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スクショが違法!?著作権法の改正について徹底解説☆

 ここのところ、ニュースを見ていると、著作権法の改正についての話題がちらほら…なにやらスクリーンショットも違法行為になってしまうという噂も!!これは素知らぬふりできませんよね。そこで今回著作権法改正について、解説します。

著作権法ってどんな法律?

 現在、改正について騒がれていますが、そもそも著作権法に定められている著作権とは何か、そして、著作権法では何のために、何が守られているか、簡単に解説しておきます。

「著作権」とは、その名のとおり著作権法の中に規定されている権利なのですが、その著作権を持っている人のことを「著作権者」といいます。簡単にいうと、著作権は、著作権者が自分の著作物を無断で利用されない権利のことです。

そもそも著作権法の目的は第1条において

第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

と定められています。…よくわからないですね。
 例えば、Aさんが何年もかけて一生懸命、小説を書きました。これは力作だと自信満々に発表しました。Aさんの小説は瞬く間に大ヒット!しかし、著作権が定められていないと、Aさんの力作をBさんが勝手にマンガ化することもできますし、Cさんが勝手にドラマ化することもできます。あるいはDさんが我が物顔でほぼ同じ内容の小説を発売することだってできてしまいます。

 Aさんからすれば、何年もかけて一生懸命作ったのに…いとも簡単に他人に無断で使用されてしまうわけです。しかも、微妙に内容を変更されたりとかして…「あー勝手に使わないで!」、「使うにしてもそんな風に変えないで!」という感じになりますよね。どんなに時間をかけて作っても、作品が世に放たれた瞬間にAさんの意思は作品に及ばなくなってしまうのです。もう二度と小説なんて書かない、とAさんは思ってしまうかもしれません。

 文化活動や芸術活動は日本の発展において欠かせないものです。こうした活動を行っている方々の権利をしっかり保護しなければ、だれも創作活動を行ってくれなくなってしまいます。そこで著作権法によって、著作権者の著作物を無断で利用されないように保護し、文化の発展を助けることにしたのです。ちなみに著作権法上の著作物は、著作権法第2条第1項第1号において「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定されています。小説とか写真とか、絵とか、舞踊等が具体例です。

現行の著作権法

 改正を見る前に、現行の著作権法では、著作権がどのように保護されているのか見てみましょう。

 現行法上では、原則として、他人の著作物を無断で利用してはいけないとされています。利用するときには、著作権者から利用許諾をとりましょうね、ということです。著作権と一言でいっても、その中には様々な権利が含まれています。複製権(コピーする権利)、上演権、展示権、二次的著作物利用権等、これらの権利に該当する場合には、著作権者の許諾をとりましょう、というのが原則です。

 しかし、この原則を過度に貫くと結構不便なんです。例えば、自分であとで見るためにドラマを録画したという場合、通常だと、複製権の侵害になるので、著作権者の許諾が必要になります。でも…そんなの不便すぎますよね。著作権者からしても、いちいち聞いてくれるな、となりますね。

 そこで、著作権法では、原則は利用許諾が必要だけど、例外的に無断で利用してもいいよ、というケースを法定化しています。結構細かくいろいろと定められています。たとえば、私的使用の場合や図書館での複製、正当な引用、教科書や教育番組の放送、入試問題としての複製、非営利目的の上映等です。これらについては、著作権者の許諾なしに利用していいよ、とされています。

 著作権法の趣旨は、上記のとおり著作権者の権利保護なので、これを侵害しない限りでは、著作物の自由な利用を認めた方が文化の発展に資することもありますものね。著作権者だって、たくさんいろんなところに載せてもらった方が、知名度や認知度があがりますから、利用制限することが100%著作権者の権利保護に資するというわけでもないのです。

 以下では,今回のスクリーンショットと関係の深い私的使用目的の複製について詳しく見ていきましょう。

私的使用目的の複製ならなんでもOK?

 上記のとおり、著作権法では、原則著作物の利用について、著作権者に利用許諾を取り付けなければなりません。しかし、それでは不便なことも多くあるので、例外として著作権者に無断で利用してもいいケースを定めています。その一つが私的使用目的の複製でしたね。

 では、私的使用目的の複製ならなんでもOKでしょうか。

 いいえ、違います。。ここから少し複雑になりますが、なるべくわかりやすく説明しますね。

と、その前に!!「使用」と「利用」の違いについて解説しておきます。

 現行法上、著作権者の利用許諾なく利用をしていいとされているのは、あくまでも私的「使用」目的です。私的「利用」目的ではありません。私的利用目的の場合は、原則どおり、著作権者の利用許諾が必要になります。
 使用とは、自分で読んだり、聞いたり、見たりすることです。他方、利用とは、インターネット上にアップロードしたりすることです。
 したがって、現行法上でも、自分のSNSにアップするために他人の著作物をコピーすることは禁止されています。認められているのは、あくまでも自分が使うためだけにコピーすることです。

 さて、私的使用目的の複製に話を戻します。そもそも私的使用目的の複製が認められたのは、上記のとおり著作権者の権利侵害の程度が大きくないこと、複製の許諾や利用料の徴収が大変なこと、家庭内に法律を持ち込むことに抵抗がある等色々な理由からです。

 ということは、いくら自分で使うことが目的だとしても、それが著作権者の権利侵害をする態様の複製は認めることができない、と考えられますね。

 そこで例外の例外として、違法にアップロードされた録音・録画の場合には、それが違法と知りながら複製することは禁止!とされています。

 違法にアップロードされた録音・録画が自由に複製(ダウンロード)されるようでは、正式なものの販売速度が減速してしまいますものね。著作権者としては大きな迷惑です。そこで、違法にアップロードされた録音・録画を勝手に複製することは禁止されました。

 上記で「例外の例外として」と記載したのは、著作権法の規定が下記の通りだからです。

原則:著作物の利用には著作権者の利用許諾が必要
例外:私的使用目的の複製は利用許諾が不要
例外の例外:私的使用目的の複製であっても、その対象が違法にアップロードされた録音・録画の場合、それが違法であると知りながら複製することは禁止

 現行法上、例外の例外とされているのは、対象が「違法にアップロードされた録音・録画」であって、複製する側が「違法であることを知っていること」が要件とされています。

 したがって、「録音・録画」ではなく、写真や小説の場合には、たとえそれが違法であると認識していたとしても複製してもかまわない、例外として定められている私的使用目的の複製に該当して、利用許諾なく複製することができるのです。

スクリーンショットが違法になる!?〜今回の改正へ

 いま、騒がれている著作権法の改正ではこの「違法にアップロードされた録音・録画」が対象を広げて「違法にアップロードされた著作物」になるとされています。
 つまり、録音・録画のみならず、写真や小説等のコピーもそれが違法にアップロードされているものならば、それが違法と認識している以上、複製することができなくなります。

 そして、この「複製」が紛れもなく、スクリーンショットなのです。

 現在騒がれているのは、写真や小説等をスクリーンショットすることも違法になるのか!?という少々粗めな解釈のせいです。

 あくまでも、対象は「違法にアップロードされた」写真や小説等を「それが違法であると知りながら」スクリーンショットすることが違法だとされたのです。
 したがって、公式サイト等に掲載された写真や小説は「違法にアップロードされた」ものではないので、従来通りスクリーンショットを撮ることが可能ですし、「それが違法である」と知らなければ、仮に違法にアップロードされた写真をスクリーンショット撮ったとしても法に反する行為とはいえません。

 ただ…インターネット上には様々な情報が掲載されているので、どれが違法かなんて、そう容易に判別つかないですよね。
 「これ違法なのかな」と思いながらでは、気軽にスクリーンショットもとれません。
 したがって、今回の改正は国民の情報収集行為に対して、過度な萎縮効果を及ぼしてしまうのではないか、と懸念されています。

 念のため言っておくと、改正前の現行法でも私的利用目的の複製はそれが違法にアップロードされたものかどうかを問わず、禁止されているので、他人の著作物を勝手にスクリーンショットして、それを自分のSNSに掲載することは禁じられています。…それが引用にあたれば許されるとかそういう難しい問題は、ここでは割愛します。

 こうした禁止の背景には海賊版サイトの横行があると言われています。
違法にアップロードされた録音・録画を取り締まるだけでは、違法にアップロードされたマンガをダウンロードする行為を取り締まれないのです。
 だから対象を違法にアップロードされた著作物に広げたのです。

 そもそも論を言ってしまうと、違法にアップロードした側を取り締まってくれればいいのです。その利用者側を取り締まるのではなくて!!現状では違法にアップロードされた著作物を利用しようとしている側を取り締まっているわけですから、そうではなくて、違法にアップロードした側をとりしまってくれればいいのですよ。。。ただ、実際はアップロードする側を取り締まるには色々な弊害があるようです。そもそも日本の著作権法が及ばない国が主体となっている場合等です。そこでやむなく利用者側を取り締まることにしたのですね。

今後どうなる。。。

 上記のように著作権法が改正されることになると、公式サイト以外のサイトをスクリーンショットすることも違法となってしまう可能性が常につきまとうということになります。
 国民の情報収集にとってインターネットは欠かせなくなっている今、本当にこの改正内容でいいのかどうか、いまいちど検討をしてほしいものですね。

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竹内 省吾 弁護士
弁護士法人 エース
代表弁護士竹内 省吾
所属弁護士会第一東京弁護士会