発信者情報開示請求の流れと費用|投稿者を特定する手続きを解説
ネット上の誹謗中傷に法的責任を追及するためには、まず匿名の投稿者を特定しなければなりません。そのための法的手続きが「発信者情報開示請求」です。
2022年の法改正により、従来は2段階の裁判手続きが必要だった投稿者の特定が、1回の手続きで完結できる「発信者情報開示命令」が導入されました。さらに2025年4月には情報流通プラットフォーム対処法が全面施行され、企業にとって投稿者特定の環境が改善されつつあります。
この記事では、発信者情報開示請求の仕組みと手続きの流れ、費用の目安、注意すべきタイムリミットまで詳しく解説します。「匿名の投稿者を特定できるのか?」とお悩みの経営者の方はぜひお読みください。
INDEX
発信者情報開示請求とは
発信者情報開示請求とは、インターネット上で権利を侵害された被害者が、プロバイダ(サイト運営者やISP)に対して、投稿者の氏名・住所等の情報開示を求める法的手続きです。
この手続きの根拠となるのは、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)です。同法は、権利侵害が明白であり、損害賠償請求等の正当な理由がある場合に、プロバイダに対して発信者情報の開示を義務づけています。
開示される情報
発信者情報開示請求によって取得できる主な情報は以下のとおりです。
- 氏名(契約者名)
- 住所(契約者住所)
- メールアドレス
- IPアドレス・ポート番号
- タイムスタンプ(投稿日時の記録)
- 電話番号(2022年改正で追加)
これらの情報を取得することで、匿名の投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴といった法的措置に進むことが可能になります。
従来の手続き(2段階の開示請求)
2022年の法改正前から存在する従来型の手続きは、2段階のステップを踏む必要があります。現在もこの方法は利用可能です。
第1段階:コンテンツプロバイダへの開示請求
まず、誹謗中傷が掲載されているサイトの運営者(コンテンツプロバイダ)に対して、投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。
任意の開示請求に応じない場合は、裁判所に仮処分を申し立てます。サイト運営者が海外法人(Google、X等)の場合も、東京地方裁判所に申し立てることができます。
第2段階:アクセスプロバイダへの開示請求
第1段階で取得したIPアドレスをもとに、投稿者が利用しているアクセスプロバイダ(NTT、KDDI、ソフトバンク等のISP)を特定します。次に、そのアクセスプロバイダに対して、契約者の氏名・住所等の開示を求める訴訟を提起します。
この段階では仮処分ではなく、本訴(通常訴訟)で行うのが一般的です。
従来手続きの課題
従来の2段階手続きには、以下の課題がありました。
- 手続きに時間がかかる:2つの裁判手続きを経るため、全体で8〜10か月程度を要する
- ISPのログ消去リスク:第1段階の手続き中にISPのアクセスログが消去される可能性がある
- 費用負担が大きい:2つの手続きそれぞれに弁護士費用がかかる
改正法の新手続き(発信者情報開示命令)
2022年10月に施行された改正法では、従来の課題を解消するため「発信者情報開示命令」という新しい手続きが導入されました。
新制度の仕組み
発信者情報開示命令は、1回の非訟手続き(裁判所への申立て)で、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダの両方に対して情報開示を命じることができる制度です。
手続きの流れ:
1. 裁判所に開示命令の申立てを行う
2. 裁判所がコンテンツプロバイダに「提供命令」を発令(IPアドレスの提供)
3. 裁判所がアクセスプロバイダに「消去禁止命令」を発令(ログの保全)
4. 裁判所が開示命令を発令(契約者情報の開示)
新制度のメリット
- 手続きが1回で完結:2段階の手続きが不要になり、手続き全体がシンプルに
- ログ消去リスクの軽減:「消去禁止命令」により、手続き中のログ消去を防止できる
- 所要期間の短縮:従来の8〜10か月から、6か月前後に短縮されるケースも
- 費用の抑制:手続きが1回になることで、弁護士費用の総額も軽減される傾向
従来手続きと新制度の使い分け
新制度の導入後も、従来の手続きは引き続き利用可能です。案件の内容や相手方の状況によって、どちらの手続きが適しているかは異なります。弁護士と相談のうえ、最適な手続きを選択することが重要です。
発信者情報開示請求の費用相場
投稿者の特定にかかる費用は、手続きの方法や案件の複雑さによって異なります。
| 手続き | 弁護士費用の目安 | 裁判費用 |
|---|---|---|
| 従来手続き(第1段階:仮処分) | 着手金20万円〜30万円 + 報酬金15万円〜20万円 | 印紙代・予納金等 |
| 従来手続き(第2段階:本訴) | 着手金20万円〜30万円 + 報酬金15万円〜20万円 | 印紙代等 |
| 発信者情報開示命令(新制度) | 着手金30万円〜40万円 + 報酬金20万円〜30万円 | 印紙代1,000円 |
トータルの費用目安:
– 従来手続き:合計70万円〜100万円程度
– 新制度(開示命令):合計50万円〜70万円程度
なお、投稿者の特定に成功した後、損害賠償請求を行う際に、発信者特定にかかった弁護士費用の一部を損害として請求できるケースもあります。
手続きの期間とタイムリミット
手続きにかかる期間
| 手続き | 期間目安 |
|---|---|
| 従来手続き(第1段階+第2段階) | 8〜10か月 |
| 発信者情報開示命令(新制度) | 3~5か月 |
ISPのログ保存期間に注意
発信者情報開示請求における最大のリスクは、ISP(インターネットサービスプロバイダ)のアクセスログが消去されることです。
ISPのアクセスログの保存期間は一般的に3〜6か月とされています。この期間を過ぎると、たとえ裁判所の命令があっても、投稿者を特定するためのログが存在しないため、特定が不可能になります。
そのため、誹謗中傷の投稿を発見したら、できるだけ早く弁護士に相談することが極めて重要です。証拠保全と並行して、速やかに法的手続きの準備を進める必要があります。
このような投稿者の特定でお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
開示請求が認められる要件
発信者情報開示請求が認められるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
要件1:権利侵害の明白性
投稿によって被害者の権利(名誉権、プライバシー権、信用等)が侵害されたことが明白であることが求められます。
「明白性」とは、権利侵害がされたことが明らかであり、かつ、違法性を阻却する事由(公益性・公共性・真実性)がないことを指します。
要件2:正当な理由
開示された情報を、損害賠償請求や刑事告訴といった正当な目的で使用する必要があります。単に投稿者を特定して嫌がらせをするような目的では、開示は認められません。
開示が認められにくいケース
- 投稿が意見・論評にとどまり、事実の摘示がない場合
- 投稿の内容に公益性・公共性が認められる場合
- 投稿内容が真実である場合
→ 削除請求との使い分けについては「ネット誹謗中傷の削除請求」で解説しています。
弁護士に依頼するメリット
手続きの専門性
発信者情報開示請求は、裁判所への申立てや法的書面の作成が必要な専門的な手続きです。権利侵害の明白性を主張・立証するためには、法的知識と実務経験が不可欠です。
迅速な対応でログ消去を防ぐ
ISPのログ保存期間は3〜6か月と短いため、スピーディーな対応が成否を左右します。弁護士法人エースでは、複数の弁護士とパラリーガルが「複数担当制」で対応し、担当者不在でも迅速なレスポンスを維持しています。
投稿者特定後の法的措置もワンストップ
投稿者を特定した後は、損害賠償請求や刑事告訴といった法的措置に進むことになります。弁護士に最初から依頼していれば、特定から法的措置まで一貫した戦略で対応できます。
→ 損害賠償請求の詳細は「誹謗中傷の損害賠償請求」で解説しています。
LINEで気軽に相談
弁護士法人エースでは、LINEで担当弁護士に直接相談できます。「この投稿で開示請求は通るか?」「ログが消える前に手続きできるか?」といった緊急性の高い相談にも、スピーディーに対応いたします。
まとめ
発信者情報開示請求は、匿名の誹謗中傷投稿者を特定するための法的手続きです。ポイントは以下の3点です。
- 新制度(発信者情報開示命令)の活用:1回の手続きで完結し、費用・期間ともに軽減
- ISPのログ保存期間(3〜6か月)が最大のタイムリミット:発見後すぐに弁護士へ相談
- 投稿者特定後の法的措置まで見据えた戦略:損害賠償・刑事告訴への一貫した対応
→ 誹謗中傷対策の全体像については「企業の誹謗中傷対策」をご覧ください。
弁護士法人エースでは、発信者情報開示請求に関するご相談を初回無料でお受けしています。
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電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
竹内 省吾
- 経歴
-
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
成田 翼
- 経歴
-
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員