特定商取引法とは?企業が守るべきルールとクーリングオフ対応

  • 2026/6/11

訪問販売や通信販売などを行う企業にとって、特定商取引法(特商法)の遵守は不可欠です。この法律に違反すると、業務停止命令や罰則の対象になるだけでなく、クーリングオフによる売上の返金リスクも発生します。近年はEC事業の拡大に伴い、通信販売に関する規制への対応も重要性を増しています。この記事では、特定商取引法の対象となる7つの取引類型、企業に課される義務、クーリングオフへの対応方法、そして違反を防ぐための実務ポイントを解説します。

特定商取引法とは

特定商取引法(訪問販売や通信販売など特定の取引を規制する法律)は、消費者トラブルが生じやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールと消費者を保護するルールを定めた法律です。略称で「特商法」とも呼ばれます。

この法律の目的は、事業者による違法・悪質な勧誘行為を防止し、消費者の利益を守ることにあります。対象となるのは以下の7つの取引類型です。

取引類型 概要 具体例
訪問販売 消費者の自宅等を訪問して行う販売 飛び込み営業、キャッチセールス
通信販売 広告を見た消費者から通信手段で申込みを受ける取引 ネットショップ、カタログ通販
電話勧誘販売 電話で勧誘し申込みを受ける取引 テレマーケティング
連鎖販売取引 個人を販売員として勧誘し、さらに別の販売員を勧誘させる取引 マルチ商法、ネットワークビジネス
特定継続的役務提供 長期・継続的にサービスを提供する取引 エステ、語学教室、学習塾、美容医療
業務提供誘引販売取引 仕事を紹介する条件で商品等を購入させる取引 内職商法、モニター商法
訪問購入 消費者の自宅等を訪問して物品を購入する取引 貴金属の出張買取

自社のビジネスがこれらの取引類型に該当するかどうかを確認することが、コンプライアンスの第一歩です。

企業に課される主な義務

特定商取引法は、取引類型ごとに事業者が守るべきルールを定めています。主な義務は以下のとおりです。

書面交付義務

訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引等では、契約の申込みや締結の際に、法律で定められた内容を記載した書面(法定書面)を消費者に交付する義務があります。記載が必要な事項には、商品の種類・数量・価格、クーリングオフに関する事項、事業者の名称・住所などが含まれます。

2023年6月より、消費者の承諾を得た場合は電子交付(メールやWebでの交付)も認められるようになりました。ただし、承諾の取得方法には厳格な要件があります。

表示義務(通信販売)

通信販売では、広告に以下の事項を表示する義務があります。

  • 事業者の名称・住所・電話番号
  • 商品の価格(税込)・送料
  • 支払方法・支払時期
  • 商品の引渡時期
  • 返品に関する特約(返品特約がない場合は8日間の返品が可能)

EC事業者にとって特に重要なのが返品特約の表示です。返品に関する条件を広告に明記していない場合、消費者は商品受領後8日間は送料自己負担で返品できます。

→ 広告規制の詳細については『景品表示法とは?広告・表示規制と企業の対応ポイント』をご覧ください。

禁止行為

すべての取引類型に共通して、以下の行為が禁止されています。

  • 不実告知: 事実と異なる説明
  • 故意の事実不告知: 重要な事実を意図的に伝えない
  • 威迫・困惑: 消費者を脅したり困惑させたりする行為
  • 再勧誘の禁止: 断られた後に再度勧誘すること(訪問販売・電話勧誘販売)

クーリングオフ制度と企業側の対応

クーリングオフとは、消費者が一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。企業側はこの制度を正しく理解し、適切に対応する必要があります。

クーリングオフの対象と期間

取引類型 クーリングオフ期間
訪問販売 8日間
電話勧誘販売 8日間
特定継続的役務提供 8日間
訪問購入 8日間
連鎖販売取引 20日間
業務提供誘引販売取引 20日間
通信販売 クーリングオフの適用なし(返品特約に従う)

重要: 通信販売にはクーリングオフ制度は適用されません。ただし、返品特約を表示していない場合は8日間の法定返品が認められます。

クーリングオフ期間の起算点

クーリングオフ期間は、法定書面を消費者に交付した日から起算します。書面に不備がある場合は期間が進行しないため、法定書面の記載内容に漏れがないよう細心の注意が必要です。

企業がクーリングオフに対応する際のポイント

  • 返金義務: クーリングオフが成立した場合、受領済みの代金は全額返金する義務があります
  • 原状回復費用の負担: 商品の引取りに要する費用は事業者が負担します
  • 損害賠償・違約金の請求不可: クーリングオフによる解約に対して、損害賠償や違約金を請求することはできません
  • 妨害行為の禁止: クーリングオフを妨げる行為(「クーリングオフはできない」と虚偽の説明をする等)は禁止されています

→ 消費者との契約全般については『消費者契約法とは?企業が知るべきルールと違反リスク』もあわせてご覧ください。

違反した場合のペナルティ

特定商取引法に違反した場合、企業は以下のペナルティを受ける可能性があります。

行政処分

  • 指示処分: 違反行為の是正を指示される
  • 業務停止命令: 最長2年間、業務の全部または一部の停止を命じられる
  • 業務禁止命令: 法人の役員等に対し、停止期間中の業務を禁止される

刑事罰

  • 業務停止命令違反: 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)
  • 不実告知・威迫等の禁止行為違反: 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 書面交付義務違反・誇大広告や虚偽広告: 100万円以下の罰金

行政処分を受けると企業名が公表されるため、レピュテーションへの影響も大きくなります。

このような特定商取引法に関するトラブルでお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

企業が行うべき対策

特定商取引法違反を防ぐために、企業が取り組むべき対策を整理します。

法定書面・広告表示の整備

法定書面の記載事項に漏れがないか、定期的にチェックしましょう。特に以下の点は見落としやすいポイントです。

  • クーリングオフに関する記載(赤枠・赤字・8ポイント以上の文字サイズ)
  • 契約の解除に関する事項
  • EC事業の場合、最終確認画面での返品特約の表示

→ 法定書面を含む契約書面の作成については『契約書作成を弁護士に依頼するメリットと費用相場』もご参考ください。

従業員教育の実施

営業担当者やコールセンタースタッフに対し、禁止行為や適正な勧誘方法について定期的な研修を行いましょう。研修では以下を重点的に扱うことが有効です。

  • 不実告知・誇大広告にあたる表現の具体例
  • 再勧誘の禁止ルール
  • クーリングオフの正しい説明方法
  • 書面交付の手順

弁護士への相談体制の確保

特定商取引法は取引類型ごとに規制内容が異なり、自社での判断が難しいケースも少なくありません。新しいサービスの立ち上げや営業手法の変更時には、事前に弁護士に相談することでリスクを回避できます。

→ 消費者トラブル全般の予防策については『消費者トラブルの予防策|社内体制とコンプライアンス整備』で詳しく解説しています。

特定商取引法の対応を弁護士に依頼するメリット

特定商取引法は規制が細かく、取引類型ごとに異なるルールを把握する必要があります。弁護士に相談することで、以下のメリットがあります。

自社の取引類型の正確な判定

自社のビジネスがどの取引類型に該当するか、正確に判定してもらえます。複数の類型にまたがるケースもあり、専門家の判断が重要です。

法定書面・広告の法令チェック

法定書面の記載事項や広告の表示内容が法律の要件を満たしているか、プロの目でチェックしてもらえます。弁護士法人エースでは、複数弁護士・パラリーガルによるチーム体制で迅速に対応しています。

行政処分への対応

万が一行政処分を受けた場合も、弁護士が企業の代理人として適切に対応します。LINEでの相談にも対応しており、トラブル発生時にすぐ相談できる体制が整っています。

まとめ

特定商取引法は、訪問販売・通信販売をはじめとする7つの取引類型を規制する法律です。書面交付義務や表示義務を遵守し、クーリングオフへの適切な対応体制を整えることが、企業を守るための基本です。違反した場合は業務停止命令や刑事罰の対象となるため、法定書面の整備、従業員教育、弁護士への相談体制の確保を進めましょう。

→ 消費者問題全般については『消費者問題への企業対応|経営者が知るべき法律と実務ガイド』をご覧ください。

弁護士法人エースでは、特定商取引法に関するご相談を初回無料でお受けしています。

  • 複数弁護士・パラリーガルによる迅速対応
  • LINE・電話・メールでいつでも相談可能
  • 経営者のパートナーとして伴走

お問い合わせ
電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

コラム一覧へ戻る

お忙しい経営者様へ

オンライン・電話での
“弁護士無料相談”も可能です
まずはお電話よりご相談ください