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時事問題

未払いだとヤバい?NHK受信料未払い問題に関する最高裁の考え方を解説!

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NHK受信料の問題

 最近,何かと話題のN国党の活躍や,東横インが19億円の受信料支払いを命じられた判決などによって,巷ではNHK受信料問題が話題になってます。しかし,受信料未払い問題について,法律的に支払義務があるのかないのか,もし支払わないでい続けるとどうなるのか,はっきり分かっていないという人も多いんじゃないでしょうか。

 そこで,このコラムでは,NHK受信料問題について,できる限りわかりやすく法律的な正解を述べていきたいと思います。

 NHK受信料を払っているあなたも,払っていないあなたも,NHKを〜ってやる前に法律上は何が正解なのか,知っておいて損はないと思いますよ。

意外と多い争点

ただ,意外とこの問題,たくさんの争点があるんですね。

このコラムでは,基本的には,平成29年12月6日の最高裁判決で判断された,

・受信料の支払い義務があるのか

・受信契約の成立時期はいつか

・受信契約すると,いつからの受信料支払い義務が生じるか

・受信料債権の消滅時効はいつから起算されるか

の4つについて解説していきます。

争点1:法的に受信料の支払い義務はあるか

 これがなぜ争点になるかというと,実は,法律上,直接的には受信料支払い義務というのは定められていないんですね。

 じゃあ払わなくていいじゃん!終わり!

 とは残念ながらなりません。

 この点について,放送法64条1項は、受信契約に関し、次のように規定しています。

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」(64条1項本文)

放送法

 このように,法律上は,受信契約をしなければならないという形で定められているわけです。逆に言うと,契約を結ばない限りは,受信料支払い義務は発生しないといえます。

 そしてこの規定,違反しても罰則などはありません。

 NHKと契約をしないことは,法律違反ではあるけど,違反に対するペナルティはないということになります。

 こうなると,2通りの反応がありえますよね。

 ・じゃあ俺契約しないわ!

 ・いや罰則がないとはいえ法律違反は嫌だから契約しとこ。。。

 素直に,色々納得できないこともあるけど,法律がそうなら契約しとこってなる遵法精神のある人は,問題ありません。契約後は受信料を払い続ける義務を負うことになります。

 問題は,罰則ないなら契約しないぜって人についてです。こういう人は,どうなってしまうのでしょうか。

 まず,契約が成立しない限り,受信料支払い義務はないのだから,契約さえしなければ払わなくていいということになる。

 法律的にこれは正しい結論です。

 じゃあ契約しないというごね得が許されるかというと,,,必ずしもそうではないんですね。

 そういう人に対しては,NHKは,民法414条2項但書に規定されている,意思表示に代わる裁判によって,強制的に契約締結することができるんです。なので,契約しないしないと言っていても,NHKが本気を出せば契約させることができるわけです。

 契約を強制できるというのは,実はとってもすごいことです。民法上の大原則として契約自由の原則というのがあって,その名の通り,契約をするもしないも自由だし,どんな内容の契約をするかも自由ですよというものなんですけど,放送法64条によって,明らかにこれに反することができますよということになっており,NHKにとても強力な権限が与えられていることになります。

 実際,上記最高裁の事案では,放送法64条は民法上の大原則を導いている憲法29条などに反していると主張されていますが,最高裁は,これが憲法上許容される立法裁量の範囲内にあることは、明らか。であると一蹴しています。

 なので,契約しないとごねてみても,NHKが本気出せば契約せざるを得なくなるというのが結論です。

争点2:受信契約っていつ成立するの?

 次の争点は,契約成立時期です。契約成立後に受信料支払義務が生じることから重要な争点と考えられます(ただ,実際の最高裁の争点3や4の結論も併せて考えると,この点はそれほど重要な争点であったとはいえないかもしれません。後述します。)。

 まず,自主的に契約した人は,その契約締結日が受信契約成立の日であることに明らかです。

 問題は,裁判で契約締結を求められた人の場合です。

 この場合について,NHKは,契約の申込書がNHKからテレビの設置者に届いた時点だと主張していました。

 しかし,最高裁は,

放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締 結を強制する旨を定めた規定であり,原告からの受信契約の申込みに対して受信設 備設置者が承諾をしない場合には,原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる 判決を求め,その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当である。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87281

として,承諾の意思表示を命じる判決確定の日としました。

 まあこれは妥当な結論というか,自然な結論といえるでしょう。そのための意思表示に変わる裁判ですからね。

 なんだそしたら裁判されて判決確定したら仕方なくそこからの受信料を払えばいいようにも思います。ところが,最高裁の導いた結論は,そうではありませんでした。

争点3:いつからの受信料支払い義務が生じるか

 契約成立が意思表示に代わる裁判の確定時だとして,受信料はいつからのものを支払えばいいのかという点ですが,普通に,自然に,考えると,契約成立後の受信料支払い義務が生じるだけのように思えます。ところが,この点について,最高裁は,2つの理由から,テレビを設置したときからとしました。その理由は,

 ・放送受信規約には、受信契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項がある。

 ・受信料は、受信設備設置者から広く公平に徴収されるべきものであるところ、同じ時期に受信設備を設置しながら、設置後速やかに受信契約を締結した者と、その締結を遅延した者との間で、支払うべき受信料の範囲に差異が生ずるのは公平とはいえない

 この2つです。要するに,そういう規約があるでしょということと,素直に契約締結した人がすぐ払わなきゃいけないのに,ごねまくってた人が裁判確定まで払わなくていいというのは不公平でしょということ。特に後者が実質的判断として強い理由になっているのではないかと思われます。

 テレビ設置したけど,頑張って10年間契約締結をしぶってたら訴えられてその1年後に判決確定したとすると,結局11年分の受信料払えということになるということです。

 たしかに,義務を遡らせる契約というのは普通にありえることなので,受信契約成立時期が意思表示に代わる裁判確定時だとしても,義務は遡って生じるという結論も仕方ないという気はします。

 さて,契約しない遵法精神のない人は,だいぶ追い込まれてきましたね。

 いや,まだだ!最後の切り札,消滅時効!がありますね。最後にこの点に関する最高裁の解説を見ていきましょう。

争点4:5年以上前の受信料は消滅時効にかかるか?

 まず,NHK受信料というのは,定期払い債権ということで5年の消滅時効にかかることは争いありません。ちなみに民法改正で消滅時効期間は原則5年に一本化されるので,民法改正後もNHK受信料の消滅時効期間は5年です。

 なので,契約をしっかり締結して,その後,未払が5年以上続いた場合は,5年前のものから時効になっていくことになります。契約したけど結局10年くらい未払いを継続している,と言う人は,直近5年分の受信料だけ払えばよくて,それより前のものは時効を援用することで支払義務を免れることができるということです。

 そうすると,契約しないでごねてた人,この人も契約について承諾の意思表示に代わる判決確定のときから5年分だけ払えばよさそうですよね?

 ところが!

 最高裁は,「いや,契約成立しないと消滅時効進まないし,契約が成立するのは承諾の意思表示の判決確定のときだから,テレビ設置したときのから全部払わなきゃだめよ。」と言い切ったのです。

 正直これにはびっくりしました。

 そもそもNHKは,契約成立時期は申込書が到達した時点だと主張していたことは説明しました。そうすると,もし被告が「NHKの主張のとおり契約は申込書到達時期に成立しますね」と主張していれば,消滅時効も申込書が到達してから5年経過した時にに成立したことになった可能性もなくはない気がします。

 この点について,最高裁は,契約成立時期について,「いや〜NHKさんそれはさすがに判決確定のときでしょ」。といってNHKに不利な認定をしたように見せかけて,消滅時効の場面では,契約成立まで時効は進行しないとすることで,思いっきりNHKに有利な結論を導いてるわけです。

 何そのツンデレ!

 って感じですが,いずれにしても,契約しないとごねまくってた人は,消滅時効を援用することも許されず,受信料もテレビ設置したときに遡って全額払わなければいけなくなるということなんですね。ごね得は許さないぞ,という結論になっています。

NHK受信料に関する最高裁の考え方まとめ

  ・NHKと契約するまでは,NHKの受信料支払い義務は確かにない

  ・ずっと契約しないと,強制的に契約締結する裁判を起こされる

  ・裁判を起こされると放送法64条のパワーで普通は負ける(契約締結される)

  ・判決確定すると,テレビ設置のときからの受信料を払わないといけない

  ・しかも消滅時効の主張は一切通用しない

  ・ごねるにしても,時効主張の可能性がある分,契約締結してからごねる方がお得かも?

 以上です。

 NHKに色々思うことがあるにしても,法律上,契約締結の義務があるわけだし,最高裁も激おこなので,税金のようなものだと思って素直に契約しておくことをお勧めしておきます。

 ちなみに私は払ってます!!

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馬場 龍行 弁護士
弁護士法人 エース
代表弁護士馬場 龍行
所属弁護士会第一東京弁護士会