護士サービスの詳細については「顧問弁護士とは」をご覧ください。
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
竹内 省吾
- 経歴
-
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
成田 翼
- 経歴
-
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員