コンプライアンス違反の事例と対策|企業が知るべきリスクと予防策

  • 2026/6/11

2024年、コンプライアンス違反を原因とする企業倒産は過去最多の320件に達しました(東京商工リサーチ調べ)。前年の192件から1.6倍以上に急増しており、帝国データバンクの調査でも388件と過去最多を更新しています。

「大企業の話だろう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、中小企業こそ一度の違反が経営の存続に直結するリスクを抱えています。本記事では、コンプライアンス違反の分類と具体的な事例、企業が被る影響、予防策、そして万が一の違反発覚時の対応手順まで、中小企業の経営者が知っておくべきポイントを解説します。

コンプライアンス違反とは

コンプライアンス(法令遵守)違反とは、企業が守るべきルールに反する行為を指します。違反は大きく3つのレベルに分類されます。

分類 内容 具体例
法令違反 法律・条例・行政規則に違反する行為 残業代未払い、個人情報漏洩、脱税、下請法違反
社内規程違反 就業規則・社内規程に反する行為 経費の不正使用、情報管理規程への違反、無断の副業
社会規範違反 法令や規程には直接抵触しないが社会的に許容されない行為 ハラスメント、不適切なSNS投稿、取引先への優越的地位の濫用

企業が「法律さえ守っていれば問題ない」と考えていると、社内規程違反や社会規範違反への対応が遅れ、最終的に法的なトラブルに発展するケースが少なくありません。3つのレベルすべてに目を配ることが重要です。

コンプライアンス違反の主な事例

中小企業で特に注意すべき違反類型を、具体的な事例とともに整理します。

労務関連の違反

労務関連は、中小企業で最も発生しやすいコンプライアンス違反の一つです。

  • 残業代の未払い・長時間労働: 月80時間を超える時間外労働を常態的に行わせ、労働基準監督署から是正勧告を受けるケース。36協定の上限を超えた残業は刑事罰の対象にもなります
  • ハラスメント: 上司が部下を感情的に叱責し人格を否定するパワーハラスメントにより、従業員が適応障害を発症して休職。慰謝料の支払いを命じられた事例があります
  • 不当解雇: 正当な理由なく従業員を解雇し、労働審判で解雇無効と判断されるケース

→ 職場のハラスメント対応の詳細は『職場のハラスメント対応|パワハラ・セクハラ発生時の企業対応』をご覧ください。

情報管理の違反

個人情報や営業秘密の管理不備も重大なリスクです。

  • 個人情報の漏洩: 委託先のシステム設定不備により顧客データが流出。2022年の改正個人情報保護法により、漏洩時の個人情報保護委員会への報告と本人通知が義務化されており、違反企業には最大1億円の罰金が科される可能性があります
  • 退職者による情報持ち出し: 退職した従業員が顧客名簿や取引先情報を持ち出し、競合他社での営業活動に使用するケース。不動産会社の事例では、退職者が約2万5,000人分の登記簿データを持ち出してDM送付に利用していたことが判明しました

会計・税務の違反

2024年のコンプライアンス違反倒産のうち、税金関連は176件(東京商工リサーチ調べ)と最多を占めています。

  • 粉飾決算: 売上の水増しや架空取引の計上により、金融機関からの融資を受け続けるケース。コロナ禍のゼロゼロ融資の返済開始に伴い、金融機関の資産査定で粉飾が発覚する事例が急増しています
  • 助成金の不正受給: 休業していない従業員を休業扱いにして雇用調整助成金を不正に受給し、数千万円〜数億円の全額返還を命じられた事例が相次いでいます

取引関連の違反

取引先との関係における違反は、中小企業が加害者側になるケースもあります。

  • 下請法違反: 下請事業者に対して仕様書に根拠のない無償のやり直しを繰り返し要求したり、金型を長期にわたって無償で保管させたりするケース。公正取引委員会の勧告を受け、企業名が公表されます

→ 下請法の禁止行為と違反事例の詳細は『下請法の禁止行為と違反事例|買いたたき・減額・受領拒否を防ぐ方法』をご覧ください。

不正競争に関する違反

営業秘密の不正利用やブランドの模倣も、コンプライアンス違反の一つです。

  • 営業秘密の不正取得・利用: 転職元の仕入れ価格データを転職先企業で利用し、不正競争防止法違反で罰金3,000万円(刑事)を科された事例があります。営業秘密をめぐる民事訴訟では、約331億円の和解金が支払われた大型事案もあります

→ 不正競争防止法の全体像については『不正競争防止法とは?企業が知るべきリスクと実務対策ガイド』をご覧ください。

コンプライアンス違反が企業に与える影響

コンプライアンス違反は、以下のような深刻な影響を企業にもたらします。

法的制裁・損害賠償

法令違反が発覚すれば、行政処分(業務停止命令・課徴金)や刑事罰(罰金・懲役)の対象となります。損害賠償責任も発生し、その金額は違反の種類によって大きく異なります。

違反の種類 損害賠償・罰金の目安
個人情報漏洩 1人あたり数千円〜3万5,000円(大規模漏洩では総額が億単位に)
営業秘密の漏洩 数千万円〜数百億円規模の賠償リスク
不正競争防止法違反 法人に最大3億円の罰金(刑事)
個人情報保護法違反(措置命令違反) 法人に最大1億円の罰金

信用の失墜と経営危機

SNSの普及により、企業の不祥事は瞬時に拡散されます。取引先の離反、顧客の流出、採用への悪影響など、数字に表れない損失は計り知れません。

中小企業の場合、信用回復のための資金的・人的余力が限られているため、1件の重大な違反が倒産に直結するリスクがあります。2024年にコンプライアンス違反で倒産した企業のうち、業歴20年以上の企業が75%超を占めていた点は、「長年の実績があるから安心」とは言えないことを示しています。

コンプライアンス違反を防ぐための対策

違反を防ぐためには、場当たり的な対応ではなく、組織的な予防策を講じることが重要です。

コンプライアンス体制の構築

予防の基盤となるのは、コンプライアンス体制の整備です。中小企業では、専任部署の設置が難しくても、以下の要素を段階的に整備することで実効性のある体制を構築できます。

  • 責任者の任命: コンプライアンス担当者を明確にし、経営者への報告ラインを確保する
  • 社内規程の策定: 行動規範やコンプライアンスマニュアルで「やってはいけないこと」を明文化する
  • モニタリング: 定期的な内部監査やチェックリストによる自主点検を実施する

→ 体制構築の具体的なステップは『コンプライアンス体制の構築方法|中小企業が取り組むべき実務ステップ』をご覧ください。

コンプライアンス研修の実施

体制を整えても、従業員一人ひとりの意識が伴わなければ違反は防げません。定期的な研修で、以下のテーマを扱うことが効果的です。

  • ハラスメント防止(パワハラ・セクハラ)
  • 情報セキュリティと個人情報の取り扱い
  • 下請法や独占禁止法の基礎知識
  • 自社の行動規範・社内規程の理解

特に、実際の違反事例をケーススタディとして活用する研修は、従業員のリスク感度を高めるうえで非常に有効です。

内部通報制度の整備

コンプライアンス違反の多くは、内部通報によって早期に発覚しています。従業員が安心して通報できる窓口を設置し、通報者が不利益な取扱いを受けないよう制度を整備することが重要です。

2026年12月施行の改正公益通報者保護法では、通報後1年以内の不利益処分に推定規定が設けられ、企業への罰金も最大3,000万円に引き上げられます。内部通報制度の整備は、すべての企業にとって喫緊の課題です。

→ 内部通報制度の整備方法と改正法対応の詳細は『内部通報制度の整備と公益通報者保護法|2026年改正対応の実務ポイント』をご覧ください。

違反が発覚した場合の対応手順

万全の予防策を講じていても、違反が完全にゼロになるとは限りません。違反が発覚した場合は、迅速かつ適切な対応が被害の拡大を防ぎます。

フェーズ1:初動対応(発覚後24〜72時間)

初動の対応が、その後の被害規模を大きく左右します。

  1. 違反行為の即時停止と被害拡大の防止
  2. 証拠の保全(関係書類・電子データの保全、改ざん防止)
  3. 対応チームの組成と弁護士への速やかな相談
  4. 情報管理の徹底(関係者以外への情報漏洩を防止)

フェーズ2:事実調査

事案の重大性に応じて、調査体制を決定します。中小企業の場合、顧問弁護士を中心とした外部専門家を含む調査チームの編成が現実的です。第三者委員会(社外の専門家で構成される独立した調査機関)の設置は数百万円〜1,000万円超の費用がかかるため、事案の規模に応じて判断します。

フェーズ3:是正措置と情報開示

調査結果に基づき、必要な行政機関への報告、被害者への通知・賠償、関係者の処分を行います。個人情報漏洩の場合は、個人情報保護委員会への報告と本人通知が法律上の義務です。

フェーズ4:再発防止

原因分析に基づく制度改善、社内規程の見直し、全従業員への研修実施など、再発防止策を策定・実行します。「なぜ違反が起きたのか」「なぜ早期に発見できなかったのか」という視点で、体制の根本的な見直しを行うことが重要です。

このようなコンプライアンス対応でお悩みの場合は、弁護士法人エースにお気軽にご相談ください。経験豊富な弁護士が、経営者の視点に立って最適な対応策をご提案いたします。

まとめ

コンプライアンス違反は、法的制裁だけでなく信用の失墜や経営危機に直結する重大なリスクです。主なポイントを整理します。

  • コンプライアンス違反は法令違反・社内規程違反・社会規範違反の3つに分類される
  • 2024年のコンプライアンス違反倒産は過去最多。中小企業ほど1件の違反が経営を揺るがす
  • 違反類型は労務・情報管理・会計税務・取引・不正競争と多岐にわたる
  • 予防には体制構築・研修・内部通報制度の3本柱が不可欠
  • 違反発覚時は初動の24〜72時間が勝負。早期の弁護士関与が被害拡大を防ぐ

→ コンプライアンス全般については『コンプライアンスとは?中小企業が知るべき法令遵守の基本と体制構築ガイド』をご覧ください。

弁護士法人エースでは、コンプライアンスに関するご相談を初回無料でお受けしています。

  • 複数弁護士・パラリーガルによる迅速対応
  • LINE・電話・メールでいつでも相談可能
  • 経営者のパートナーとして伴走

お問い合わせ 電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

コラム一覧へ戻る

お忙しい経営者様へ

オンライン・電話での
“弁護士無料相談”も可能です
まずはお電話よりご相談ください