不正競争行為の種類と具体例|企業が注意すべき10の類型
不正競争防止法は、企業間の公正な競争を阻害する「不正競争行為」を規制しています。しかし、具体的にどのような行為が不正競争に該当するのか、その全体像を把握している経営者の方は意外と少ないのではないでしょうか。不正競争行為は10を超える類型に分かれており、ブランドの模倣から営業秘密の侵害、虚偽表示まで多岐にわたります。この記事では、不正競争防止法が規制する不正競争行為の類型を一覧で紹介し、中小企業が特に注意すべきポイントを具体例とともに解説します。
INDEX
不正競争防止法が規制する「不正競争」とは
不正競争防止法における「不正競争」とは、同法第2条第1項に列挙された行為を指します。法律で定められた行為類型に該当しなければ、不正競争防止法による規制の対象にはなりません。この点が、一般的な「ずるいこと」「フェアではないこと」という日常的な意味合いとは異なるポイントです。
不正競争行為は、大きく以下の4つのカテゴリに分類できます。
| カテゴリ | 主な類型 | 保護する利益 |
|---|---|---|
| ブランド・表示の保護 | 周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為 | 商品・営業の識別力 |
| 商品形態の保護 | 商品形態模倣行為 | 商品開発への投資 |
| 情報の保護 | 営業秘密侵害、限定提供データ不正取得 | 企業の情報資産 |
| 取引秩序の維持 | 誤認惹起、信用毀損、技術的制限手段、ドメイン名不正取得 | 公正な取引環境 |
以下、各類型の要件と具体例を見ていきましょう。
周知表示混同惹起行為・著名表示冒用行為
ブランドや商品名など、企業を識別する「表示」に関する不正競争行為です。いずれも他社の表示を不正に利用するものですが、保護される表示の知名度によって要件が異なります。
周知表示混同惹起行為(2条1項1号)
他人の商品・営業の表示として需要者の間に「広く認識されている」(周知な)表示と同一または類似の表示を使用し、混同を生じさせる行為です。
要件: – 他人の表示が周知であること(一定の地域で広く知られていれば足りる) – 同一または類似の表示を使用していること – 他人の商品・営業と混同を生じさせるおそれがあること
具体例: – 地域で有名な老舗和菓子店と酷似した店名・包装デザインで近隣に出店し、消費者が同じ店や関連店だと誤認するケース – 地元で知名度のある建設会社と同一の商号を使用し、取引先に同社の関連会社と誤認させるケース
著名表示冒用行為(2条1項2号)
著名な(全国的に広く知られている)他人の商品・営業の表示を無断で使用する行為です。周知表示混同惹起行為との大きな違いは、混同のおそれが不要という点です。著名な表示には独自の顧客吸引力やブランド価値があるため、混同が生じなくても保護されます。
具体例: – 全国的に有名なファッションブランドの名称を、まったく別業種の飲食店の店名に使用するケース – 有名IT企業のロゴマークを模倣して自社の広告に使用するケース
→ ブランドや商品の模倣被害を受けた場合の具体的な対処法は『ブランド・商品の模倣被害への対応』で詳しく解説しています。
商品形態模倣行為(デッドコピー規制)
他人の商品の形態(デザイン・形状)を模倣した商品を販売等する行為です(2条1項3号)。いわゆる「デッドコピー」を規制するものです。
要件: – 他人の商品の形態を模倣していること(実質的に同一の形態) – 模倣された商品が日本国内で最初に販売された日から3年以内であること – 模倣した商品を譲渡・貸し渡し等する行為であること
具体例: – 競合他社が開発した独自デザインの家具を、形状・色合いまでほぼ同一にコピーして安価に販売するケース – 人気のある文具メーカーの商品形状をそのまま模倣し、パッケージだけ変えて販売するケース
ポイント: この規制は「3年」の期間限定である点に注意が必要です。発売から3年を超えた商品の形態は、この条文では保護されません。長期的な保護を求める場合は、意匠権(デザインの登録制度)の活用を検討する必要があります。また、商品の機能を確保するために不可欠な形態(例:ネジの溝の形状など)は保護の対象外です。
営業秘密の侵害
企業が保有する営業秘密を不正に取得・使用・開示する行為です(2条1項4号〜10号)。不正競争防止法の類型のなかでも、中小企業にとって最も身近で深刻な問題の一つです。
営業秘密侵害の行為類型
営業秘密の侵害は、取得の態様や行為者の立場によって複数の類型に分かれています。
| 号数 | 行為の内容 | 典型例 |
|---|---|---|
| 4号 | 不正な手段(窃取・詐欺・強迫等)による営業秘密の取得、およびその使用・開示 | 競合他社のサーバーに不正アクセスして技術情報を盗む |
| 5号 | 不正取得された営業秘密を、事情を知って(悪意で)取得・使用・開示 | 不正に入手されたと知りながら、顧客リストを競合他社から受け取る |
| 6号 | 取得後に不正取得であることを知った場合の使用・開示 | 正当に入手したと思っていたデータが、実は不正取得されたものだと後から判明したにもかかわらず使用を継続する |
| 7号 | 正当に取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的等で使用・開示(図利加害目的) | 退職時に持ち出した顧客情報を転職先で利用する |
| 8号 | 7号の行為から派生して、事情を知って取得・使用・開示 | 退職者が不正に持ち出した情報だと知りながら、転職先の企業がその情報を営業活動に利用する |
| 9号・10号 | 8号と同様だが、取得後に事情を知った場合 | 後から不正な経緯を知ったにもかかわらず利用を続ける |
「営業秘密」として保護されるための3要件
重要なのは、企業が「大切な情報」と考えていても、法律上の要件を満たさなければ「営業秘密」として保護されないという点です。
- 秘密管理性: 秘密として管理されていること(アクセス制限、マル秘表示など)
- 有用性: 事業活動に有用な技術上・営業上の情報であること
- 非公知性: 公然と知られていないこと
→ 営業秘密の3要件と具体的な管理方法は『営業秘密の3要件と管理方法』で詳しく解説しています。
その他の不正競争行為
上記以外にも、不正競争防止法は以下の行為類型を規制しています。
限定提供データの不正取得等(2条1項11号〜16号)
限定提供データとは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により管理されているデータです。2024年4月施行の改正不正競争防止法では、この限定提供データの保護がさらに強化されました。
具体例: 製造業者がサプライチェーンの取引先に限定して提供していた品質管理データを、受領した企業が無断で第三者に提供するケース
技術的制限手段の無効化装置等の提供(2条1項17号・18号)
コンテンツの視聴制限やコピーガードなど、技術的制限手段を無効にする装置やプログラムを提供する行為です。
具体例: 有料動画配信サービスのアクセス制限を解除するツールを販売・配布するケース
ドメイン名の不正取得等(2条1項19号)
不正の利益を得る目的や、他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一・類似のドメイン名を取得・保有・使用する行為です。
具体例: 有名企業の社名と同一のドメイン名を先に取得し、高額で買い取らせようとするケース(いわゆるサイバースクワッティング)
誤認惹起行為(2条1項20号)
商品・サービスの広告や表示において、品質・内容・産地等について誤認させるような表示を行う行為です。
具体例: – 外国産の食材を国内産と偽って表示するケース – 実際には取得していない資格や認証マークを表示するケース – 製品の性能試験の結果を偽って広告に掲載するケース
信用毀損行為(2条1項21号)
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為です。
具体例: – 競合他社について「あの会社の製品は欠陥品だ」と虚偽の情報を取引先に伝えるケース – SNSやネット掲示板で競合他社の製品について虚偽の悪評を書き込むケース
代理人等の商標冒用行為(2条1項22号)
パリ条約の同盟国等における商標の権利者の代理人等が、正当な理由なく無断でその商標を使用する行為です。国際的な商標保護に関する規定であり、海外取引を行う企業に関わりがあります。
このような不正競争防止法の問題でお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
企業が自社の行為を点検する際のポイント
不正競争防止法は「被害者として他社の行為を追及する」だけでなく、「自社が知らないうちに加害者になっていないか」という視点も重要です。以下のチェックポイントで自社の行為を点検してみましょう。
商品・サービスの表示に関するチェック
- 自社の商品名・サービス名・ロゴが、他社の周知・著名な表示と類似していないか
- 新商品の名称やデザインを決める際に、既存の他社商品との類似性を確認しているか
- 広告表示に誇大・虚偽な内容が含まれていないか(品質・性能・産地等)
営業秘密に関するチェック
- 中途採用者が前職から持ち込んだ情報を利用していないか
- 取引先から受領した情報を契約範囲を超えて利用していないか
- 競合他社の非公開情報を不正な手段で入手していないか
競争行為に関するチェック
- 競合他社について、根拠のない否定的情報を取引先や顧客に伝えていないか
- 他社の商品デザインをそのまま模倣した商品を販売していないか
- 他社の技術的保護手段を回避するツールを使用・提供していないか
これらの点検を定期的に行い、疑わしい点があれば早めに弁護士に確認することが、不正競争リスクを最小限に抑えるポイントです。
まとめ
不正競争防止法が規制する不正競争行為は、大きく以下の類型に分かれています。
- ブランド・表示の保護: 周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為
- 商品形態の保護: 商品形態模倣行為(デッドコピー規制、発売から3年以内)
- 情報の保護: 営業秘密の侵害(4号〜10号)、限定提供データの不正取得等
- 取引秩序の維持: 誤認惹起行為、信用毀損行為、技術的制限手段の無効化、ドメイン名の不正取得、代理人等の商標冒用
企業は「被害者にならないための防御」と「加害者にならないためのコンプライアンス」の両面から、不正競争防止法を理解しておくことが重要です。自社の商品名やデザインの採用時、中途採用者の受入時、広告表示の作成時など、日常の事業活動のなかで不正競争リスクを意識する習慣をつけましょう。
→ 不正競争防止法の全体像については『不正競争防止法とは?企業が知るべきリスクと実務対策ガイド』をご覧ください。
弁護士法人エースでは、不正競争防止法に関するご相談を初回無料でお受けしています。
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監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
竹内 省吾
- 経歴
-
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
成田 翼
- 経歴
-
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員