企業の風評被害を予防する方法|社内体制の整備とリスク管理
ネット上の誹謗中傷や風評被害は、発生してからの対応では被害を完全に防ぐことが難しいのが現実です。投稿が拡散された後では、削除できたとしてもスクリーンショットが出回り、企業の評判を完全に回復するのは困難です。
だからこそ、「誹謗中傷を受ける前の予防策」が最も効果的な対策になります。SNSポリシーの策定、就業規則の整備、モニタリング体制の構築、そして誹謗中傷が発生した際の対応フローの事前準備——これらの予防的な取り組みが、企業のレピュテーション(評判)を守る鍵です。
この記事では、企業が風評被害を予防するための具体的な方法と、社内体制の整備ポイントを詳しく解説します。
INDEX
企業が直面する風評被害のリスク
レピュテーションリスクとは
レピュテーションリスクとは、企業の評判(レピュテーション)が損なわれることで経営に悪影響が生じるリスクを指します。ネット上の誹謗中傷は、このレピュテーションリスクの代表的な要因のひとつです。
風評被害が企業に与える影響
風評被害がもたらす経営への影響は多岐にわたります。
| 影響の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 売上・顧客への影響 | 口コミを見た顧客の離反、新規顧客の減少 |
| 採用活動への影響 | 転職サイトの悪評による応募者減少、内定辞退 |
| 取引先との関係 | 取引先からの信頼低下、取引条件の見直し、取引停止 |
| 従業員のモチベーション | 社員の士気低下、離職率の上昇 |
| 資金調達への影響 | 金融機関からの信用低下、融資条件の悪化 |
特に中小企業の場合、大企業と比較して風評被害への耐性が低く、1件の悪質な投稿でも経営に直接的な影響が出やすいのが特徴です。
SNSポリシー・ガイドラインの策定
SNSポリシーの必要性
従業員のSNS利用に起因する炎上やトラブルを防ぐためには、会社としてのSNS利用ルールを明文化し、全従業員に周知することが重要です。
SNSポリシーに盛り込むべき項目
SNSポリシーには、以下の項目を盛り込むことをおすすめします。
禁止事項:
– 会社名、取引先名、顧客名を特定できる投稿の禁止
– 業務上知り得た秘密情報・非公開情報の投稿禁止
– 会社の名誉・信用を毀損する投稿の禁止
– 取引先・顧客・同僚に対する誹謗中傷の禁止
– 業務中のSNS利用に関するルール
推奨事項:
– プライバシー設定の確認と管理
– 投稿前の内容の再確認(一度投稿した情報は完全に消せないことの認識)
– 不適切な投稿を見つけた場合の社内報告ルール
違反時の対応:
– 就業規則に基づく懲戒処分の可能性があること
– 投稿の削除要請に応じる義務があること
従業員への周知・教育
ポリシーを策定するだけでは不十分です。以下の方法で従業員への浸透を図りましょう。
- 入社時の研修でSNSポリシーを説明
- 定期的なSNSリテラシー研修の実施
- 炎上事例を用いたケーススタディの共有
- ポリシーの存在と内容を定期的にリマインド
就業規則・雇用契約での対策
就業規則に盛り込むべき規定
就業規則にSNS利用と会社の名誉・信用毀損に関する規定を明記することで、違反時の懲戒処分の法的根拠が明確になります。
服務規律として追加すべき規定の例:
– 会社の名誉・信用を毀損する行為の禁止
– 業務上知り得た秘密情報の漏洩禁止(在職中・退職後を含む)
– SNS・インターネット上での不適切な情報発信の禁止
懲戒事由として追加すべき規定の例:
– 会社の名誉・信用を著しく毀損する行為
– 秘密保持義務の違反
– SNS利用規程に違反する行為
退職時の誓約書
退職時に以下の内容を含む誓約書を取得することが、退職後の誹謗中傷予防に有効です。
- 秘密保持義務:業務上知り得た情報の守秘義務(退職後も一定期間継続)
- 名誉毀損の禁止:会社・役員・従業員に対する誹謗中傷の禁止
- SNS投稿に関する義務:退職後も会社を特定できる不適切な投稿を行わないこと
→ NDAの整備については「秘密保持契約書(NDA)とは?」で解説しています。
モニタリング体制の構築
なぜモニタリングが必要か
誹謗中傷の被害を最小限に抑えるためには、問題投稿を早期に発見し、迅速に対応することが不可欠です。ISPのアクセスログの保存期間は一般的に3〜6か月であるため、発見が遅れると投稿者の特定自体が不可能になるリスクがあります。
自社でできるモニタリング方法
- Googleアラートの設定:自社名、代表者名、商品名等をキーワードとして登録し、新しい投稿があった場合にメールで通知を受ける
- Googleマップの口コミの定期チェック:Googleビジネスプロフィールの管理画面で新着口コミを定期的に確認
- 転職サイトの口コミチェック:OpenWork、ライトハウス等の企業口コミサイトを定期的に確認
- SNSのエゴサーチ:X、Instagram等で自社名・サービス名を定期的に検索
モニタリングの頻度
最低でも週1回、可能であれば毎日のチェックが望ましいといえます。担当者を決め、チェック項目と手順をマニュアル化しておくことで、継続的なモニタリングが可能になります。
このような風評被害の予防体制整備でお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
誹謗中傷発生時の社内対応フロー
予防策を講じていても、誹謗中傷を完全に防ぐことはできません。発生した場合に備えて、社内対応フローを事前に整備しておくことが重要です。
対応フローの整備
以下のような対応フローを事前に策定し、関係者に周知しておきましょう。
ステップ1:発見・報告
– 問題投稿を発見した従業員は、速やかに管理者に報告
– 報告先(担当者名、連絡先)を明確にしておく
ステップ2:証拠保全
– スクリーンショットの撮影(URL・投稿日時を含む)
– 投稿のアーカイブ保存
ステップ3:初期判断
– 投稿内容の事実確認(社内関係者からの聞き取り)
– 法的措置の必要性の判断
– 弁護士への相談
ステップ4:対応の実行
– 削除請求の実施
– 必要に応じて発信者情報開示請求
– 社内への情報共有(対応方針の周知)
対応チームの編成
中小企業の場合、専任チームの編成は難しいかもしれませんが、少なくとも以下の役割を明確にしておくことが望ましいです。
- 責任者:対応方針の最終判断(経営者または管理職)
- 実務担当:証拠保全、関係者への連絡
- 外部専門家:弁護士への相談窓口
顧問弁護士を活用した予防的法務
顧問弁護士がいるメリット
誹謗中傷は突発的に発生し、迅速な判断と対応が求められます。顧問弁護士がいれば、以下のメリットがあります。
- 即時対応:問題投稿を発見した時点ですぐに法的な見解を確認できる
- 予防策の整備:SNSポリシー、就業規則、誓約書等の法的書面の作成をサポート
- 継続的なモニタリング支援:定期的な法的アドバイスにより、リスク管理体制を維持・改善
弁護士法人エースでは、LINEで担当弁護士に直接相談できるため、「この投稿は対応が必要か?」といった日常的な判断にも迅速にお答えします。複数の弁護士とパラリーガルが「複数担当制」で対応するため、いつでも相談できる安心感があります。
→ 顧問弁護士の活用については「顧問弁護士とは?」をご覧ください。
まとめ
企業が風評被害を予防するためのポイントは以下の4点です。
- SNSポリシーの策定と従業員教育:ルールの明文化と定期的な研修
- 就業規則・誓約書の整備:法的根拠の明確化と退職後の義務の確保
- モニタリング体制の構築:早期発見のための定期チェック体制
- 対応フローの事前策定:発生時に迷わず動ける体制づくり
「備えあれば憂いなし」——予防的な対策を講じておくことが、企業のレピュテーションを守る最善の方法です。
→ 誹謗中傷対策の全体像については「企業の誹謗中傷対策」をご覧ください。
弁護士法人エースでは、風評被害の予防体制整備に関するご相談を初回無料でお受けしています。
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監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
竹内 省吾
- 経歴
-
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
成田 翼
- 経歴
-
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員