悪質クレーム・カスタマーハラスメントへの企業対応

  • 2026/6/11

近年、顧客からの悪質なクレームやカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化しています。暴言や暴力、執拗な要求によって従業員が疲弊し、離職につながるケースも少なくありません。2026年10月にはカスハラ対策を企業に義務付ける改正労働施策総合推進法の施行が予定されており、すべての企業で対策が急務となっています。この記事では、カスタマーハラスメントの定義と正当なクレームとの違い、発生時の対応フロー、社内体制の整備方法、そして法的対応のポイントを解説します。

カスタマーハラスメントとは

カスタマーハラスメント(顧客からの悪質なクレームや迷惑行為)とは、顧客等から従業員に対する、著しい迷惑行為であり、就業環境を害するものをいいます。略称で「カスハラ」とも呼ばれます。

正当なクレームとカスハラの違い

すべてのクレームがカスハラに該当するわけではありません。正当なクレームは商品やサービスの改善につながる重要なフィードバックです。両者を区別する基準は以下のとおりです。

区分 正当なクレーム カスタマーハラスメント
要求内容 商品の交換・返金など合理的な範囲 土下座の要求、過度な金銭要求など不当な内容
態度・手段 冷静な指摘、改善の要望 暴言、暴力、脅迫、執拗な繰り返し
目的 問題の解決 従業員への攻撃、自己の優越感
時間・頻度 通常の範囲内 長時間の拘束、何度も繰り返す

カスハラの具体例

厚生労働省が公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、以下のような行為がカスハラに該当するとされています。

  • 暴言・侮辱: 「バカ」「無能」などの人格否定、大声での怒鳴り
  • 暴力・威嚇: 物を投げる、机を叩く、身体に触れる
  • 過大な要求: 「社長を出せ」「土下座しろ」「慰謝料を払え」
  • 執拗な繰り返し: 同じ苦情を何度も電話・来店して訴える
  • 長時間の拘束: 数時間にわたり従業員を離さない
  • SNSでの脅迫: 「ネットに晒す」「口コミで悪評を書く」と脅す
  • 従業員の個人情報の要求: 氏名・住所・連絡先を聞き出そうとする
  • セクシュアルハラスメント: 従業員に対するつきまとい・性的な言動

カスハラ発生時の対応フロー

カスハラが発生した際に、現場で適切に対応するための基本フローを整理します。

ステップ1:初期対応(現場担当者)

  • 相手の話を冷静に聞き、事実確認を行う
  • 正当な要求かカスハラかを判断する
  • 記録を取る: 日時・相手の言動・対応内容を記録(録音が可能であれば録音)
  • 一人で対応せず、複数人で対応する

ステップ2:エスカレーション(管理者・責任者)

以下の場合は、速やかに上長や責任者へ引き継ぎます。

  • 暴力・脅迫があった場合
  • 不当な金銭要求があった場合
  • 対応が30分を超えても解決しない場合
  • 従業員が精神的に追い詰められている場合

責任者は「これ以上のご要望にはお応えできません」と毅然とした態度で対応します。

ステップ3:法的対応(弁護士への相談)

以下のケースでは、弁護士への相談を検討しましょう。

  • 脅迫や業務妨害に該当する行為がある場合
  • 繰り返しの来店・電話で業務に支障が出ている場合
  • SNSでの名誉毀損・風評被害が発生している場合

弁護士から警告書を送付する、あるいは弁護士に窓口を一任することで、多くのケースで行為が収まります。

→ 紛争が法的手続に発展した場合の対応については『消費者紛争の解決方法|ADR・訴訟と弁護士の活用法』で詳しく解説しています。

カスハラ防止のための社内体制整備

2026年10月施行の改正労働施策総合推進法では、企業にカスハラ対策が義務付けられます。具体的に求められる措置を確認しましょう。

対応マニュアルの作成

カスハラ発生時に現場担当者が迷わず対応できるよう、対応マニュアルを作成します。マニュアルに盛り込むべき項目は以下のとおりです。

  • カスハラの定義と具体例
  • 正当なクレームとの判断基準
  • 初期対応の手順
  • エスカレーションの基準と連絡先
  • 記録の取り方(録音・メモのテンプレート)
  • 対応を打ち切る際の言い回し例

就業規則への明記

カスハラから従業員を保護する姿勢を就業規則に明記しましょう。具体的には以下のような規定が考えられます。

  • 会社がカスハラから従業員を保護する旨の方針
  • カスハラ発生時に従業員が対応を中断・退避できる旨
  • カスハラ対応を理由に従業員が不利益を受けない旨

→ 就業規則の整備については『就業規則の作成・見直し』もあわせてご覧ください。

相談窓口の設置

従業員がカスハラ被害を相談できる窓口を設置します。社内の人事部門だけでなく、外部の弁護士やカウンセラーへの相談ルートも確保しておくと安心です。

従業員研修の実施

カスハラの定義、対応手順、記録の取り方について定期的な研修を行います。ロールプレイング形式で実践的なトレーニングを行うことも効果的です。

→ 職場のハラスメント対応全般については『職場のハラスメント対応』もご参考ください。

このようなカスタマーハラスメントへの対応でお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

カスハラへの法的対応

悪質なカスハラに対しては、法的手段による解決が必要になることもあります。

警告書の送付

弁護士名義の警告書(内容証明郵便)を送付し、行為の中止を求めます。弁護士からの書面が届くだけで行為が収まるケースは多く、最も費用対効果の高い手段です。

仮処分の申立て

店舗への繰り返しの来訪や電話を止めたい場合、裁判所に仮処分(接近禁止や架電禁止の仮処分)を申し立てることができます。

損害賠償請求

カスハラにより業務に支障が出た場合や、従業員が精神的被害を受けた場合は、加害者に対して損害賠償請求を行うことも可能です。

刑事告訴

暴行・脅迫・威力業務妨害などの犯罪行為に該当する場合は、警察への被害届の提出や刑事告訴も検討します。

カスハラ対応を弁護士に依頼するメリット

カスハラ対応は、法律・労務・経営の複合的な問題です。弁護士に相談することで、以下のメリットがあります。

弁護士×社労士のワンストップ対応

弁護士法人エースはグループ内に社労士法人を有しており、カスハラ対応において弁護士による法的対応と社労士による就業規則の整備・従業員ケアを一体で進められます。「法的対応は弁護士、就業規則は社労士」とバラバラに依頼する手間がなく、一貫した対策が可能です。

窓口の一任による従業員保護

悪質なクレーマーへの対応を弁護士に一任することで、従業員を直接的な被害から守ります。弁護士が窓口となることで「これ以上は法的手続に移行する」という明確なメッセージを相手に伝えることができます。

迅速な対応

カスハラは初期対応のスピードが重要です。複数弁護士・パラリーガルによるチーム体制と、LINEでの相談対応により、トラブル発生時にすぐ相談できる体制が整っています。

まとめ

カスタマーハラスメントは、従業員の安全と企業の業務を脅かす深刻な問題です。2026年10月のカスハラ対策義務化に向けて、対応マニュアルの整備、就業規則への明記、相談窓口の設置、従業員研修の実施を進めましょう。悪質なケースでは弁護士による法的対応も有効な手段です。正当なクレームには誠実に対応しつつ、カスハラには毅然と対処する姿勢が、従業員と企業を守ります。

→ 消費者問題全般については『消費者問題への企業対応|経営者が知るべき法律と実務ガイド』をご覧ください。

弁護士法人エースでは、カスタマーハラスメント対応に関するご相談を初回無料でお受けしています。

  • 複数弁護士・パラリーガルによる迅速対応
  • LINE・電話・メールでいつでも相談可能
  • 経営者のパートナーとして伴走

お問い合わせ
電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

コラム一覧へ戻る

お忙しい経営者様へ

オンライン・電話での
“弁護士無料相談”も可能です
まずはお電話よりご相談ください