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裁判手続

即決和解(訴え提起前の和解)とは何か?公正証書とどちらがいいのかを弁護士が解説。

即決和解を知っていますか?

即決和解というのは,紛争の当事者同士で話し合いがついた場合に,その合意内容について簡易裁判所に和解の申立てをして裁判上の和解を成立させる手続のことをいいます。

正確には,訴え提起前の和解(民事訴訟法267条)といいます。

この制度を使うためには,当事者間に合意があることと,その合意内容を裁判所が相当と認めることが必要です。

合意ができているのにどうして裁判所を使うのか?と疑問に思われた方はさすがです。このコラムでは即決和解の有効性を解説していきます!

即決和解=合意を債務名義化する

即決和解の効果は,合意を債務名義化することにあります。債務名義というのは法律上の用語で,強制執行をするために必要な書類のことをいいます。わかりやすくいうとお上のお墨付きのある書類ですね。代表的なものとして判決書があります。

法治国家では自力救済は原則として禁止されており,もちろん日本でも自力救済をすることは認められていません。だから,もしあなたが誰かに対して100万円貸したのに返してくれない場合には,無理やり100万円を回収することはできず,裁判を起こして「100万円払え」という判決を求めることになります。

それでようやく「100万円払え」という判決をもらったとしても,それで100万円が自動的に返ってくるわけではありません。

相手が判決に従って任意に払ってくれればいいのですが,相手が判決に従わない不届き者だった場合には,やはり法に則って強制執行をしないといけないのです。判決までもらっても,やはり自力救済はできないんですね。

強制執行というのは,無理やり法律関係に乗っ取った事実関係を作り出す強烈な効果があるので,強制執行ができる場合については法律はかなり限定しており,その限定を一言でいうと,「債務名義がある場合」ということになるのです。

その債務名義は,確定判決書,和解調書な,強制執行受諾文言のある公正証書などが代表的なものです。

そして,即決和解が奏功すれば「和解調書」となり,晴れて当事者間の合意は債務名義となり,相手がその内容に従わないときには強制執行することができるようになるということです。

この,合意内容を債務名義化する=強制執行可能にするというのが,即決和解の最大の意味です。

公正証書じゃダメですか?

即決和解と同様に当事者の合意を債務名義化する方法として,強制執行受諾文言付の公正証書を作成する方法があります。

ではなぜ即決和解という制度があるのでしょうか?

実は,公正証書で債務名義化できる合意内容は,金銭債務の履行に関する合意に限られているのです。

そのため,それ以外の内容の合意を債務名義化するには,即決和解によるしかないのです。たとえば,建物の明渡しなどが代表的なもので,実際に即決和解がよく使われる類型も建物明渡し系です。

実際,建物明渡しを求めて「いついつまでには出て行く」という相手の言葉を信じて合意書を作ったとしても,相手が出ていかない場合にはやはり裁判を起こして強制執行までしなければならないことは結構あるので,相手が「いついつまでに出て行く」という内容の合意書を作る意思があるのであれば,そのまま「裁判所で手続をしましょう」ということで即決和解の手続に持ち込むことができれば,いざ相手が出ていかないというケースで直ちに強制執行できることになり,債権者としては是非とも活用したい制度だと思います。

即決和解の具体的な手続を解説

即決和解を使おうとする場合,まず当事者間の合意を書面(和解条項案)にして,管轄の簡易裁判所(相手方の住所又は主たる営業所の所在地を管轄する簡易裁判所)に申立てをします。

申立て後,裁判所から,書類の追加や和解条項の修正などを求められることもあります。

書類の追加や和解条項の修正が完了すると,和解期日の指定がされます。和解期日にの指定の前に,希望日を確認されるので,相手方と協議の上でだいたい裁判所の希望確認日から10日以上先の期日を指定してもらいます。これは,手続上,裁判所から相手方に期日呼出状などを送達する必要があるためです。

なお,和解条項などは相手方に送達する他,和解調書正本にも使用することになるため,和解条項や物件目録は4部,当事者目録は3部を裁判所からの期日指定後に裁判所に対して速やかに提出します。

指定された期日に当事者(又は代理人弁護士)が出廷し,和解条項について合意し,裁判所が相当と認めたときは,和解条項の内容のまま和解調書が作成され,原則としてその日のうちに当事者双方に和解調書正本が交付されます。

即決和解の手続にはだいたい1ヶ月程度の時間がかかるので,申立て時に作成する和解条項案ではこの点を考慮に入れて,支払日や明渡し日などの義務履行の期限を定めておく必要があります。

このように,特に建物明渡しなどの場面で即決和解は活用しがいのある制度ですが,それ以外で使えないわけではない(金銭債務の履行に関しても使える)ので,相手と合意ができそうだという場合には,一度は即決和解の利用を考えてみてもいいかもしれません。

そもそも本人同士できちんとした示談書案(和解案)が作れるか不安だという方は弁護士などの専門家に一度ご相談ください。公正証書や即決和解手続などを利用しなくても法的にしっかりと有効な書面を作ることはできます。

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馬場 龍行 弁護士
弁護士法人 エース
代表弁護士馬場 龍行
所属弁護士会第一東京弁護士会