業務委託契約書の作成ポイント|トラブルを防ぐ条項と注意点

  • 2026/2/6

外注やフリーランスの活用は、中小企業の経営において人件費の最適化や専門スキルの確保に有効な手段です。しかし、業務委託契約書の作成を軽視すると、業務範囲の認識齟齬や報酬トラブル、さらには「偽装請負」として法的責任を問われるリスクもあります。特に2024年11月に施行された「フリーランス新法」により、発注事業者には新たな義務が課されています。本記事では、業務委託契約書の作成ポイントと必要な記載事項、よくあるトラブルへの対策を解説します。適切な契約書を整備し、外注リスクを管理しましょう。

業務委託契約書とは

業務委託契約書とは、自社の業務の一部を外部の事業者やフリーランスに委託する際に、業務内容や報酬、責任範囲などの取引条件を定めた書面です。

業務委託契約という名称は民法上に規定がなく、実務上の呼称として広く使われています。法的には「請負契約」「委任契約」「準委任契約」のいずれかに分類されます。

請負契約・委任契約・準委任契約の違い

請負契約は、仕事の完成を目的とする契約です。Webサイト制作やシステム開発、デザイン制作など、成果物の納品をもって報酬が発生します。受託者は仕事を完成させる義務を負い、完成しなければ報酬を請求できないのが原則です。

委任契約は、法律行為の遂行を目的とする契約です。弁護士への訴訟代理や税理士への税務申告代行など、法律行為を委託する場合に該当します。

準委任契約は、法律行為以外の事務処理を委託する契約です。コンサルティング業務やシステム運用保守、経理代行など、成果物の完成ではなく業務の遂行そのものを目的とします。

契約類型によって責任の範囲や報酬の発生条件が異なるため、委託する業務の性質に応じて適切な類型を選択することが重要です。

雇用契約との違い

業務委託契約と雇用契約の最大の違いは「指揮命令関係」の有無です。

雇用契約では、使用者が労働者に対して業務の進め方や勤務時間を指示する権限を持ちます。一方、業務委託契約では、委託者は受託者に対して指揮命令権を持たず、受託者は自らの裁量で業務を遂行します。

この違いを理解しないまま業務委託契約を締結し、実態として雇用と同様の指揮命令を行うと「偽装請負」と判断され、労働基準法違反などの法的リスクを負うことになります。

業務委託契約書に必要な記載事項

業務委託契約書には、トラブルを防止するために以下の事項を明確に記載する必要があります。

業務内容・業務範囲

委託する業務の内容と範囲を具体的に記載します。曖昧な表現は認識の齟齬を生み、「依頼したはずの業務をやってもらえない」「想定外の業務を要求された」といったトラブルの原因となります。

業務内容は可能な限り具体的に列挙し、必要に応じて仕様書を別途添付することをおすすめします。また、想定外の業務が発生した場合の対応(別途協議の上で追加発注するなど)も定めておくと安心です。

報酬・支払条件

報酬の金額、計算方法、支払期日、支払方法を明確に定めます。特に以下の点を具体的に記載しましょう。

報酬額については、固定報酬か、時間単価か、成果報酬かを明記します。消費税の扱い(税込・税別)も明確にしておく必要があります。支払期日は「納品後○日以内」「毎月末締め翌月○日払い」など具体的な日付で定めます。なお、フリーランス新法では、成果物の受領日から60日以内の支払いが義務付けられています。

契約期間

契約の開始日と終了日を明記します。継続的な業務委託の場合は、自動更新条項の有無や更新の条件も定めておきましょう。

6か月以上の継続的な業務委託の場合、フリーランス新法により契約解除・不更新時の30日前予告が義務付けられていますので、この点も契約書に反映させる必要があります。

再委託に関する条項

受託者が業務の一部を第三者に再委託(下請けに出す)ことを認めるかどうかを定めます。再委託を認める場合でも、委託者の事前承諾を必要とする、再委託先の情報を通知させる、といった条件を設けることが一般的です。

品質管理やセキュリティの観点から、再委託を完全に禁止する、または一部の業務に限定することも検討すべきです。

知的財産権の帰属

業務の過程で制作された成果物について、著作権などの知的財産権がどちらに帰属するかを明記します。

原則として、著作権は創作した者(受託者)に帰属します。委託者が成果物を自由に利用・改変したい場合は、著作権の譲渡または利用許諾について契約書で明確に定める必要があります。

秘密保持条項

業務遂行の過程で知り得た相手方の秘密情報について、第三者への開示や目的外使用を禁止する条項です。秘密情報の定義、秘密保持義務の期間、例外事由(法令に基づく開示など)を定めます。

秘密保持契約書(NDA)を別途締結する場合もありますが、業務委託契約書の中に秘密保持条項を盛り込むケースも多いです。

→ 秘密保持契約書の詳細については、秘密保持契約書(NDA)の作成ポイントをご覧ください。

契約解除条件

どのような場合に契約を解除できるかを定めます。債務不履行(業務の不履行、報酬の未払いなど)があった場合の解除権、催告の要否、解除の効果(違約金、損害賠償など)を明記しましょう。

業務委託契約書作成の5つのポイント

ポイント1:業務範囲を明確に定義する

業務委託契約でもっとも多いトラブルは、業務範囲の認識齟齬です。「当然やってもらえると思っていた」「そこまでは契約に含まれていない」という認識の違いが、関係悪化や追加費用の発生につながります。

業務範囲を明確にするためには、委託する業務を可能な限り具体的に列挙することが重要です。「〇〇業務一式」といった曖昧な表現は避け、個々の作業内容を特定しましょう。また、業務に含まれないことも明記しておくと、より明確になります。

ポイント2:報酬条件を具体的に設定する

報酬に関するトラブルを防ぐためには、以下の点を具体的に定めることが重要です。

報酬の計算根拠として、固定報酬の場合は金額を、時間単価の場合は単価と上限時間を、成果報酬の場合は成果の定義と報酬率を明記します。追加業務が発生した場合の報酬についても、あらかじめ単価や協議方法を定めておくと安心です。経費の負担についても、交通費、通信費、材料費などの実費をどちらが負担するかを明確にしましょう。

ポイント3:成果物の権利帰属を明確にする

デザイン制作やシステム開発など、成果物が発生する業務委託では、知的財産権の帰属を明確にすることが重要です。

著作権を委託者に譲渡する場合は、「著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む」と明記することで、翻案権や二次的著作物の利用権も含めて譲渡されることを明確にできます。また、著作者人格権は譲渡できないため、「受託者は著作者人格権を行使しない」旨の条項を設けることも検討しましょう。

ポイント4:秘密保持義務を適切に設定する

業務委託では、自社の顧客情報や技術情報、経営情報などを受託者と共有することがあります。情報漏洩リスクを管理するため、秘密保持条項は慎重に設計する必要があります。

秘密情報の定義は広すぎても狭すぎても問題があります。「業務遂行に関連して開示された一切の情報」とすると範囲が広すぎ、逆に「秘密である旨を明示した情報に限る」とすると漏れが生じる可能性があります。自社の情報管理体制に応じて適切な定義を検討しましょう。

ポイント5:偽装請負にならないよう注意する

業務委託契約を締結しても、実態として委託者が受託者に指揮命令を行っていると「偽装請負」と判断されるリスクがあります。偽装請負と判断されると、労働者派遣法違反として罰則を受けるほか、受託者との間で雇用契約が成立したとみなされる可能性もあります。

偽装請負を防ぐためには、契約書において受託者が自己の裁量で業務を遂行することを明記すること、委託者に指揮命令権がないことを明確にすること、そして勤怠管理は受託者自身が行うことを定めることが重要です。

契約書の記載だけでなく、実際の運用においても、業務の進め方について細かい指示を出さない、出退勤時間を管理しない、自社の従業員と同様の扱いをしないなど、雇用関係と区別される運用を徹底することが必要です。

【2024年11月施行】フリーランス新法への対応

2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(通称:フリーランス新法)により、フリーランスに業務を委託する事業者には新たな義務が課されています。

フリーランス新法の対象

フリーランス新法が保護対象とする「特定受託事業者」とは、従業員を雇用しない個人事業主、または代表者1名のみで従業員のいない法人です。自社がこうしたフリーランスに業務を委託している場合、フリーランス新法の規制が適用されます。

なお、従業員を雇用している個人事業主や、複数の役員・従業員がいる法人との取引は対象外です。

発注事業者の義務

取引条件の明示義務:業務委託をした場合、書面または電子メール等により、業務内容、報酬額、支払期日、発注者・フリーランスの名称、業務委託日、成果物の受領日または役務提供日などの取引条件を直ちに明示しなければなりません。

報酬支払期日の設定義務:成果物を受領した日または役務提供を受けた日から60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に支払う必要があります。

禁止行為:1か月以上の継続的な業務委託については、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しの7つの行為が禁止されています。

6か月以上の継続的業務委託における追加義務

6か月以上の継続的な業務委託については、さらに以下の義務が課されます。

契約解除等の事前予告:契約を中途解除する場合、または契約を更新しない場合は、原則として30日前までに予告しなければなりません。

育児・介護との両立への配慮:フリーランスから申出があった場合、育児や介護と業務を両立できるよう、必要な配慮をする義務があります。

ハラスメント対策:フリーランスに対するハラスメントを防止するため、相談体制の整備等の措置を講じる必要があります。

契約書への反映方法

フリーランス新法に対応するため、業務委託契約書には以下の事項を明記することをおすすめします。

法定の明示事項(業務内容、報酬額、支払期日等)を漏れなく記載すること、報酬支払期日を成果物受領日から60日以内に設定すること、6か月以上の契約については解除・不更新時の30日前予告条項を設けること、そしてハラスメント相談窓口の設置・周知を行うことが重要です。

業務委託契約でよくあるトラブルと対策

トラブル1:業務範囲の認識齟齬

事例:Webサイト制作を委託したところ、公開後の修正対応を依頼したら「契約範囲外」と言われ、追加費用を請求された。

対策:契約書において業務範囲を具体的に列挙し、公開後の修正対応を含むかどうかを明記しましょう。また、「軽微な修正は○回まで含む」「公開後○日以内の不具合修正は無償対応」など、具体的な条件を定めておくとトラブルを防げます。

トラブル2:報酬の未払い・減額

事例:成果物を納品したにもかかわらず、「イメージと違う」という理由で報酬を減額された。

対策:成果物の仕様や品質基準を契約書や仕様書で明確に定め、検収の基準と手続きを明記しましょう。また、検収期間を設け、期間内に異議がない場合は検収完了とみなす条項を入れることで、不当な減額を防止できます。

なお、フリーランス新法では、正当な理由のない報酬減額は禁止されています。

トラブル3:偽装請負の指摘

事例:業務委託契約を締結していたフリーランスについて、労働基準監督署から「実態は雇用ではないか」と指摘を受けた。

対策:契約書の記載だけでなく、実際の運用を見直すことが重要です。業務の進め方は受託者の裁量に委ね、具体的な作業指示を出さないこと、勤務時間や勤務場所を指定しないこと、自社の従業員と同様の勤怠管理を行わないこと、そして機材や備品は原則として受託者自身が用意することを徹底しましょう。

偽装請負と判断されると、労働者派遣法違反として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、受託者から雇用契約の成立を主張され、残業代や社会保険料の遡及支払いを求められるリスクもあります。

弁護士法人エースの業務委託契約サポート

業務委託契約書は、ひな形をそのまま使用するだけでは自社の取引実態に合わない場合があります。ひな形は汎用性を重視して作成されているため、個別の取引条件や業界特有のリスクが反映されていないことが多いのです。

弁護士法人エースでは、業務委託契約書の作成・リーガルチェックを通じて、中小企業の外注リスク管理をサポートしています。

当事務所の強みは、経営者視点でのアドバイスができることです。代表弁護士は複数法人の代表を兼任しており、法律論だけでなく「経営判断としてどうすべきか」という視点からアドバイスが可能です。

また、フリーランス新法への対応についても、契約書の見直しから社内体制の整備まで一貫してサポートいたします。自社グループ内に社労士法人を有しているため、労務管理の観点からもアドバイスできる点が特徴です。

顧問契約(月額5万円〜)をご利用いただくと、契約書のリーガルチェックを含む法律相談が無制限で可能となり、個別案件は20%割引でご依頼いただけます。契約書作成の費用相場(定型5〜10万円、非定型10〜30万円)を考慮すると、継続的に外注を活用される企業にとっては、顧問契約のほうが費用対効果が高いケースが多いです。

→ 顧問弁護士サービスの詳細については、顧問弁護士の費用相場と料金体系もあわせてご覧ください。

まとめ

業務委託契約書の作成において、特に注意すべきポイントを整理します。

まず、業務範囲を具体的に定義し、認識齟齬を防ぐことが重要です。次に、報酬条件、支払期日、支払方法を明確に記載しましょう。成果物の知的財産権の帰属についても明記が必要です。また、秘密保持条項で情報漏洩リスクを管理すること、そして偽装請負にならないよう、契約書の記載と実際の運用の両面で注意することが求められます。

2024年11月施行のフリーランス新法により、フリーランスへの業務委託には新たな義務が課されています。取引条件の明示、60日以内の報酬支払い、禁止行為の遵守など、法令に対応した契約書の整備が必要です。

契約書は、万が一のトラブル時に自社を守る「盾」であると同時に、相手方との信頼関係を築く「土台」でもあります。ひな形をそのまま使うのではなく、自社の取引実態に合った契約書を作成することで、外注リスクを適切に管理しましょう。

契約書の作成・リーガルチェックについてご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っております。

→ 契約書作成・リーガルチェックの詳細については、契約書の作成・リーガルチェックをご覧ください。


監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

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