従業員・退職者による誹謗中傷への対応|社内トラブルの法的措置と予防策

  • 2026/6/11

「退職した元従業員が転職サイトに事実無根の口コミを投稿している」「在職中の従業員がSNSで会社の内部情報を暴露している」——従業員や退職者による誹謗中傷は、外部からの投稿とは異なる難しさがあります。

内部事情を知る人物からの投稿は信憑性が高く見られやすく、企業にとって通常の口コミ被害以上のダメージを与えます。一方で、労務管理との兼ね合いや、在職者と退職者で異なる法的根拠を踏まえた対応が求められます。

この記事では、従業員・退職者による誹謗中傷の典型パターンから、法的措置、予防のための社内体制整備まで詳しく解説します。


従業員・退職者による誹謗中傷の実態

典型的なパターン

従業員・退職者による誹謗中傷には、主に以下のようなパターンがあります。

在職中の従業員による投稿
– SNS(X・Instagram等)で会社への不満を投稿
– 匿名掲示板で会社の内部事情や悪評を書き込み
– 社内の機密情報や顧客情報をネット上に公開

退職者による投稿
– 転職サイト(OpenWork・ライトハウス等)への悪意ある口コミ
– SNSで元勤務先の誹謗中傷を投稿
– 匿名掲示板で「ブラック企業」「パワハラ」などの虚偽情報を拡散

企業にとっての特有のリスク

従業員・退職者による投稿は、以下の点で外部からの投稿よりもリスクが高いといえます。

  • 内部事情に基づくため信憑性が高く見える:閲覧者が「関係者の証言」として受け取りやすい
  • 具体的な情報が含まれやすい:部署名、役職者名、社内制度などの具体的な記述
  • 採用活動への直接的な影響:転職サイトの口コミは求職者の判断材料になる

在職中の従業員による誹謗中傷への対応

在職中の従業員に対しては、就業規則に基づく社内手続きで対応することが基本です。

ステップ1:事実確認と証拠保全

まず、投稿の内容をスクリーンショット等で証拠保全します。次に、投稿者が本当に自社の従業員であるかどうかの確認を行います。投稿内容に含まれる内部情報の種類や表現から、投稿者をある程度特定できるケースもあります。

ステップ2:本人への面談・指導

投稿者が特定できた場合は、本人への面談を実施します。この際、以下の点に注意が必要です。

  • 感情的にならず、事実に基づいて冷静に対応する
  • 投稿内容が就業規則のどの条項に違反するかを明確にする
  • 本人の言い分も聴取する(弁明の機会の付与)
  • 投稿の自主的な削除を求める

ステップ3:懲戒処分の検討

面談・指導を経ても改善が見られない場合や、投稿内容が悪質な場合は、就業規則に基づく懲戒処分を検討します。

懲戒処分 適用場面
けん責・戒告 初回の違反で軽微な場合
減給 繰り返しの違反や一定の悪質性がある場合
出勤停止 企業に具体的な損害が生じた場合
懲戒解雇 重大な秘密情報の漏洩、業務妨害に該当する場合

重要:懲戒処分を行う際は、就業規則にSNS利用や会社の名誉・信用毀損に関する規定があることが前提です。規定がない場合は、まず就業規則の整備を行う必要があります。

→ 就業規則の整備については「就業規則の作成・見直し」で解説しています。


退職者による誹謗中傷への対応

退職者は会社との雇用関係が終了しているため、就業規則に基づく懲戒処分は行えません。退職者への対応は、法的措置が中心になります。

退職後の秘密保持義務

退職者に対して秘密保持義務を主張するためには、以下のいずれかが必要です。

  • 退職時の誓約書:秘密保持や会社の名誉を毀損しない旨の誓約書を取得している場合
  • 就業規則の退職後の義務規定:退職後も一定期間、秘密保持義務が存続する旨の規定がある場合
  • 不正競争防止法上の営業秘密:投稿内容が法律上の「営業秘密」に該当する場合

誓約書や就業規則の規定がなくても、名誉毀損や信用毀損に該当する投稿であれば、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求は可能です。

→ 退職者による営業秘密の持ち出し問題については『退職者・元従業員の営業秘密持ち出しへの対応』をご覧ください。

法的措置の選択肢

退職者による誹謗中傷に対しては、以下の法的措置を検討します。

  1. 弁護士名義での警告書送付:投稿者が判明している場合、内容証明郵便で投稿の削除と今後の投稿の差止めを求める
  2. 削除請求:サイト管理者への任意請求、または裁判所への仮処分申立て
  3. 発信者情報開示請求:匿名投稿の場合、投稿者を法的に特定する
  4. 損害賠償請求:投稿によって企業が被った損害の賠償を求める
  5. 刑事告訴:悪質な場合は名誉毀損罪・信用毀損罪での刑事告訴

→ 発信者の特定方法については「発信者情報開示請求の流れと費用」で解説しています。


法的措置の具体的な進め方

投稿者が判明している場合

退職者が実名や特定可能な情報で投稿している場合は、弁護士を通じて直接対応できます。

内容証明郵便の送付:弁護士名義で、投稿の削除と今後の投稿の差止めを求める内容証明郵便を送付します。弁護士からの正式な警告書は、投稿者にとって大きなプレッシャーになり、多くの場合は自主的な削除・謝罪に至ります。

投稿者が匿名の場合

匿名で投稿されている場合は、発信者情報開示請求によって投稿者を特定する必要があります。投稿内容に含まれる内部情報の種類から、投稿者の範囲を絞り込んだうえで、法的手続きを進めます。

このような従業員・退職者のSNSトラブルでお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。


予防のための社内体制整備

事後対応だけでなく、誹謗中傷を未然に防ぐための社内体制整備が重要です。

SNSポリシーの策定

従業員向けのSNS利用ガイドラインを策定し、入社時に周知します。ガイドラインには以下の項目を盛り込むことをおすすめします。

  • 会社名・取引先名を特定できる投稿の禁止
  • 業務上知り得た秘密情報の投稿禁止
  • 会社の名誉・信用を毀損する投稿の禁止
  • 違反した場合の懲戒処分の可能性

就業規則への規定

SNS利用に関する服務規律を就業規則に明記します。懲戒事由として「会社の名誉・信用を毀損する行為」「秘密情報の漏洩」を含めておくことで、違反した場合の懲戒処分の根拠が明確になります。

→ 問題社員への対応全般については「問題社員への対応方法」で解説しています。

退職時の誓約書

退職時に、秘密保持義務および会社の名誉・信用を毀損しない旨の誓約書を取得します。誓約書があることで、退職後の誹謗中傷に対する法的措置の根拠が明確になります。


弁護士に相談するメリット

労務と誹謗中傷の両面からの対応

従業員・退職者による誹謗中傷は、労務問題と密接に関連します。就業規則の整備、懲戒処分の適法性、退職時の誓約書の有効性など、労務管理の観点からも適切な対応が求められます。

弁護士法人エースはグループ内に社労士法人を保有しているため、誹謗中傷への法的対応と労務管理の実務対応をワンストップでサポートできます。

複数担当制による迅速対応

弁護士法人エースでは、複数の弁護士とパラリーガルが「複数担当制」で対応します。担当者が不在でも迅速なレスポンスを維持し、緊急性の高い案件にも対応いたします。

LINEでの気軽な相談

「この投稿は従業員によるものか?」「懲戒処分は可能か?」——弁護士法人エースでは、LINEで担当弁護士に直接相談できるため、判断に迷ったその場で法的な見解を確認できます。


まとめ

従業員・退職者による誹謗中傷への対応のポイントは以下の3点です。

  1. 在職者には就業規則に基づく社内対応:面談・指導→懲戒処分の段階的対応
  2. 退職者には法的措置で対応:警告書送付、削除請求、損害賠償請求
  3. 予防が最大の対策:SNSポリシー策定、就業規則の整備、退職時の誓約書取得

→ 誹謗中傷対策の全体像については「企業の誹謗中傷対策」をご覧ください。

弁護士法人エースでは、従業員・退職者による誹謗中傷に関するご相談を初回無料でお受けしています。

  • 複数弁護士・パラリーガルによる迅速対応
  • LINE・電話・メールでいつでも相談可能
  • 経営者のパートナーとして伴走

お問い合わせ
電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

コラム一覧へ戻る

お忙しい経営者様へ

オンライン・電話での
“弁護士無料相談”も可能です
まずはお電話よりご相談ください