「息子が親に暴力を振るい続けている」「娘が財産を勝手に使い込んでいる」「配偶者から長年にわたってDVを受けている」このような悪質な行為をする相続人に財産を相続させたくないと考えるのは当然です。
家族であっても、被相続人に害を与え続ける者に財産を残したくないという気持ちは理解できます。民法では「相続人の廃除」という制度により、著しく不当な行為をした相続人から相続権を剥奪することができます。
しかし、廃除の要件は想像以上に厳格で、手続きも複雑です。「本当に廃除できるのか不安」「手続きが難しそうで何から始めればいいか分からない」という声もよく聞きます。安易に考えて失敗すると、かえって家族関係が悪化し、法的トラブルが長期化する恐れもあります。
本記事では、相続人廃除の要件から手続き、成功のポイントまで、実務的な観点から詳しく解説します。

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相続人廃除制度の基本的な仕組みと法的根拠

相続人廃除は、被相続人の意思により推定相続人の相続権を剥奪する強力な制度です。しかし、その適用には厳格な要件があり、制度の仕組みを正確に理解することが重要です。

廃除と相続欠格の違い

相続権を失わせる制度には「相続欠格」と「相続人廃除」の2つがあり、それぞれ異なる性質を持っています。

相続欠格の特徴

相続欠格は、法律で定められた重大な非行により、法律上当然に相続権を失う制度です(民法891条)。

  • 自動的効果:裁判所の判断を経ずに当然に相続権を失う
  • 欠格事由:被相続人や他の相続人の殺害、遺言の偽造・変造等の重大犯罪
  • 意思の関与なし:被相続人の意思に関係なく法律上当然に効力発生
  • 回復不可能:一度欠格になると取り消すことはできない

相続人廃除の特徴

相続人廃除は、被相続人の意思表示により、家庭裁判所の審判を経て相続権を剥奪する制度です(民法892条・893条)。

  • 意思表示必要:被相続人の明確な廃除意思が必要
  • 家庭裁判所の審判:裁判所が廃除事由の存在を判断
  • 相対的な非行:相続欠格ほど重大ではないが、著しく不当な行為
  • 取消し可能:被相続人が生前に、または遺言で廃除を取り消すことが可能
ポイント:この違いを理解することで、自身のケースにどちらが該当するかを適切に判断できます。

廃除の対象となる相続人

相続人廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人に限定されています。

廃除対象者

  • 配偶者:法定相続分と遺留分を有する
  • 子(直系卑属):実子・養子・代襲相続人を含む
  • 直系尊属:父母・祖父母(子がいない場合)

廃除の対象外

  • 兄弟姉妹:遺留分を有しないため廃除の対象外
  • 甥・姪:兄弟姉妹の代襲相続人も対象外
兄弟姉妹が対象外の理由:兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書により完全に相続から排除することができます。そのため、わざわざ廃除制度を使う必要がないというのが法律の考え方です。

廃除の効果と代襲相続

廃除の効果

廃除が認められると、以下の効果が生じます:

  • 相続権の完全な剥奪:法定相続分がゼロになる
  • 遺留分権利の消失:遺留分侵害額請求もできなくなる
  • 遺贈も制限:廃除された者への遺贈は原則として無効

代襲相続は発生する

重要なポイントは、廃除された者に子がいる場合、その子は代襲相続により相続権を取得することです。

例:父親が長男を廃除した場合

  • 長男:相続権を失う
  • 長男の子(孫):代襲相続により長男の相続分を取得

この点で相続欠格と同様の効果があり、廃除によって完全に血縁関係を断ち切ることはできません。

廃除の取消し

被相続人は、廃除を取り消すことができます:

  • 生前の取消し:家庭裁判所への申立てにより取消し
  • 遺言による取消し:遺言書で廃除の取消しを表明
  • 当然の復権:取消しにより相続権が完全に回復

遺留分制度との関係については、遺留分侵害額請求の詳しい解説もご参照ください。


廃除が認められる要件と具体的な判断基準

相続人廃除が認められるためには、民法892条に定める「被相続人に対する虐待若しくは重大な侮辱又はその他の著しい非行」という要件を満たす必要があります。この要件の解釈は厳格で、具体的な判断基準を理解することが重要です。

虐待の認定基準と具体例

身体的虐待

物理的な暴力や危害を加える行為で、以下のような行為が該当します:

廃除が認められた事例
  • 高齢の父親に対する日常的な暴力(殴打、蹴り等)
  • 要介護の母親を放置し、必要な世話を怠る行為
  • 認知症の親から金銭を騙し取る行為
  • 親の住居に侵入し、器物を破損する行為
廃除が認められなかった事例
  • 一度だけの口論での軽微な暴力
  • 親子喧嘩の延長程度の小競り合い
  • 生活上の意見の相違による感情的な対立

精神的虐待

継続的な精神的苦痛を与える行為:

  • 日常的な暴言や人格否定
  • 社会的な孤立を強制する行為
  • 精神的な威圧や恐怖を与える行為
  • 親の交友関係を断ち切る行為

経済的虐待

財産や金銭に関する不当な行為:

  • 親の預金を無断で引き出し続ける行為
  • 親名義の不動産を無断で処分する行為
  • 年金や給付金を着服する行為
  • 生活費を一切渡さない行為

虐待認定のポイント

  • 継続性:一回限りではなく、継続的・反復的な行為
  • 程度:社会通念上許容される範囲を明らかに超える行為
  • 故意性:故意による行為(過失は原則として除外)

重大な侮辱の判断基準

「重大な侮辱」とは、被相続人の人格や名誉を著しく傷つける行為を指します。

認められた侮辱行為の例

  • 親を「役立たず」「早く死ね」等と継続的に罵倒
  • 親の人格を否定する発言を第三者の前で行う
  • 親の身体的特徴を馬鹿にし続ける行為
  • 親の職業や学歴を侮辱し続ける行為

認められなかった例

  • 一時的な感情による暴言
  • 親子間のよくある口論
  • 意見の相違による批判的発言

判断のポイント

  • 社会通念:一般的な親子関係で許容される範囲を超えているか
  • 継続性:一度きりではなく、継続的な侮辱行為か
  • 客観性:第三者から見ても重大と認められる程度か
  • 影響:被相続人の精神的健康に深刻な影響を与えているか

その他の著しい非行の範囲

「その他の著しい非行」は、虐待・重大な侮辱以外の著しく不当な行為を包括的に規定したものです。

浪費・借金

  • 認められた例:ギャンブルによる多額の借金を親に肩代わりさせ続ける
  • 認められなかった例:一度の事業失敗による借金

犯罪行為

  • 認められた例:薬物犯罪で何度も逮捕され、家族に迷惑をかけ続ける
  • 重要な判断要素:犯罪の性質、回数、被相続人への影響

不道徳な行為

  • 認められた例:配偶者の不倫相手を自宅に連れ込み続ける
  • 認められた例:親の制止を無視して危険な宗教活動に熱中

家族関係の破綻

  • 音信不通:長期間の行方不明や連絡拒絶
  • 扶養義務違反:経済的余裕があるのに親の扶養を拒否
  • 介護放棄:介護が必要な親を一方的に放置

判断基準の総合考慮

裁判所は以下の要素を総合的に考慮して判断します:

  • 行為の継続性と程度
  • 被相続人に与えた精神的・経済的損害
  • 社会通念上の許容性
  • 親族関係修復の可能性
  • 当事者の年齢・健康状態・生活状況

生前廃除と遺言廃除の手続きと要件

相続人廃除には、被相続人が生前に申し立てる「生前廃除」と、遺言により意思表示する「遺言廃除」の2つの方法があります。それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。

生前廃除の手続きと特徴

申立ての要件

生前廃除は、被相続人本人が生前に家庭裁判所に申し立てる制度です(民法892条)。

申立人の要件
  • 被相続人本人のみ:代理人による申立ては原則不可
  • 判断能力:申立て時に十分な判断能力が必要
  • 意思能力:廃除の意味と効果を理解していること

申立ての手続き

  1. 管轄裁判所:被相続人の住所地の家庭裁判所
  2. 申立費用:収入印紙800円、郵便切手代
  3. 必要書類:申立書、戸籍謄本、廃除事由を証明する証拠

審判の流れ

  • 申立て受理:書面審査後、正式に事件として受理
  • 相手方への通知:廃除対象者に申立ての事実を通知
  • 審理:証拠調べ、当事者尋問等を実施
  • 審判:廃除を認めるか否かを判断

生前廃除のメリット・デメリット

メリット デメリット
確実性:被相続人自身が手続きを進められる 家族関係の悪化:申立てにより関係が決定的に破綻する可能性
対話の機会:廃除前に対象者との話し合いが可能 報復のリスク:廃除対象者からの報復を受ける危険
取消しの自由:生前なら自由に廃除を取り消せる 精神的負担:審判手続きによる被相続人の負担
即効性:審判確定と同時に効力発生

遺言廃除の手続きと注意点

遺言による廃除の意思表示

遺言廃除は、遺言書により廃除の意思を表示し、相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる制度です(民法893条)。

遺言書の記載方法

  • 明確な廃除意思:「相続人○○を廃除する」と明記
  • 廃除事由の記載:具体的な廃除事由を詳細に記載
  • 遺言執行者の指定:廃除申立てを行う遺言執行者を指定

遺言執行者による申立て

  • 申立義務:遺言執行者は廃除申立てを行う義務がある
  • 申立期間:相続開始後速やかに申立て(明確な期限はない)
  • 立証責任:遺言執行者が廃除事由の存在を立証

遺言廃除のメリット・デメリット

メリット デメリット
秘密性:生前は廃除意思が秘匿される 立証の困難:被相続人死亡後の証拠収集は困難
報復回避:被相続人への報復リスクがない 執行者の負担:遺言執行者に重い責任と負担
関係維持:生前の家族関係を維持できる可能性 不確実性:廃除が認められない可能性が高い
柔軟性:遺言書で詳細な事情説明が可能 時間的制約:証拠や証人の散逸リスク

申立てに必要な書類と立証方法

基本的な申立書類

  • 申立書:廃除事由を具体的に記載
  • 被相続人の戸籍謄本:被相続人との続柄を証明
  • 廃除対象者の戸籍謄本:本人確認と現在の状況
  • 住民票:現住所の確認

廃除事由の立証資料

証拠の種類と収集方法は廃除事由により異なります:

暴力・虐待の場合
  • 診断書・治療記録:被害を受けた際の医師の診断書
  • 警察への相談記録:110番通報記録、相談票
  • 写真:怪我の状況、器物損壊の様子
  • 第三者の証言書:目撃者、近隣住民の証言
金銭に関する非行の場合
  • 金融機関の取引記録:無断引き出しの履歴
  • 契約書・領収書:無断借入れや無断売却の証拠
  • 家計簿・出納帳:金銭管理の記録
  • 借用証書:返済されない借金の証拠
継続的な侮辱・非行の場合
  • 日記・記録:日時・内容を記録した資料
  • 録音・録画:実際の暴言等の記録(適法に取得されたもの)
  • 手紙・メール:侮辱的な内容の通信記録
  • 第三者証言:継続的な行為を知る人の証言

効果的な立証のポイント

  • 客観性:主観的な感情ではなく客観的事実を重視
  • 継続性:一度きりではなく継続的な行為であることを証明
  • 具体性:いつ、どこで、何をされたかを具体的に立証
  • 影響:被相続人への具体的な影響を明確に示す

廃除申立ての実務と成功のポイント

相続人廃除の申立てを成功させるためには、法的要件を満たすだけでなく、効果的な立証戦略と適切な手続き進行が不可欠です。実務的な観点から成功のポイントを詳しく解説します。

効果的な証拠収集の方法

証拠収集の基本原則

廃除申立ての成否は、廃除事由を客観的に立証できるかにかかっています。感情的な訴えではなく、客観的で説得力のある証拠の収集が重要です。

医療記録の活用

身体的虐待の場合、医療記録は最も強力な証拠となります:

  • 診断書の取得:受傷内容、程度、原因について医師の所見
  • 治療記録の保存:継続的な治療が必要だった場合の記録
  • 精神科受診記録:精神的な被害による治療記録
  • 介護記録:介護放棄による健康状態の悪化記録

公的記録の活用

  • 警察への相談記録:110番通報、交番への相談記録
  • 市町村の相談記録:高齢者虐待相談、生活保護相談等
  • 民生委員の記録:地域の民生委員による相談・対応記録
  • 介護保険関係記録:ケアマネジャーの記録、サービス利用記録

第三者証言の重要性

客観的な第三者による証言は、非常に重要な証拠となります:

  • 医師・看護師:被害状況を医学的見地から証言
  • 近隣住民:日常的な虐待行為の目撃証言
  • 親族・友人:被相続人の精神状態の変化等を証言
  • 専門職:ケアマネジャー、ヘルパー、民生委員等の証言

物的証拠の収集

  • 写真・動画:怪我の状況、器物損壊、荒らされた室内等
  • 録音記録:暴言・脅迫の様子(適法に取得されたもの)
  • 書面・メール:侮辱的な内容の手紙、メール、LINE等
  • 金融記録:無断引き出し、使い込みの証拠

申立書の作成と主張のポイント

申立書の構成

効果的な申立書は以下の構成で作成します:

1. 当事者の関係
  • 被相続人と廃除対象者の関係
  • 家族構成と生活状況の概要
  • これまでの親子関係の経緯
2. 廃除事由の具体的記載
  • 時系列での整理:いつから問題行動が始まったか
  • 具体的な行為:何をされたか詳細に記載
  • 頻度と程度:どの程度の頻度で、どの程度の被害か
  • 影響:被相続人にどのような影響を与えたか
3. 法的要件との対応
  • 虐待、重大な侮辱、著しい非行のいずれに該当するか
  • 社会通念上許容される範囲を超えていることの説明
  • 継続性・反復性があることの主張
4. 証拠の整理
  • 各主張を裏付ける証拠の一覧
  • 証拠の信用性と関連性の説明

効果的な記載のコツ

  • 客観的な記述:感情的な表現を避け、事実のみを記載
  • 具体性の重視:「いつも」「よく」ではなく具体的な日時・回数
  • 因果関係の明示:行為と被害の因果関係を明確に示す
  • 継続性の強調:一過性ではなく継続的な問題であることを強調

審判手続きでの対応戦略

第1回審判期日の準備

  • 争点の整理:何が争われるかを明確に把握
  • 証拠の体系化:主張に対応する証拠を整理
  • 想定問答の準備:裁判官からの質問を想定した回答準備
  • 相手方の反論予測:相手方の主張とそれに対する再反駁

審判での効果的な主張方法

  • 時系列での説明:問題行動の発生から現在まで順序立てて説明
  • 証拠との対応:主張の各部分について対応する証拠を明示
  • 社会通念との比較:一般的な親子関係と比較してどう異常か
  • 被害の深刻性:被相続人への影響がいかに深刻かを説明

相手方の反論への対処

よくある反論とその対処法:

「一時的な感情だった」への対処
  • 継続期間の長さを具体的に立証
  • 複数回にわたる行為の証拠提出
  • パターン化した行動であることの説明
「親も悪いところがあった」への対処
  • 被相続人の行為と相手方の行為の比較衡量
  • 社会通念上の許容範囲の説明
  • 親子関係における合理的な対応方法の提示
「経済的困窮によるやむを得ない行為」への対処
  • 他の解決方法があったことの指摘
  • 継続的・反復的な性質の強調
  • 被相続人への相談・説明義務の懈怠

複雑な家庭裁判所での手続きについては、遺産分割調停・審判の流れと成功のポイントも参考になります。

当事者尋問での注意点

  • 冷静な対応:感情的にならず、事実に基づいて回答
  • 具体的な回答:「覚えていない」「よく分からない」は避ける
  • 一貫性の維持:申立書や準備書面との一貫性を保つ
  • 相手方への対応:相手方の発言に感情的に反応しない

専門家のサポートが必要な場合は、相続トラブルを弁護士に依頼するタイミングと費用についてもご確認ください。


廃除以外の対処法と総合的な対策

相続人廃除は要件が厳格で認められるハードルが高いため、廃除以外の方法も含めた総合的な対策を検討することが重要です。状況に応じて最適な方法を選択し、組み合わせることで効果的な対処が可能になります。

遺言書による相続対策

遺留分を考慮した遺言書作成

廃除が困難な場合でも、遺言書により相続分を最小限に抑えることができます:

具体的な方法
  • 遺留分相当額のみ相続:法定相続分ではなく遺留分相当額のみ
  • 現金での遺留分対応:不動産等の重要財産は他の相続人に相続
  • 負担付遺贈:相続の条件として特定の義務を課す
  • 遺言執行者の指定:信頼できる第三者を遺言執行者に指定

付言事項の活用

遺言書の付言事項で以下の内容を記載:

  • 廃除に至らなかった理由:法的要件を満たさないが問題があることの説明
  • 他の相続人への説明:なぜこのような分割になったかの説明
  • 和解への願い:将来的な家族関係の修復への希望

遺言書作成時の注意点

  • 公正証書遺言の利用:無効確認訴訟のリスクを最小化
  • 定期的な見直し:状況変化に応じた内容の更新
  • 遺留分対策の検討:遺留分侵害額請求への事前対応

生前対策と財産管理

生前贈与による財産移転

問題のある相続人以外への計画的な財産移転:

  • 年110万円の基礎控除活用:長期間にわたる計画的贈与
  • 住宅取得等資金の非課税特例:子や孫への住宅資金援助
  • 教育資金一括贈与の特例:孫世代への教育資金贈与

家族信託の活用

  • 財産管理の継続:認知症等になっても適切な財産管理
  • 承継者の指定:信頼できる家族への財産承継
  • 柔軟な条件設定:複雑な家族関係に応じた柔軟な設計

任意後見契約の締結

  • 将来の財産管理:判断能力低下時の財産保護
  • 信頼できる後見人:問題のある相続人以外を後見人に指定
  • 生活環境の維持:希望する生活環境の維持

成年後見制度の活用

既に判断能力が低下している場合:

  • 法定後見の申立て:適切な後見人の選任を裁判所に求める
  • 専門職後見人の活用:弁護士・司法書士等の専門職後見人
  • 後見監督人の選任:親族後見人の監督体制構築

法的手続きと専門家の活用

保護命令等の活用

DV等の場合には以下の法的手続きも検討:

  • 保護命令の申立て:裁判所による接近禁止命令
  • 住民票の閲覧制限:DV等支援措置による住所秘匿
  • 緊急時の避難:一時保護施設の利用

刑事告発の検討

犯罪に該当する行為については:

  • 窃盗罪:無断での財産処分
  • 詐欺罪:偽装による財産取得
  • 傷害罪:身体的暴力
  • 脅迫罪:脅迫による財産取得

専門家チームの構築

複雑な問題には専門家の連携が重要:

  • 弁護士:法的手続き全般の指導・代理
  • 司法書士:成年後見、家族信託の設計
  • 税理士:相続税対策、贈与税対策
  • ファイナンシャルプランナー:総合的な資産設計

総合的な対策の立案

  • 短期的対策:緊急性の高い問題への対処
  • 中期的対策:生前贈与、信託等の計画的実施
  • 長期的対策:相続全体を見据えた包括的計画
  • リスク管理:各対策の失敗リスクと代替案

対策実施時の注意点

  • 法的有効性の確認:各対策の法的リスクの検証
  • 税務上の問題:贈与税、相続税への影響
  • 家族関係への配慮:他の家族への影響と説明
  • 継続的な見直し:状況変化に応じた対策の修正
ポイント:複数の対策を組み合わせることで、廃除に頼らない効果的な問題解決が可能になります。重要なのは、個々の状況に最適な組み合わせを見つけることです。

まとめ

相続人廃除は、悪質な行為をする相続人から相続権を剥奪する強力な制度ですが、その要件は想像以上に厳格で手続きも複雑です。「息子の暴力に耐えられない」「娘の使い込みを止めたい」という切実な思いがあっても、法的要件を満たさなければ廃除は認められません。安易に申し立てても認められる可能性は低く、かえって家族関係の悪化を招き、法的トラブルが長期化する恐れがあります。
廃除申立てを検討する際に最も重要なのは、客観的な証拠に基づいて廃除事由の存在を冷静に評価することです。感情的な訴えだけでは裁判所を説得できません。継続的で深刻な虐待、社会通念上許容できない重大な侮辱、著しい非行といった法的要件を満たし、それを客観的に立証できる証拠が揃っているかを慎重に判断する必要があります。
また、廃除制度には限界があることも理解しておく必要があります。廃除されても代襲相続は発生するため、完全に血縁関係を断ち切ることはできません。兄弟姉妹は廃除の対象外ですし、遺留分を有する相続人のみが対象となります。
廃除が困難な場合や確実性を求める場合は、遺言書による相続分の調整、生前贈与による財産移転、家族信託の活用、成年後見制度の利用など、他の方法との組み合わせも積極的に検討しましょう。これらの対策を総合的に活用することで、廃除に頼らない効果的な問題解決が可能になります。
相続人廃除は専門性の高い複雑な手続きです。一人で抱え込まず、相続問題に精通した弁護士や司法書士等の専門家のサポートを受けながら、あなたの状況に最適な対策を講じることを強くお勧めします。適切な準備と専門的なアドバイスにより、悪質な相続人への効果的な対処が必ず見つかります。

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竹内 省吾
竹内 省吾
弁護士
慶應大学法学部卒。相続・不動産分野のスペシャリスト弁護士。常時50社以上の顧問・企業法務対応や税理士(通知)としての業務対応の経験を活かし、相続問題に対して、多角的・分野横断的なアドバイスに定評がある。生前時から相続を見越した相続税対策や事業承継にも対応。著書・取材記事多数。
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