「自分の財産を誰にどのように残したいか」を明確にするため、遺言書の作成を検討する方が増えています。相続トラブルの増加や家族構成の複雑化により、自分の意思を確実に伝える手段として遺言書の重要性が高まっているからです。
しかし、いざ遺言書を作成しようとすると、「自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがいいのか」「法的に有効な遺言書を確実に作成できるのか」「費用や手間はどれくらいかかるのか」といった悩みが生じます。
遺言書は形式に不備があると無効になってしまうため、正しい知識が不可欠です。また、遺言方式によって費用や効力に大きな違いがあり、自分の状況に最適な選択をすることが重要です。
本記事では、主要な遺言方式である自筆証書遺言と公正証書遺言を詳しく比較し、それぞれの特徴とメリット・デメリット、確実な作成方法について実務的な観点から解説します。相続の基本から詳しく知りたい方は、相続手続きの総合ガイドもご覧ください。

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遺言書の種類と基本的な特徴

遺言書には民法で定められた複数の方式があり、それぞれ異なる特徴と要件を持っています。まずは遺言の種類と基本的な特徴を理解することから始めましょう。

自筆証書遺言の基本的要件

自筆証書遺言は、遺言者が自分で書く最も基本的な遺言方式です(民法968条)。

基本的な4要件

  1. 全文自書:遺言の内容をすべて自分の手で書く
  2. 日付記載:作成年月日を正確に記載する
  3. 署名:遺言者本人の氏名を自署する
  4. 押印:署名の後に印鑑を押す

2019年法改正による変更点

法改正により、以下の点で利便性が向上しました:

財産目録のパソコン作成が可能
  • 財産目録部分はパソコンや代筆で作成可能
  • ただし、各ページに自署・押印が必要
  • 通帳のコピー、登記事項証明書等の添付も可能
法務局保管制度の創設
  • 法務局で遺言書を保管するサービス開始
  • 紛失・改ざんのリスクを軽減
  • 相続時の検認手続きが不要

自筆証書遺言のメリット・デメリット

メリット デメリット
費用が安い:紙とペン、印鑑があれば作成可能 無効リスク:形式不備で無効になりやすい
秘密性が高い:内容を他人に知られない 紛失・改ざんリスク:適切な保管が必要
いつでも作成可能:思い立った時にすぐ作成 発見されないリスク:遺言書の存在が伝わらない
変更が容易:新しい遺言書を書けば古いものは無効 検認手続き:家庭裁判所での検認が必要(法務局保管除く)

公正証書遺言の基本的要件

公正証書遺言は、公証人が作成する最も確実な遺言方式です(民法969条)。

作成要件

  1. 証人2名以上の立会い:成年で一定の欠格事由に該当しない者
  2. 遺言者の口述:遺言内容を公証人に口頭で伝える
  3. 公証人の筆記:口述内容を公証人が文書化
  4. 読み聞かせ・閲覧:作成した遺言書を遺言者・証人に確認
  5. 署名・押印:遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印

公正証書遺言のメリット・デメリット

メリット デメリット
無効リスクが極めて低い:公証人が法的要件を確認 費用がかかる:公証人手数料と証人への謝礼
紛失・改ざんの心配なし:公証役場で原本を永久保管 時間と手間:事前準備と公証役場での手続き
検認手続き不要:相続開始後すぐに執行可能 秘密性の制約:証人に内容を知られる
証明力が強い:公文書として高い証明力 証人の確保:適任者を2名見つける必要

秘密証書遺言とその他の方式

秘密証書遺言(民法970条)

遺言内容を秘密にしながら、遺言書の存在を公証人に証明してもらう方式です。

  • 特徴:内容は秘匿、存在は公証
  • 要件:署名・押印、封印、公証人・証人2名の前で手続き
  • 実務上の問題:手間の割にメリットが少なく、ほとんど利用されない

特別方式の遺言

緊急時や特殊な状況で認められる遺言方式:

  • 危急時遺言:病気等で死期が迫った場合
  • 隔絶地遺言:船舶や航空機内での遺言
  • 実務上の限界:要件が厳格で適用場面が限定的
ポイント:実際の遺言作成では、自筆証書遺言と公正証書遺言の2択で検討することが一般的です。

自筆証書遺言の詳細な書き方と注意点

自筆証書遺言を有効に作成するためには、法的要件を満たしつつ、明確で誤解のない内容にすることが重要です。具体的な書き方と注意点を詳しく解説します。

必須記載事項と形式要件

基本的な記載内容

自筆証書遺言には以下の内容を明確に記載する必要があります:

1. タイトル

「遺言書」と明記(必須ではないが推奨)

2. 遺言者の特定
  • 氏名(戸籍上の正確な氏名)
  • 生年月日
  • 住所(現住所を記載)
3. 相続財産の特定
  • 不動産:所在、地番、家屋番号、持分を正確に記載
  • 預貯金:金融機関名、支店名、口座種別、口座番号
  • 株式:会社名、株数または持分
  • その他:具体的に特定できる記載
4. 相続分の指定
  • 誰に何を相続させるかを明確に記載
  • 「相続させる」(相続人の場合)
  • 「遺贈する」(相続人以外の場合)
5. 日付・署名・押印
  • 作成年月日を正確に記載(「令和○年○月○日」)
  • 遺言者の氏名を自署
  • 印鑑を押印(認印でも有効だが実印推奨)

記載例

遺言書
私、○○○○(昭和○年○月○日生)は、次のとおり遺言する。
第1条 私の有する下記不動産を、妻○○○○に相続させる。
    所在 ○○市○○町○丁目○番○号
    家屋番号 ○番○号
    種類 居宅
    構造 木造瓦葺2階建
第2条 私の有する下記預金を、長男○○○○に相続させる。
    ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○
第3条 遺言執行者として、○○○○を指定する。
令和○年○月○日
                ○○○○ 印

財産目録の作成方法

2019年の法改正により、財産目録部分はパソコン作成や代筆が可能になりました。

パソコン作成財産目録の作成方法

1. 作成の要件
  • 財産目録の各ページに遺言者の自署・押印が必要
  • 両面印刷の場合は両面とも署名・押印
  • 通帳のコピー等を添付する場合も各ページに署名・押印
2. 記載内容
  • 不動産:登記事項証明書と同程度の正確な記載
  • 預貯金:通帳の表紙と1ページ目のコピー添付可
  • 株式:証券会社名、銘柄、株数等を詳細に記載
  • その他財産:保険証券、債権関係書類等のコピー添付可
3. 注意点
  • 財産目録と遺言本文は明確に区別する
  • 遺言本文(相続分の指定等)は必ず自筆で作成
  • 財産目録の署名・押印漏れは部分的無効の原因

法務局保管制度の活用

  • 申請方法:遺言者本人が法務局に出頭
  • 手数料:3,900円
  • メリット:検認不要、紛失・改ざん防止
  • 注意点:法務局は内容の適法性は審査しない

よくある失敗例と対策

自筆証書遺言でよく見られる失敗例とその対策を紹介します。

日付に関する失敗

  • 失敗例:「令和5年7月吉日」「令和5年7月」
  • 対策:「令和5年7月15日」のように年月日を正確に記載

署名・押印の失敗

  • 失敗例:通称名での署名、押印忘れ
  • 対策:戸籍上の正確な氏名で署名、必ず押印

財産の特定不足

  • 失敗例:「自宅を長男に」「預金を妻に」
  • 対策:登記簿、通帳等で正確な情報を確認して記載

共同遺言の禁止

  • 失敗例:夫婦で一通の遺言書を作成
  • 対策:遺言者一人につき一通ずつ作成

曖昧な表現

  • 失敗例:「財産の大部分を」「適当に分けて」
  • 対策:具体的な財産と相続分を明確に記載

加除訂正の失敗

  • 失敗例:修正テープ使用、訂正方法の誤り
  • 対策:できるだけ書き直し、やむを得ない場合は民法の方式に従う

遺言書が無効になってしまうと、相続人間でトラブルになる可能性があります。遺言書を巡るトラブル事例と対処法を参考に、確実な遺言書を作成しましょう。


公正証書遺言の作成手続きと特徴

公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が作成に関与するため、確実性が高い遺言方式です。手続きの流れと特徴を詳しく解説します。

事前準備と必要書類

公証役場での相談予約

公正証書遺言の作成は事前予約制です。以下の手順で進めます:

  1. 最寄りの公証役場を確認:日本公証人連合会のサイトで検索
  2. 電話で相談予約:遺言作成の旨を伝えて予約
  3. 初回相談:遺言内容の相談と必要書類の説明
  4. 作成日の予約:証人の都合も含めて日程調整

必要書類一覧

遺言者に関する書類

  • 戸籍謄本:遺言者の身分確認(3ヶ月以内)
  • 住民票:現住所の確認(3ヶ月以内)
  • 印鑑証明書:実印の証明(3ヶ月以内)
  • 実印:遺言書への押印用

相続人に関する書類

  • 戸籍謄本:相続人全員分(続柄確認のため)
  • 住民票:相続人全員分(現住所確認)

財産に関する書類

  • 不動産登記事項証明書:所有不動産すべて
  • 固定資産評価証明書:相続税評価額確認
  • 預貯金通帳:銀行名、支店名、口座番号確認
  • 証券会社の残高証明書:株式等の評価額確認
  • 保険証券:生命保険の契約内容確認

受遺者に関する書類(相続人以外に遺贈する場合)

  • 住民票:受遺者の住所・氏名確認
  • 法人登記事項証明書:法人への遺贈の場合

証人の選定と要件

公正証書遺言には2名以上の証人が必要で、以下の要件を満たす必要があります。

証人の欠格事由(民法974条)

以下に該当する者は証人になれません:

  • 未成年者
  • 推定相続人、受遺者およびその配偶者・直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記・使用人

証人として適任な人

  • 弁護士・司法書士等の専門家:守秘義務があり最適
  • 信頼できる友人・知人:家族関係にない第三者
  • 公証役場紹介の証人:有料だが確実(1名1万円程度)

証人の守秘義務

証人には法的な守秘義務があり、遺言内容を他人に漏らすことは禁止されています。違反した場合は刑事罰の対象となります。

証人への謝礼

  • 専門家:2万円〜5万円程度
  • 一般の方:1万円程度
  • 公証役場紹介:公証役場が設定した金額

公証役場での作成当日の流れ

作成当日のスケジュール例

1. 受付・本人確認(所要時間:10分)
  • 遺言者の本人確認(免許証等)
  • 証人の本人確認と欠格事由の確認
  • 必要書類の最終確認
2. 遺言内容の口述(所要時間:30分〜1時間)
  • 遺言者が公証人に遺言内容を口頭で伝える
  • 公証人が法的に適切な表現に修正・提案
  • 証人立会いのもとで内容確認
3. 公証人による筆記・確認(所要時間:30分)
  • 公証人が遺言内容を文書化
  • 遺言者・証人に読み聞かせまたは閲覧
  • 内容に間違いがないかの確認
4. 署名・押印(所要時間:10分)
  • 遺言者が署名・実印押印
  • 証人2名が署名・押印
  • 公証人が署名・職印押印
5. 正本・謄本の交付(所要時間:10分)
  • 原本:公証役場で永久保管
  • 正本:遺言執行者が保管(通常は遺言者)
  • 謄本:予備として遺言者が保管

作成当日の注意点

  • 体調管理:遺言者の意思能力が重要
  • 時間の余裕:内容確認に十分な時間を確保
  • 質問の準備:不明点は遠慮なく公証人に質問
  • 最終確認:署名前に内容を慎重に確認

遺言書作成後の保管方法も重要です。遺言書の保管方法と検認手続きの詳細もあわせてご確認ください。


自筆証書遺言と公正証書遺言の徹底比較

どちらの遺言方式を選ぶべきかを判断するため、重要な観点から詳細に比較分析します。

費用・時間・手続きの複雑さ比較

費用比較

自筆証書遺言の費用
  • 基本費用:紙代・ペン代・印鑑代のみ(数百円〜数千円)
  • 法務局保管:3,900円(任意)
  • 専門家相談:弁護士相談料1時間1万円〜3万円(任意)
  • 総額目安:数千円〜5万円程度
公正証書遺言の費用

公証人手数料は遺言内容により決定されます:

  • 目的財産1億円以下:5万円〜15万円程度
  • 目的財産1億円超:10万円〜25万円程度
  • 証人謝礼:2万円〜10万円
  • 書類取得費用:5千円〜1万円
  • 総額目安:10万円〜40万円程度

具体的な公証人手数料

目的財産の価額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 23,000円
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円

時間・手続きの比較

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成時間 数時間〜数日 公証役場で2〜3時間
準備期間 財産調査を含めて1週間〜1ヶ月 書類収集を含めて1ヶ月〜2ヶ月
手続きの複雑さ 比較的簡単 やや複雑

確実性・証明力・無効リスク比較

法的有効性の確保

自筆証書遺言
  • 無効リスク:形式不備により無効になりやすい
  • 主な無効事由:日付なし、他人による代筆、共同遺言等
  • 無効率:家庭裁判所での検認事件の約10%が無効
公正証書遺言
  • 無効リスク:極めて低い
  • 公証人の関与:法的要件を公証人が確認
  • 無効率:ほとんど無効にならない(年間数件程度)

証明力の強さ

自筆証書遺言
  • 証明力:私文書として一般的な証明力
  • 真正性の立証:筆跡鑑定等が必要な場合あり
  • 検認手続き:家庭裁判所での検認が必要(法務局保管除く)
公正証書遺言
  • 証明力:公文書として強い証明力
  • 真正性:公証人の認証により真正性が担保
  • 検認手続き:不要(すぐに執行可能)

相続手続きでの利便性

手続き 自筆証書遺言 公正証書遺言
銀行手続き 検認済証明書が必要 遺言書の提示のみで手続き可能
不動産登記 検認済証明書が必要 遺言書の提示のみで登記可能
所要時間 検認手続きに1〜3ヶ月 相続開始後すぐに手続き開始可能

秘密性・変更の容易さ・保管方法比較

秘密性の比較

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成時の秘密性 完全に秘匿可能 証人2名に内容を知られる
保管時の秘密性 適切な保管により秘匿可能 公証役場で厳重管理
第三者の関与 なし 公証人・証人が内容を知る

変更・撤回の容易さ

自筆証書遺言
  • 変更方法:新しい遺言書を作成(古いものは無効)
  • 部分変更:加除訂正の方式に従う(複雑)
  • 撤回:遺言書の破棄または新遺言書での撤回
公正証書遺言
  • 変更方法:新しい公正証書遺言を作成
  • 費用:変更の都度、公証人手数料が必要
  • 撤回:新しい遺言書での撤回(原本は公証役場に残存)

保管方法の安全性

自筆証書遺言
  • 自宅保管:紛失・災害・改ざんのリスク
  • 貸金庫保管:年間数千円〜1万円の費用
  • 法務局保管:3,900円で安全性確保
公正証書遺言
  • 公証役場保管:原本を永久保管(最も安全)
  • 検索システム:全国の公証役場で検索可能
  • 災害対策:複数箇所でのバックアップ体制

遺言書だけでなく、生前の相続対策も重要です。生前贈与を活用した相続税対策の方法もご検討ください。


状況別の最適な遺言方式選択と実践的アドバイス

あなたの具体的な状況に応じて、最適な遺言方式を選択するための判断基準と実践的なアドバイスを提供します。

財産規模・複雑さによる選択基準

財産規模による判断

3,000万円未満の場合
  • 推奨:自筆証書遺言(法務局保管制度活用)
  • 理由:費用対効果が高い、手続きが簡単
  • 条件:財産構成が単純、相続人関係が良好
3,000万円〜1億円の場合
  • 推奨:公正証書遺言
  • 理由:確実性のメリットが費用を上回る
  • 考慮点:相続税申告の必要性、税理士との連携
1億円超の場合
  • 推奨:公正証書遺言
  • 理由:争族リスクが高い、税務対策が複雑
  • 追加検討:遺言信託、専門家チームの活用

財産の複雑さによる判断

単純な財産構成
  • 自宅不動産1つ+預貯金数口座
  • 相続人は配偶者と子のみ
  • 適用:自筆証書遺言で十分
複雑な財産構成
  • 複数の不動産(賃貸物件含む)
  • 非上場株式、投資信託、外国資産
  • 借入金、保証債務
  • 適用:公正証書遺言が安全
事業用資産を含む場合
  • 会社経営、個人事業主
  • 事業承継の問題
  • 適用:公正証書遺言+専門家サポート

家族関係・争族リスクによる判断

良好な家族関係の場合

特徴
  • 相続人同士の関係が良好
  • 遺言内容について事前に話し合い済み
  • 相続人全員が遺言書の存在を理解

推奨方式:自筆証書遺言
理由:費用を抑えつつ、意思表示として十分

潜在的な対立リスクがある場合

リスク要因
  • 相続人間の経済格差が大きい
  • 過去に家族間のトラブル経験
  • 再婚により複雑な家族関係
  • 介護負担の偏り

推奨方式:公正証書遺言
理由:争いになった場合の証明力の強さ

明確な争族リスクがある場合

高リスク要因
  • 既に相続人間で対立している
  • 遺言内容に強い反発が予想される
  • 遺留分侵害額請求の可能性が高い
  • 遺言無効確認訴訟のリスク

推奨方式:公正証書遺言+弁護士サポート
理由:最高レベルの証明力と専門的サポート

争族リスクの評価チェックリスト

ポイント:3つ以上該当する場合は公正証書遺言を推奨します。

作成後の管理と定期的見直し

適切な保管方法

自筆証書遺言の保管
  • 法務局保管:最も安全(検認不要)
  • 貸金庫保管:次善の策(年間費用要)
  • 自宅保管:家族に保管場所を伝達
公正証書遺言の保管
  • 正本:遺言執行者または信頼できる家族が保管
  • 謄本:遺言者が保管(予備として)
  • 検索可能:全国の公証役場で検索できる

定期的な見直しの必要性

見直しが必要な状況
  • 家族状況の変化:結婚、離婚、出生、死亡
  • 財産状況の変化:不動産の売買、事業の変化
  • 法律の改正:相続法、税法の改正
  • 意思の変化:年月の経過による考えの変化
見直しの頻度
  • 定期見直し:3〜5年に1回
  • 随時見直し:重大な変化があった時
  • 高齢期の見直し:毎年1回程度

家族への伝達方法

遺言書の存在の伝達
  • 直接説明:信頼できる家族に直接伝える
  • エンディングノート活用:遺言書の存在と保管場所を記載
  • 遺言執行者への通知:遺言執行者に詳細を伝達

遺言書の存在を家族に伝える際は、エンディングノートの活用も効果的です。

伝達時の注意点
  • 内容の詳細は避ける:存在と保管場所のみ伝達
  • 理解と納得を促す:遺言書作成の理由を説明
  • 定期的な確認:保管場所や連絡先の変更を随時更新

専門家との継続的な関係

  • 弁護士・司法書士:法的問題の継続相談
  • 税理士:税制改正への対応
  • ファイナンシャルプランナー:総合的な資産設計
ポイント:複雑な状況や高額な財産の場合は、専門家との継続的な関係を築き、定期的にアドバイスを受けることをお勧めします。

まとめ

遺言書の作成は、自分の意思を確実に実現し、家族の負担を軽減するための重要な手段です。「どの方式で作成すべきか迷っている」「法的に有効な遺言書を確実に作りたい」という思いは当然であり、正しい知識に基づいた適切な選択が重要です。
自筆証書遺言と公正証書遺言にはそれぞれ異なる特徴があり、費用や確実性、利便性において一長一短があります。自筆証書遺言は費用が安く秘密性が高い一方で、形式不備による無効リスクがあります。法務局保管制度の導入により利便性は向上しましたが、複雑な財産や争族リスクがある場合は注意が必要です。
一方、公正証書遺言は費用がかかり手続きが複雑ですが、無効リスクが極めて低く、相続手続きもスムーズに進められます。特に、財産が高額な場合や相続人間に潜在的な対立がある場合は、公正証書遺言の安全性と証明力が大きなメリットとなります。
最も重要なのは、あなたの財産状況、家族関係、価値観に最も適した方式を選択することです。財産規模が3,000万円未満で家族関係が良好なら自筆証書遺言、それ以上の場合や争族リスクがある場合は公正証書遺言が一般的な判断基準となります。
どちらを選択するにしても、法的要件を満たした有効な遺言書を作成し、適切に保管し、定期的に見直すことが大切です。また、遺言書の存在を適切に家族に伝え、円滑な相続の実現を図ることも重要な要素です。
一人で悩まず、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、あなたにとって最適な遺言書を作成してください。確実な遺言書により、あなたの想いが家族に確実に伝わり、円満な相続が実現されることを願っています。

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竹内 省吾
竹内 省吾
弁護士
慶應大学法学部卒。相続・不動産分野のスペシャリスト弁護士。常時50社以上の顧問・企業法務対応や税理士(通知)としての業務対応の経験を活かし、相続問題に対して、多角的・分野横断的なアドバイスに定評がある。生前時から相続を見越した相続税対策や事業承継にも対応。著書・取材記事多数。
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