認められるか,同性婚?
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2019年2月14日に一斉提訴の報道
ついに日本でも,同性婚が認められていないのは違憲であるとして国家賠償訴訟が提起されるようです。
訴訟の弁護団を中心とした団体「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」が21日、東京都渋谷区のTRUNK HOTELでイベントを開催。冒頭、同団体代表で弁護士の寺原真希子さんより、一斉提訴の期日が発表された。
https://www.huffingtonpost.jp/soushi-matsuoka/marriage-for-all-japan_a_23648089/
「愛を誓い合う日、2月14日のバレンタインデーに、全国で一斉に提訴します。 好きな人と一緒に生きたいと思うすべての人たちが、お互いの愛を誓い合って、幸せに暮らして欲しい。そんな願いをこめて、このバレンタインデーという日に決めました」
「誰もが偏見を気にすることなく愛を交わし、望む場合には結婚という形で法的保護と社会的承認を得ることができる、そんな当たり前の社会を実現させます。 同性愛などの方々がその尊厳を取り戻す闘いが、今、始まります。ぜひ多くの方々と一緒に考えて、盛り上げていけたらと思っています」
2月14日、同性婚を求める同性カップル13組が、東京、大阪、札幌、名古屋の4地裁で国を相手取り、一斉に提訴する。
なんで裁判で同性婚制度の設立を求めず損害賠償なのか,というのはこれはこれで気になる方もいると思うのでいつか書きたいと思いますが,この記事の中では,今の法制度上はそういう請求をせざるを得ないから,とだけ把握しておいてください。
この記事のテーマは,「同性婚を認めないことは違憲か?」です。
そもそも性は「異同」でくくれるものなのか?
テーマを確認していきなりテーマから逸れる話題で恐縮なのですが,現代社会において,「性」というのはかなり多様化して(正確には,「多様なものだという理解が広まって」)います。LGBTへの配慮を求める動きも,その表れです。
このような流れの中で,とても個人的な考えですが,そもそも,「性」というのは同性か異性かのように明確に分離できるものではなく,もっとグラデーション的なものなのではないか,と考えるようになりました。もちろん,生物学的な性というのものは厳然と残り続けるのでしょうが,「男女平等」から始まった性に関する議論は,やがて「性は異同でくくれない」という方向に収斂されていくのではないかと予想します。
同性婚は,憲法上,むしろ禁止されているのでは?
話を戻しましょう。といってまた少しテーマとずれてしまうのですが,同性婚を認めないのは憲法違反であるという形で上記一斉提訴が行われることになったのですが,これに反対する見解として,「憲法違反ではない」というところから更に踏み込んで,「憲法は同性婚を禁じている=むしろ認めることが憲法違反だ」という主張もあるようです。
その主張の根拠は,婚姻制度について定めた日本国憲法24条が「婚姻は,両性の合意に基づいてのみ成立」としており異性婚を前提としているからというところにあるようですが,そうだとすると明らかに論理の飛躍があります。
確かに,日本国憲法24条は,異性婚を前提に,婚姻が両性の自由な意思によってのみ成立することを保障したものです。しかし,だからといって,同性婚を法律上認めることを禁じているとまで読み込むのは文言上,明らかに無理があります。認められないことと認めることを禁止していることは,全く違うことだという簡単な話です。
実際,憲法学の通説的見解も,同性婚を認めることが憲法に反するとは考えていません。むしろ,同性婚を認めないことについて違憲の疑いがあるとする見解が増えてきているようです。
同性婚が認められないのは違憲か?
ここでようやく本記事のテーマです。日本の法律上,同性婚は認められていません。これは違憲でしょうか?
違憲です。
もちろん私の個人的見解ですが,同性婚を認めない説得的理由は私には考え出せません。
これだけでは面白くないので,もう少し掘り下げていうと,私は,同性婚を認めないのは,憲法14条の平等原則に反して違憲だと考えます。だいたい,同性婚が違憲だとする見解は,憲法14条か13条に反すると考えているようですが,私は,13条違反とはいえないが14条違反であるという立場です。
憲法13条というのは,人権の四次元ポケットのような存在で,幸福追求権という形で「〜の自由」とか「〜の権利」を包括的に保障した条項なので,憲法に明確に記載されてない自由や権利を主張するときによく使われます。その意味で,13条というのは,超国家的な普遍的人権全てを保障するものであると理解していて,国家ごとに異なるようなものではないはずです。
私が,同性婚を定めないことが憲法13条違反といえないと考えるのは,上記のような考え方を前提に,そもそも婚姻制度というもの自体が人権として保障されるようなものではないという考えが根底にあるためです。もう少し砕いていうと,「婚姻」という概念のない国家というものも想像できる以上,「婚姻」は普遍的人権の問題ではなく,国家が作った後発的な制度だと考えているからです。
じゃあ,認めなくても違憲じゃないのかというと,違憲です(二度目)。
異性間に「婚姻」を認め,税制など様々な特典を設けておきながら,同性間に「婚姻」を認めないのは不平等です。もちろん,不平等であっても,そういう取り扱いに合理的な理由があれば,それは憲法14条に違反しません。しかし,他者との特別な社会的結合を,異性愛者には認めるが同性愛者には認めないということに合理的な理由って,あります?
私が考える限り,ありません。
同性愛者に異性愛者と同一の婚姻を認めることで発生するような弊害があるとは思えません。この点について,「子供作れなくて国家が廃れるじゃん」という意見も聞きますが,そもそも本当に人口が減るのかという論証はされていないし,仮に,もし万が一そうだとしても,それが人を不平等に扱う合理的理由にはなりません。私は,個人が国家のために存在するのではなく,国家が個人のために存在していると考えているからです。
他国は同性婚にどう向き合ったか
私自身は,「他はみんなこうしているから,うちもこうすべき」という論法は好きじゃないのですが,人権というのが,人類普遍の権利と定義される以上,人権問題に関する他国の様相は参考になります。
実は,他の国でも同性婚を認められないことが憲法違反だと争われたケースは多数あります。
まずオランダ。自由主義的なイメージのあるオランダですが,イメージ通り,世界に先駆けて2001年に同性婚が法律上の制度とされました。
次に2003年にはベルギーでも同性婚法が施行されました。
2005年にはスペインやカナダでも同性婚法が施行されています。
2006年には,100カ国以上がカナダのモントリオールに集まってLGBT等の人権確保を目的として議決されたモントリオール宣言で同性婚等の制度確立が求められています。
その後も,ノルウェー,スウェーデン,ポルトガルなどヨーロッパで同性婚法は広がりをみせています。
アメリカ合衆国でも各州で同性婚が合法化されていく中で,2015年には連邦最高裁判所が,全ての州において同性婚が認められるべきという判決を下しました。
他にも多くの国々で同性婚は法制度化されていっています。やはり同性愛者を異性愛者と不平等に取り扱う合理的理由が見つからないからこそではないでしょうか。
同性婚裁判の行方
日本の裁判所は,国会の裁量をかなり尊重しているようで,ある制度がないという立法不作為について違憲だと断じることには消極的ですが,同性婚については違憲だと判断する可能性は十分にあるのではないかと思います。
最高裁の判断まで2〜3年はかかりそうですが,最高裁の判断を待つまでもなく国会で法律改正できるのが民主主義の理想だと思います。
何れにしても,まずは各地方裁判所の判断に注目したいと思います。