上場株式や投資信託を相続し、評価額の計算と名義変更が必要になった。相続税評価額はどのように計算するのか、売却のタイミングはいつがよいのか、名義変更の手続きはどうすればよいのか。多くの方がこのような悩みを抱えています。
株式や投資信託の相続税評価は、取引相場のある上場株式なら比較的単純ですが、タイミングにより評価額が大きく変わるため注意が必要です。また、名義変更を行わないと売却できないばかりか、配当金も受け取れません。
本記事では、株式・投資信託の相続税評価方法から具体的な名義変更手続き、売却時の税金まで、実務的なポイントを交えて詳しく解説します。適切な手続きにより、スムーズな相続と有利な税務処理を実現できます。相続の基本については、相続手続きの完全ガイドもご参照ください。

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株式・投資信託の相続における基本的な取り扱い

「父が残した株式をどうすればいいのか」「証券会社から相続手続きの案内が来たが、何から始めればいいのか分からない」このような状況に直面している方も多いでしょう。まずは、株式・投資信託の相続における基本的なルールを理解しましょう。

上場株式・投資信託は相続財産として承継される

株式や投資信託は、預貯金や不動産と同様に相続財産として扱われます。しかし、その承継方法には特有のルールがあります。

相続による承継の特徴:

  • 準共有状態:相続開始により、相続人全員の準共有状態となる
  • 遺産分割が必要:売却や名義変更には相続人全員の合意が必要
  • 法定相続分での当然分割はなし:預貯金のような可分債権とは異なる扱い

具体例で理解する:

被相続人:父(株式保有者)
相続人:母、長男、次男
父が保有していたトヨタ自動車株1,000株は、相続開始により3人の準共有状態に。この状態では:

  • 売却:3人全員の同意が必要
  • 配当金:3人で法定相続分により分配
  • 議決権行使:代表者を決めて行使

遺産分割による解決:

遺産分割協議により、特定の相続人が単独で取得することも可能です。例えば:

  • 母がすべての株式を取得
  • 長男と次男は他の財産を取得
  • または、500株を長男、500株を次男が取得
取得価額の引き継ぎ:
相続により取得した株式の取得価額は、被相続人の取得価額をそのまま引き継ぎます。これは将来売却する際の譲渡所得計算で重要になります。

証券会社での相続手続きの流れと必要書類

株式や投資信託の相続手続きは、証券会社を通じて行います。証券会社での相続手続きの詳しい流れはこちらでも解説していますが、ここでは実務的な流れを説明します。

手続きの基本的な流れ:

1. 証券会社への連絡
  • 被相続人の取引証券会社すべてに連絡
  • 複数の証券会社に口座がある場合は、それぞれで手続きが必要
2. 相続手続き書類の請求
  • 各証券会社から「相続手続きのご案内」を受領
  • 必要書類のチェックリストを確認
3. 必要書類の準備

基本的な必要書類:

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書(3か月以内)
  • 遺産分割協議書(または相続人全員の同意書)
  • 相続手続依頼書(証券会社所定の様式)
4. 相続人の証券口座開設
  • 株式を引き継ぐ相続人は証券口座が必要
  • 特定口座の開設も同時に検討
5. 書類提出と審査
  • 証券会社での審査期間:通常2~4週間
  • 不備があれば追加書類の提出
6. 株式・投資信託の移管
  • 相続人の口座へ移管完了
  • 移管完了通知の受領
注意点:

  • NISA口座は相続できないため、一般口座または特定口座への移管となる
  • 外国株式がある場合は、追加書類が必要な場合がある

相続開始後の配当金・分配金の取り扱い

相続開始後の配当金や分配金の取り扱いは、意外と複雑です。時期により税務上の扱いが異なるため、正確な理解が必要です。

配当金・分配金の時期別取り扱い:

時期 配当金の扱い 税務上の取り扱い
相続開始前に支払済み 預金として相続 相続財産(相続税)
相続開始後・名義変更前 相続財産 未収配当金として相続税
名義変更後 相続人の収入 所得税(配当所得)
具体例:

  • 3月決算会社の株式を保有
  • 被相続人が4月に死亡
  • 6月に配当金支払い → この配当金は相続財産として相続税の対象

実務上の注意点:

  • 配当金の支払通知書は保管しておく
  • 証券会社の取引残高報告書で未収配当金を確認
  • 相続税申告書には「未収入金」として記載

退職金の相続税上の取り扱いと同様に、受け取るタイミングにより税務上の扱いが変わることに注意が必要です。


上場株式の相続税評価方法と計算例

相続税申告で最も重要なのが、株式の評価額の計算です。上場株式には有利な評価方法の選択制があり、これを活用することで相続税を大幅に節税できる可能性があります。

4つの評価方法から最も低い価額を選択できる

上場株式の相続税評価の最大の特徴は、4つの評価方法から最も低い価額を選択できることです。これは相場変動リスクを軽減するための制度です。

4つの評価方法:

1. 相続開始日の最終価格(終値)
  • その日の証券取引所の最終売買価格
  • 休場日の場合は、最も近い日の終値
2. 相続開始月の毎日の最終価格の月平均額
  • 開始月のすべての営業日の終値を平均
  • 月の途中で相続開始した場合も、月全体で計算
3. 相続開始月の前月の毎日の最終価格の月平均額
  • 前月のすべての営業日の終値を平均
4. 相続開始月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
  • 前々月のすべての営業日の終値を平均
なぜ4つも選択肢があるのか:
株式市場は日々変動し、相続のタイミングによっては不当に高い評価額になる可能性があります。この選択制により、一時的な高騰の影響を回避できます。
重要ポイント:

  • 銘柄ごとに最有利な方法を選択可能
  • 一度選択した方法は変更不可
  • 税理士と相談して慎重に選択することが重要

具体的な計算例で理解する評価額の算出

実際の数値を使って、どれだけの差が出るか見てみましょう。

事例:A社株式1,000株の評価

被相続人:父(2024年10月15日死亡)
相続する株式:A社普通株式1,000株
各評価方法による株価:

  1. 相続開始日(10/15)の終値:3,000円
  2. 10月の終値平均:2,800円
  3. 9月の終値平均:2,500円
  4. 8月の終値平均:2,600円

評価額の計算:

  1. 開始日終値:3,000円 × 1,000株 = 300万円
  2. 10月平均:2,800円 × 1,000株 = 280万円
  3. 9月平均:2,500円 × 1,000株 = 250万円 ←最も低い
  4. 8月平均:2,600円 × 1,000株 = 260万円

結果:9月平均の250万円を選択
この選択により、開始日終値と比べて50万円(約17%)の評価減を実現できました。

複数銘柄の場合の例:

銘柄 保有数 開始日 10月平均 9月平均 8月平均 選択
B社 500株 4,000円 4,200円 3,800円 4,100円 9月平均
C社 300株 1,500円 1,400円 1,600円 1,550円 10月平均
D社 1,000株 800円 850円 900円 750円 8月平均

このように、銘柄ごとに最も有利な評価方法を選択することで、全体の評価額を最小化できます。

権利落ち・配当落ちがある場合の調整計算

評価期間中に権利落ちや配当落ちがある場合、そのまま計算すると不当に低い(または高い)評価額になってしまいます。そのため、調整計算が必要です。

権利落ち・配当落ちとは:

  • 配当や株主優待の権利が確定した翌営業日
  • 通常、配当金相当額だけ株価が下落

調整計算の方法:

例:E社株式(9月25日に配当落ち、1株50円の配当)

  • 9月24日までの株価:1,050円前後
  • 9月25日以降の株価:1,000円前後

9月の平均株価計算:

調整前:(24日までの合計 + 25日以降の合計)÷ 営業日数
調整後:25日以降の株価に50円を加算して計算

株式分割の場合の調整:

例:2対1の株式分割が9月15日に実施

  • 9月14日まで:1株2,000円
  • 9月15日以降:1株1,000円(株数は2倍に)

この場合、分割前の株価を1/2にして平均を計算します。

実務上の注意点:

  • 証券会社の月次報告書で権利落ち日を確認
  • 調整計算は複雑なため、専門家に依頼することを推奨
  • 調整漏れは税務調査で指摘されやすい

投資信託の相続税評価と特有の注意点

投資信託は株式とは異なる評価方法が適用されます。基準価額での評価が原則ですが、種類により注意すべき点があります。

投資信託は基準価額による評価が原則

投資信託の相続税評価は、上場株式のような選択制はなく、シンプルな方法で行います。

基本的な評価方法:

相続税評価額 = 相続開始日の基準価額 × 保有口数

重要な違い:

  • 上場株式:4つの方法から選択可能
  • 投資信託:相続開始日の1日のみで確定

基準価額の確認方法:

  1. 投資信託会社のウェブサイト
  2. 証券会社の取引画面
  3. 日本経済新聞などの金融情報

控除できる費用:

  • 信託財産留保額:解約時に差し引かれる費用(通常0.1~0.5%)
  • 解約手数料:証券会社により異なる
計算例:

  • 投資信託A:基準価額15,000円、保有口数100万口
  • 信託財産留保額:0.3%
  • 評価額:15,000円 × 100万口 ÷ 10,000 × (1-0.003) = 1,495.5万円
ETF(上場投資信託)の扱い:
ETFは証券取引所に上場しているため、上場株式と同じ扱いになります。つまり、4つの評価方法から選択可能です。

分配金の取り扱いと再投資型の注意点

投資信託の分配金は、その処理方法により相続税評価に影響します。特に分配金再投資型は見落としやすいポイントです。

分配金の2つのタイプ:

1. 分配金受取型
  • 分配金は現金で受け取り
  • 相続開始時の預金残高に含まれる
2. 分配金再投資型
  • 分配金で自動的に同じ投資信託を購入
  • 保有口数が増加
再投資型の注意点:
相続開始前に再投資された分も、すべて相続財産に含まれます。
具体例:

  • 当初購入:100万口(1,000万円)
  • 5年間の再投資分:20万口
  • 相続時の保有口数:120万口 ← すべて評価対象

未収分配金の取り扱い:

決算日 支払日 相続開始日 取り扱い
3/31 4/10 4/5 未収分配金として相続財産
3/31 4/10 4/15 受取済みなら預金として

毎月分配型ファンドの注意点:

  • 毎月決算のため、未収分配金を見落としやすい
  • 証券会社の取引報告書で必ず確認
  • 少額でも相続財産に計上が必要

外貨建て投資信託の評価:

円換算評価額 = 外貨建て基準価額 × 保有口数 × TTBレート
  • TTBレート:相続開始日の電信買相場
  • 為替レートも相続開始日の1日で確定

MRF・MMFなど公社債投資信託の評価

MRFやMMFは、株式投資信託とは異なる評価方法が適用されます。

公社債投資信託の種類と評価方法:

種類 特徴 評価方法
MRF 証券総合口座の待機資金 額面+経過利息
MMF 短期金融商品で運用 額面+経過利息
中期国債ファンド 中期国債で運用 額面+経過利息

評価の計算式:

評価額 = 額面金額 + (額面金額 × 利率 × 経過日数 ÷ 365)
具体例:MRFの評価

  • 額面金額:500万円
  • 年利率:0.01%
  • 経過日数:90日
  • 評価額:500万円 + (500万円 × 0.01% × 90日 ÷ 365) = 500万123円

実務上のポイント:

  • MRFは預金に近い性格のため、実質的に額面評価
  • 利息は少額でも正確に計算
  • 証券会社の残高証明書に記載される金額を使用

その他の投資信託の注意点:

  • 不動産投資信託(REIT):上場REITは株式と同じ扱い
  • 私募投資信託:運用会社に評価額を確認
  • 仕組債型投資信託:複雑な商品は専門家に相談

名義変更手続きの具体的な進め方

相続税評価が終わっても、名義変更をしなければ株式や投資信託を売却することも、配当を受け取ることもできません。確実に手続きを進めましょう。

証券会社での相続手続きステップ

名義変更は証券会社ごとに行う必要があります。複数の証券会社に口座がある場合は、それぞれで手続きが必要です。

詳細な手続きステップ:

STEP1:被相続人の取引証券会社の確認
  • 通帳や郵便物から証券会社を特定
  • 株式関係書類、配当金計算書なども手がかりに
  • 不明な場合は、証券保管振替機構(ほふり)に照会可能
STEP2:証券会社への連絡と書類請求
  • 各証券会社のコールセンターに電話
  • 「相続が発生した」旨を伝える
  • 相続手続きの案内書類を郵送で請求
STEP3:必要書類の準備
【必要書類チェックリスト】
STEP4:相続人の証券口座開設
  • 株式を相続する人は口座が必要
  • 特定口座(源泉徴収あり)の開設を推奨
  • マイナンバーカード等の本人確認書類が必要
STEP5:書類提出と審査
  • すべての書類を証券会社に提出
  • 不備があれば連絡が来る
  • 審査期間:通常2~4週間
STEP6:移管完了
  • 相続人の口座に株式・投資信託が移管
  • 移管完了通知書の受領
  • 残高を確認
実務上のコツ:

  • 書類は原本が必要な場合が多い
  • 複数の証券会社がある場合は、戸籍謄本等は複数部取得
  • 書類の有効期限に注意(印鑑証明書は3か月)

遺産分割前の仮名義変更と正式名義変更

遺産分割協議が長引く場合、仮の名義変更という選択肢もあります。

仮名義変更とは:

  • 相続人代表者の名義に一時的に変更
  • 「相続人代表者○○」という名義になる
  • 売却には相続人全員の同意が必要

仮名義変更のメリット:

  1. 配当金の受取りが可能に
  2. 株主優待の継続(一部企業)
  3. 相続財産の保全

仮名義変更の手続き:

  • 相続人全員の同意書
  • 代表者選任届
  • その他の必要書類は通常の相続手続きと同じ

正式名義変更への移行:

遺産分割協議が成立したら、速やかに正式な名義変更を行います。

分割パターン別の手続き:

1. 特定の相続人が全株取得
  • その相続人の単独名義に変更
  • 手続きは比較的シンプル
2. 複数の相続人で分割
  • 例:1,000株を500株ずつ2人で分割
  • それぞれの名義で株式を保有
3. 一部売却、一部相続
  • 売却分は相続人代表者名義で売却
  • 売却代金を分配
  • 残りを相続人名義に変更

単元未満株・端株の処理方法

遺産分割により単元未満株(100株未満など)が生じることがあります。これらの処理方法を理解しておきましょう。

単元未満株とは:

  • 通常の売買単位(100株など)に満たない株式
  • 議決権はないが、配当は受け取れる

処理方法の選択肢:

1. 買取請求
  • 発行会社に買い取ってもらう
  • 買取価格は市場価格に準じる
  • 現金化が可能
2. 買増請求
  • 単元株にするため追加購入
  • 例:70株保有→30株買増で100株に
  • 資金が必要
3. そのまま保有
  • 配当金は受け取れる
  • 将来の株式分割で単元株になる可能性
  • 売却は困難
具体例:3人で1,000株を分割

  • 法定相続分:妻1/2、子1/4ずつ
  • 妻:500株(単元株)
  • 長男:250株(単元株×2+端株50)
  • 次男:250株(単元株×2+端株50)

端株の処理提案:

  • 50株ずつは買取請求で現金化
  • または、一人が100株にまとめて取得し、他方に現金で精算

注意点:

  • 少額でも相続財産として申告必要
  • 買取請求の手続きは発行会社により異なる
  • 手数料がかかる場合もある

相続後の売却タイミングと税金の考え方

株式や投資信託を相続しても、すぐに売却すべきか保有を続けるべきか悩む方が多いです。税金面も含めて、売却戦略を考えましょう。

売却時の譲渡所得税の計算方法

相続した株式を売却すると、譲渡所得税がかかります。しかし、相続の場合は特別な優遇措置があります。

譲渡所得の計算式:

譲渡所得 = 売却価額 - 取得費 - 譲渡費用

取得費の考え方:

  • 原則:被相続人の取得価額を引き継ぐ
  • 不明な場合:売却価額の5%(概算取得費)
具体例:

  • 被相続人の取得価額:1株500円で1,000株(50万円)
  • 相続時の評価額:1株2,000円(200万円)
  • 売却価額:1株2,500円で売却(250万円)

譲渡所得 = 250万円 – 50万円 = 200万円
譲渡所得税 = 200万円 × 20.315% = 約40万円
取得価額が不明な場合:

取得費 = 250万円 × 5% = 12.5万円
譲渡所得 = 250万円 - 12.5万円 = 237.5万円
譲渡所得税 = 237.5万円 × 20.315% = 約48万円

取得価額の証明書類を探す価値があることが分かります。

相続税の取得費加算特例を活用した節税

相続により取得した財産を、一定期間内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。

取得費加算の特例とは:

  • 相続税を支払った人が対象
  • 相続税申告期限から3年以内の売却が条件
  • 売却した財産に対応する相続税額を取得費に加算

計算式:

加算できる相続税額 = 支払った相続税額 × 売却した財産の相続税評価額 ÷ 相続税の課税価格
具体例で理解する:

  • 相続財産総額:1億円
  • うち株式の評価額:2,000万円
  • 支払った相続税:1,000万円
  • 株式をすべて売却

加算額 = 1,000万円 × 2,000万円 ÷ 1億円 = 200万円
節税効果:

  • 取得費に200万円を加算
  • 譲渡所得が200万円減少
  • 節税額:200万円 × 20.315% = 約40万円

特例を使う場合の注意点:

【取得費加算特例のチェックポイント】
 ・相続税申告書の控え
 ・相続税納付の領収書
 ・取得費加算の計算明細

市場環境を考慮した売却戦略

税金だけでなく、市場環境も考慮した総合的な売却戦略が重要です。

売却タイミングの判断要素:

1. 相続税の納税資金
  • 納期限(10か月)までに必要な資金
  • 優先的に売却
2. 取得費加算特例の期限
  • 3年以内という制約
  • 期限が近づいたら売却検討
3. 市場環境
  • 株価の水準
  • 企業の業績見通し
  • 配当利回り

ケース別の売却戦略:

ケース1:納税資金が必要
  • 必要額を計算
  • 複数銘柄から選択して売却
  • 下落局面でも売却せざるを得ない
ケース2:納税資金は充足
  • 銘柄ごとに保有・売却を判断
  • 成長性の低い銘柄から売却
  • 高配当銘柄は保有継続も選択肢
ケース3:すべて売却して現金化
  • 遺産分割のしやすさを優先
  • 分散売却でリスク軽減
  • 取得費加算特例は確実に適用
分散売却の具体例:
1,000株を3回に分けて売却

  • 1回目:300株(相場が良い時)
  • 2回目:300株(3か月後)
  • 3回目:400株(特例期限前)

保有継続の判断基準:

  • 配当利回り3%以上
  • 業績が安定している
  • 株主優待が魅力的
  • 将来性が期待できる

非上場会社の自社株評価と相続対策と異なり、上場株式は売却が容易なため、柔軟な戦略が可能です。


まとめ

株式・投資信託の相続では、適切な評価方法の選択と確実な名義変更手続きが重要です。上場株式は4つの評価方法から最も低い価額を選択でき、投資信託は相続開始日の基準価額で評価します。名義変更を行わないと売却や配当金受取ができないため、早めに証券会社での手続きを進めましょう。
相続税評価額の計算では、権利落ちや配当落ちの調整、信託財産留保額の控除など、見落としやすいポイントがあります。また、相続後の売却では、相続税の取得費加算特例を活用することで大幅な節税が可能ですが、相続税申告期限から3年以内という期限があることに注意が必要です。
株式市場は日々変動するため、相続のタイミングによっては評価額が大きく変わることもあります。専門家のアドバイスを受けながら、有利な評価方法を選択し、計画的な売却戦略を立てることが、相続財産を最大限に活かすポイントとなります。
手続きは複雑に見えますが、一つ一つ確実に進めることで、スムーズな資産承継を実現できます。不明な点があれば、証券会社の相続専門部署や税理士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。故人が築いた財産を大切に引き継ぎ、有効に活用していきましょう。

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竹内 省吾
竹内 省吾
弁護士
慶應大学法学部卒。相続・不動産分野のスペシャリスト弁護士。常時50社以上の顧問・企業法務対応や税理士(通知)としての業務対応の経験を活かし、相続問題に対して、多角的・分野横断的なアドバイスに定評がある。生前時から相続を見越した相続税対策や事業承継にも対応。著書・取材記事多数。
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