企業の環境コンプライアンス|環境法規制の基礎知識と対応方法

  • 2026/6/11

企業活動は、製造工程での排出物、廃棄物の処理、エネルギーの消費など、さまざまな形で環境に影響を与えます。こうした環境への影響を規制するために、日本では環境基本法を中心に多数の環境法規制が整備されており、中小企業もその適用対象です。

近年はカーボンニュートラルの実現に向けたGX推進法の施行や、取引先からの環境対応の要請など、中小企業を取り巻く環境規制は一層強まっています。「自社にどの法律が関係するのか」「違反した場合のリスクは何か」を正しく把握し、適切に対応することが、企業の持続的な成長に不可欠です。

本記事では、企業が知っておくべき主な環境法規制の内容から、違反時のリスクと罰則、中小企業が取り組むべき環境対応のステップまで、企業法務の観点から解説します。

企業に関わる主な環境法規制

日本の環境法体系は、環境基本法を頂点として、個別の規制法が目的ごとに制定されています。中小企業の経営者が特に押さえておくべき法律を解説します。

環境基本法

環境基本法は、日本の環境政策の基本理念を定めた法律です。環境の保全に関する基本的な方向性を示しており、個別の環境法規制はこの法律の理念に基づいて制定されています。直接的な罰則規定はありませんが、すべての環境法の「根幹」として位置づけられます。

廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)

企業活動で最も身近な環境法規制が廃棄物処理法です。事業活動で生じる廃棄物(産業廃棄物)の排出、運搬、処分について詳細なルールを定めています。

義務 内容
排出事業者責任 産業廃棄物の処理は排出事業者が最終処分まで責任を負う
マニフェスト制度 産業廃棄物の流れを管理するための管理票(マニフェスト)の交付・管理
委託基準の遵守 許可を持つ処理業者への委託、書面による委託契約の締結
保管基準の遵守 廃棄物の飛散・流出・悪臭の防止措置

業種を問わず産業廃棄物を排出するすべての企業が対象であり、中小企業にとって最も注意が必要な法律の一つです。

大気汚染防止法

工場や事業場からのばい煙、揮発性有機化合物(VOC)、粉じんなどの排出を規制する法律です。特定の施設を設置している事業者は、排出基準の遵守と届出が義務づけられています。2022年の改正により、建築物の解体・改修時のアスベスト(石綿)飛散防止対策も大幅に強化されました。建設業やビル管理に関わる中小企業は特に注意が必要です。

水質汚濁防止法

工場・事業場からの排水を規制する法律です。特定施設から公共用水域に排水を行う事業者は、排水基準の遵守が義務づけられています。有害物質の地下浸透も禁止されており、違反した場合は直罰制(行政指導を経ずに直接刑罰が科される仕組み)の対象となります。

土壌汚染対策法

土壌の汚染状況の調査と、汚染が判明した場合の対策を定めた法律です。一定規模以上の土地の形質変更や、有害物質使用特定施設の廃止時に、土壌汚染状況の調査が義務づけられます。不動産の売買・開発を行う企業は特に注意が必要です。

化学物質管理に関する法律

化学物質を使用する企業は、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)に基づく排出量・移動量の届出や、化管法に基づくSDS(安全データシート)の提供など、複数の法律への対応が必要です。

カーボンニュートラルと企業の対応

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業を取り巻く環境規制は大きく変化しています。

GX推進法

2023年に成立したGX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)は、カーボンニュートラルの実現と産業競争力の強化を両立させるための法律です。GX経済移行債の発行による支援措置や、2026年度から本格導入が予定されているカーボンプライシング(排出量取引制度・炭素賦課金)は、中小企業の事業コストにも影響を及ぼす可能性があります。

特に、排出量取引制度の対象となる大企業のサプライチェーンに属する中小企業は、CO2排出量の削減や報告を求められるケースが今後増えていくと考えられます。

温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)

一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者(特定排出者)は、排出量の算定・報告・公表が義務づけられています。現時点では大規模事業者が主な対象ですが、サプライチェーン全体での排出量管理(Scope3)の動きが広がるなか、取引先である中小企業にも排出量データの提出を求められるケースが増えています。

省エネ法

省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、一定規模以上のエネルギーを使用する事業者に対し、エネルギー使用量の定期報告や中長期計画の策定を義務づけています。2023年の改正で「非化石エネルギーへの転換」が追加され、再生可能エネルギーの活用も求められるようになりました。

環境コンプライアンス違反のリスクと罰則

環境法規制に違反した場合、企業は深刻なリスクにさらされます。

刑事罰

主な環境法違反に対する罰則は以下のとおりです。

法律 違反行為 罰則(個人) 罰則(法人)
廃棄物処理法 不法投棄・無許可営業 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 3億円以下の罰金
大気汚染防止法 排出基準違反 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 同左
水質汚濁防止法 有害物質の排出 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 同左
土壌汚染対策法 調査義務違反 3月以下の懲役または30万円以下の罰金 同左

特に廃棄物処理法違反は罰則が重く、法人に対しては最大3億円の罰金が科される可能性があります。

行政処分

改善命令、操業停止命令、許可の取消しなどの行政処分を受ける場合があります。行政処分は事業活動に直接的な影響を与え、取引先との関係にも波及します。

レピュテーションリスク

環境法違反が報道されることで、企業の社会的信用が大きく損なわれます。取引先の離反、採用活動への悪影響など、罰金額を超える損害が生じるケースも少なくありません。CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の観点からも、環境法違反は企業の信頼性を根本から揺るがす問題です。

原状回復費用

土壌汚染や廃棄物の不法投棄が判明した場合、原状回復に要する費用は数千万円から数億円に及ぶことがあります。排出事業者責任の原則により、処理業者に委託していた場合でも、排出事業者が費用負担を求められるケースがある点に注意が必要です。

中小企業の環境対応の進め方

中小企業が環境コンプライアンス(法令遵守)に取り組む際は、以下のステップで段階的に進めることをお勧めします。

ステップ1:自社に適用される法律の洗い出し

まず、自社の事業内容と設備を整理し、どの環境法規制が適用されるかを確認します。業種によって適用される法律が異なるため、網羅的なチェックが重要です。

  • 産業廃棄物を排出しているか(廃棄物処理法)
  • 特定施設を設置しているか(大気汚染防止法・水質汚濁防止法)
  • 化学物質を取り扱っているか(PRTR法・化管法)
  • 一定規模以上のエネルギーを使用しているか(省エネ法・温対法)
  • 土地の形質変更や不動産取引を予定しているか(土壌汚染対策法)

ステップ2:現状の対応状況の点検

適用される法律が特定できたら、各法律の要求事項に対する自社の対応状況を点検します。届出の有無、報告期限の管理、マニフェストの運用状況、委託契約の内容など、実務面での確認が必要です。

ステップ3:社内体制の整備

環境コンプライアンスを継続的に維持するために、社内の管理体制を整備します。

  • 担当者の選任:環境管理の責任者を明確にする
  • マニュアル・手順書の整備:廃棄物処理、化学物質管理などの手順を文書化する
  • 従業員教育:環境法規制の基本と自社の対応ルールを周知する
  • 定期的な監査:法令遵守の状況を定期的にチェックする仕組みを設ける

ステップ4:取引先からの要請への対応

大企業がサプライチェーン全体で環境管理を強化する流れのなかで、取引先から環境に関するアンケートやCO2排出量データの提出を求められるケースが増えています。日頃からデータを整理し、要請に迅速に対応できる体制を整えておくことが、取引関係の維持・強化につながります。

弁護士に依頼するメリット

環境コンプライアンスは、複数の法律が複雑に絡み合い、自社だけで対応するのは容易ではありません。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 適用法令の正確な把握:自社の事業に適用される環境法規制を漏れなく特定し、対応すべき事項を整理できる
  • 違反リスクの事前評価:現状の運用が法令に適合しているかを専門的に評価し、リスクを未然に防止できる
  • 行政対応の支援:行政の立入検査や改善指導への対応、許認可の申請手続きなどを弁護士がサポートする
  • 契約書の整備:廃棄物処理委託契約やサプライチェーンの環境条項など、環境に関連する契約書のリーガルチェックが可能

弁護士法人エースでは、以下の強みを活かした環境コンプライアンス支援を行っています。

  • 経営者視点のアドバイス:代表弁護士自身が複数法人を運営する経営者であり、事業活動に即した実践的な助言が可能
  • ワンストップ対応:グループ内に社労士法人を保有し、環境面だけでなく労務面も含めたCSR全般をまとめて対応
  • 複数担当制:複数の弁護士・パラリーガルがチームで対応し、迅速なレスポンスを実現
  • LINEでの気軽な相談:「この廃棄物の処理方法は適法か?」といった日常的な疑問にもすぐに対応

まとめ

環境コンプライアンスは、企業がCSR(企業の社会的責任)を果たすうえでの重要な柱の一つです。コンプライアンス(法令遵守)はCSRの「土台」であり、環境法規制の遵守はその中核をなすテーマです。

主なポイントを整理します。

  • 廃棄物処理法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法など、業種を問わず適用される環境法規制を正しく把握することが出発点
  • GX推進法によるカーボンプライシングの導入や省エネ法の改正など、新たな規制への対応も必要
  • 環境法違反は、刑事罰(法人で最大3億円の罰金)だけでなく、行政処分やレピュテーションリスクにもつながる
  • 自社に適用される法律の洗い出しから始め、段階的に社内体制を整備することが重要
  • 弁護士のサポートを受けることで、法令の正確な把握から社内体制の構築まで効率的に進められる

→ CSR全般については『CSR(企業の社会的責任)とは?中小企業が知るべきESG・SDGsの基本と法務対応』をご覧ください。

弁護士法人エースでは、環境コンプライアンスを含むCSR・ESGに関する法務相談を初回無料でお受けしています。

  • 複数弁護士・パラリーガルによる迅速対応
  • LINE・電話・メールでいつでも相談可能
  • 経営者のパートナーとして伴走

お問い合わせ 電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

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