COLUMN

Legal Advanceー専門家にも役立つ進歩する法律コラムー
法律豆知識

弁護士に必要なスキルについて

弁護士とは?

 弁護士とは,依頼を受けて法律事務を処理する専門職のこと,などと説明されます。その職域はかなり多岐にわたり,一口に弁護士というのがどういう仕事をしているのかということを説明することは難しいものがあります。

 また,同じ弁護士でも,取扱分野が異なるというだけでなく,経営に参画している弁護士であるのか勤務弁護士であるのかなどでも求められるスキルは変わってきます。

弁護士になるには?

 弁護士になるには,法科大学院を卒業して司法試験に合格した上で司法修習を修了するのが王道です。法科大学院→司法試験→司法修習(二回試験)という流れですね。法科大学院をスルーして司法試験に挑む方法として予備試験というものがあり,予備試験に合格すると法科大学院を修了していなくても司法試験受験資格が与えられます。

 司法試験受験資格は,5年間の制限があり,5年以内に司法試験に合格しないときはそれ以上司法試験を受けることができません(改めて法科大学院を修了する等の方法で再度受験資格を得ることはできるようです。)。

 司法試験の合格率は25%前後で推移しており,かつて合格率2%と言われていた時代とは隔世の感があります。法科大学院志願者数も平成30年度は8058人という状況で11年連続で減少しているという状況になっており,旧司法試験受験者数が5万人以上いた時代からすると様変わりしています(なお,法科大学院制度が発足した平成16年の法科大学院志願者数は7万2000人を超えていました。)。

 ちなみに,平成30年度司法試験の予備試験合格者の司法試験合格率は77.6%で,2位の京都大学法科大学院の59.3%を大きく引き離しています(予備試験自体の合格率は4%程度です。)。

 弁護士になりやすいのは法科大学院ルートだと思いますが,授業料や時間の問題などがある人は予備試験ルートで弁護士を目指すことになります。

弁護士に必要なスキルとは?

 弁護士の合格者数が増加し,合格率が高まっているとしても,それは直ちに弁護士に必要なスキルの欠如や能力の低下に繋がるものではありません。弁護士に必要なスキルは,司法試験で測ることのできる基礎的法的思考能力(及びそれをアウトプットする能力)だけでは全く足りないからです。

 例えば,まず依頼者の話をうまく聞き出したり相手と交渉するためのコミュニケーション能力や交渉スキルが必要です。また,判例や文献の調査能力はもちろん必要ですが,その前提として事実そのものを探していくような特殊な能力も必要です。「こんな事実はないか」ということを常に意識しておく必要があります。

 さらに,細かく膨大な資料を整理するスキルも必要です。このあたりはパラリーガルや事務員などに協力してもらう弁護士も多いと思いますが,元々は弁護士として必要な基本的なスキルだと思います。個人的には,かなり苦手な分野に入るスキルです・・・パラリーガルのみなさん,いつもありがとうございます。

 また,弁護士に相談に来られる方には精神的に大きく傷ついている人も多く,その人たちのケア(少なくとも傷を深めないようにする消極的ケア)を行う能力も必要です。

 上記のスキルはいずれも弁護士の職人的な側面を捉えたスキルですが,経営を行う立場にある弁護士だと,マネジメントスキルや経営判断を行うスキルも求められます。徹底的に時間をかけて一つ一つの事件に取り組みたいという思い(職人気質)もあれば,せめて採算の取れる時間で終わらせたいという思い(経営者気質)も両方持ち合わせているのが経営者弁護士です。一見するとこの二つが相反するように思えることもあるのですが,どちらかに偏りすぎると全体的にうまくいかなくなるのでこのバランスを取るスキルも必要です。

弁護士に向いている人いない人

 では,どういう人が弁護士に向いているのでしょうか?

 一般化するのは難しいですが,まずあまりに受け止めすぎる人は弁護士を続けていくのは難しいと思います。つまり,依頼者に共感しすぎてしまう人ですね。これは,共感しすぎると交渉がうまういかないとかそういう話ではなく(そういう話もあるかもしれませんが),精神的に耐えられないと思います。

 弁護士業というのは,プラスの価値を提供するというよりは,マイナスになってしまった状況を元に戻したいという意味合いの相談依頼が圧倒的に多いです。法律紛争とはそういうものです。なので,基本的に弁護士に依頼する方というのはマイナスのことを相談しに来ているわけです。ですので,あまりに依頼者に共感しすぎる人は,このマイナスを同時に数十人分抱え込むことになってしまい,精神的にあまりにもきつくなってしまうのです。サイコパスの多い職業に「弁護士」が上げられることがよくありますが,一定程度はサイコパス的な資質がないと自身が苦しくなりすぎるという側面は確かにあると思います。ただ,特に個人の紛争の代理人をやるに当たって,共感能力が著しく低い弁護士が有能だとは思いませんが。

 向いている人は,感情的にはある程度割り切ることができるけれども,調査や思考については徹底的に深めることのできる人,だと思います。調査も思考も両方高いレベルで深めて結果を出せる人というのはなかなかいませんが,少なくともそのどちらかは高いレベルで行うことができないと弁護士を続けていくのは楽しくないと思います。

 また,論理的な人の方が弁護士には向いていますが,数学や物理と比べると法律の論理はかなりファジーなので,そこに納得できる程度の思考上のいい加減さ(よくいえば柔軟性)も必要です。

良い弁護士の探し方?

 良い医師を探すのが簡単ではないように,良い弁護士を探すのも簡単ではないです。一番良い探し方は,必ず複数の弁護士に相談するということです。もともと信頼のおける弁護士を知っている,という以外に,良い弁護士を探すという完璧な方法というのはないと思っていただいた方が良いと思います。弁護士に何を求めるかというのは人によって違うからです。例えば,知識や経験だけあっても,コミニュケーションがうまく取れないのでは嫌だと思う人もいれば,逆の方良いと考える人もいると思います。弁護士費用は出来るだけ安い方がいいと思う人もいれば,高くても情熱のある弁護士に依頼したいという人もいるでしょう。

 知識や経験については,インターネット上のその人が発しているブログなどをチェックして推測する方法や,もう少し確実なのは書籍を出しているかどうかを見るのもありかもしれません。もちろん,書籍を出していなくても知識や経験の豊富な弁護士もたくさんいます。

 複数人の弁護士に相談することで,知識や経験の多寡だけでなく,質問しやすい雰囲気かとか,親身になってくれそうかということも分かると思います。実際に法律相談の場で経験などを尋ねてみるのも良いでしょう。

 

 

 

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