再生型M&Aとは?事業譲渡・会社分割による事業再生の方法
経営が悪化しても、事業そのものに価値があるなら、M&Aを活用して再建を図れる可能性があります。再生型M&Aは、スポンサー企業への事業譲渡や会社分割によって収益性のある事業を存続させ、同時に債務の整理を進める手法です。近年、後継者不在や経営悪化に直面する中小企業の間でも活用が広がっています。
本記事では、再生型M&Aの基本的な仕組みから、事業譲渡・会社分割・第二会社方式といった主要スキームの比較、手続きの流れ、注意すべき否認リスクまで、経営者が知っておくべきポイントを解説します。
INDEX
再生型M&Aとは?通常のM&Aとの違い
再生型M&Aとは、経営が悪化した企業の事業や株式をスポンサー企業に譲渡し、事業の存続と債務の整理を同時に実現する手法です。
通常のM&Aが「成長戦略」や「事業承継」を目的として行われるのに対し、再生型M&Aは「事業を残すための手段」として活用される点が大きく異なります。
通常のM&Aと再生型M&Aの比較
| 項目 | 通常のM&A | 再生型M&A |
|---|---|---|
| 目的 | 成長戦略・事業承継 | 事業の存続・債務整理 |
| 売り手の状況 | 健全な経営状態 | 経営悪化・債務超過 |
| 価格決定 | 将来の収益力を反映 | 事業価値から債務を考慮し決定 |
| 関係者 | 買い手・売り手 | 買い手・売り手+債権者 |
| スピード | 数ヶ月〜1年程度 | 迅速な対応が求められる |
再生型M&Aでは、通常のM&Aとは異なり、金融機関をはじめとする「債権者」が重要な当事者として加わります。債権者の同意をいかに得るかが、再生型M&Aの成否を左右する大きなポイントです。
また、対象企業の経営状態が悪化しているため、時間との勝負になるケースが多く、迅速なスポンサー選定と手続きの進行が求められます。
再生型M&Aの主なスキーム
再生型M&Aには複数のスキーム(手法)があります。中小企業で利用されることの多い3つのスキームを比較します。
事業譲渡
事業譲渡は、会社の事業の全部または一部を他の会社に売却する方法です。再生型M&Aでは最もよく利用されるスキームの一つです。
- メリット: 譲渡する事業・資産・負債を個別に選択できる。簿外債務を引き継がない設計が可能
- デメリット: 契約・許認可の再取得が必要。従業員の転籍には個別の同意が必要
会社分割
会社分割は、会社の事業の一部を別の会社に包括的に承継させる方法です。新たに設立した会社に承継させる「新設分割」と、既存の会社に承継させる「吸収分割」があります。
- メリット: 権利義務を包括的に承継できるため、契約の巻き直しが不要なケースが多い
- デメリット: 簿外債務も含めて包括承継されるリスクがある
第二会社方式
第二会社方式は、収益性の高い事業(Good事業)だけを新会社やスポンサー企業に移し、不採算事業や過剰債務を旧会社に残して整理する方式です。事業譲渡または会社分割を用いて実行します。
- メリット: 収益事業のみを存続させ、債務を旧会社に残して整理できる。従業員の雇用維持がしやすい
- デメリット: 旧会社は特別清算または破産手続きに進む。税務上の取り扱いに注意が必要
| スキーム | 資産・負債の選別 | 契約の承継 | 簿外債務リスク | 手続きの複雑さ |
|---|---|---|---|---|
| 事業譲渡 | 個別に選択可能 | 再契約が必要 | 低い | 中 |
| 会社分割 | 包括承継 | 原則そのまま承継 | ある | 中〜高 |
| 第二会社方式 | 上記のいずれかを活用 | スキームによる | スキームによる | 高 |
どのスキームが最適かは、事業の特性、債権者の状況、許認可の有無、従業員の雇用状況など、さまざまな要素を総合的に判断して決定する必要があります。
→ M&A全般のスキームについては『M&Aの流れと手続き|検討開始からクロージングまでの全体像』も参考になります。
再生型M&Aの流れ
再生型M&Aは、一般的に以下の流れで進みます。
ステップ1:現状分析と再建可能性の検討
まず、会社の財務状況・事業の収益力を分析し、M&Aによる再建が現実的かどうかを判断します。事業に十分な価値があり、スポンサーが見込めるかがポイントです。
ステップ2:スポンサーの選定
再生型M&Aの核となるのがスポンサー(買い手)の選定です。自社の事業に関心を持つ企業や、同業他社・取引先などが候補になります。弁護士やM&Aアドバイザーのネットワークを活用して候補先を探すケースが多いです。
ステップ3:デューデリジェンス(DD)
スポンサー候補が決まったら、デューデリジェンス(買収監査)を実施します。財務DD、法務DD、事業DDなどを通じて、対象事業の実態やリスクを調査します。再生型M&Aでは、簿外債務や偶発債務の有無が特に重要な調査ポイントです。
→ デューデリジェンスの詳細は『デューデリジェンス(DD)とは?種類・進め方・チェックポイント』をご覧ください。
ステップ4:条件交渉・契約締結
DD結果をもとに、譲渡価格や承継する資産・負債の範囲、従業員の処遇、表明保証の内容などを交渉し、事業譲渡契約や会社分割契約を締結します。
ステップ5:債権者との調整・クロージング
再生型M&Aでは、債権者(特に金融機関)への説明と同意の取得が不可欠です。私的整理の枠組みで進める場合は債権者との協議が中心となり、民事再生手続きの中で進める場合は裁判所の許可が必要になります。すべての条件が整ったら、クロージング(取引実行)となります。
このような再生型M&Aの手続きでお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
民事再生手続きでのM&A活用
再生型M&Aは、私的整理の中で行われる場合と、民事再生手続きの中で行われる場合があります。特に民事再生手続きと組み合わせた活用方法として、以下の2つが代表的です。
プレパッケージ型
プレパッケージ型(事前に再生計画をまとめてから法的手続きに入る方式)は、民事再生の申立て前にスポンサーを確保し、M&Aのスキームや条件を事前に合意しておく方式です。
- メリット: 手続き開始後の事業価値の毀損を最小限に抑えられる。手続き期間が短縮される。スポンサーの支援表明があるため、取引先や従業員の不安を軽減できる
- 注意点: スポンサー選定の透明性を確保する必要がある。裁判所や債権者から入札の実施を求められるケースもある
入札方式
民事再生手続き開始後に、広くスポンサー候補を募って入札を行う方式です。
- メリット: スポンサー選定の透明性・公平性が高い。より高い譲渡価格が期待できる
- デメリット: 手続きに時間がかかり、その間に事業価値が毀損するリスクがある
中小企業の場合、事業規模や業種の特性から入札に参加する候補が限られることも多く、プレパッケージ型が採用されるケースが少なくありません。
→ 民事再生手続きの詳細は『民事再生手続きの流れ|申立てから再生計画認可までの全体像』で解説しています。
再生型M&Aのメリット・デメリットと注意点
メリット
- 事業と雇用の維持: 収益性のある事業を存続させ、従業員の雇用を守れる可能性が高い
- 債務の整理が同時に進む: 事業の売却代金を債務の弁済に充てることで、債権者にとっても破産より有利な回収が見込める
- 経営資源の有効活用: 技術・ノウハウ・取引先との関係など、企業が持つ無形の価値を活かせる
- スピーディーな再建: 自力再建と比べて短期間で事業の立て直しを図れる
デメリット
- 経営権の喪失: 事業をスポンサーに譲渡するため、現経営者は経営から退くケースが多い
- 譲渡価格が低くなりがち: 経営悪化の状態での売却になるため、通常のM&Aと比べて価格交渉力が弱い
- 債権者との調整が必要: 全債権者の同意が得られない場合、法的手続きの利用が必要になる
否認権行使のリスクに注意
再生型M&Aで特に注意すべきなのが「否認権行使のリスク」です。これは、再生型M&Aの取引が不当に安い価格で行われた(詐害行為)として、後に裁判所が取引の効力を否定するリスクを指します。
否認リスクを回避するためには、以下の点が重要です。
- 適正な対価での取引: 事業価値の評価を適正に行い、合理的な価格で取引する
- 手続きの透明性: スポンサー選定のプロセスを記録し、公正さを担保する
- 専門家の関与: 弁護士や公認会計士による適切な評価・助言を受ける
- 債権者への十分な説明: 取引内容を債権者に開示し、理解を得る
否認権行使のリスクの回避は高度な法的判断を要するため、再生型M&Aの経験がある弁護士に早期から関与してもらうことが重要です。
弁護士に依頼するメリット
再生型M&Aは、通常のM&Aと事業再生の両方の知識・経験が必要な、高度な実務領域です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
法的リスクの回避
否認リスクへの対応、債権者との交渉、民事再生手続きとの連携など、法的リスクを適切にコントロールできます。スキームの設計段階から弁護士が関与することで、後からトラブルが発生するリスクを大幅に減らせます。
デューデリジェンスの支援
法務DDでは、契約関係の精査、潜在的な訴訟リスクの洗い出し、コンプライアンス体制の確認など、法律の専門知識が不可欠です。再生案件では簿外債務や偶発債務の調査が特に重要であり、見落としは致命的な結果につながりかねません。
債権者との交渉
金融機関をはじめとする債権者への説明・交渉は、弁護士が代理人として対応することで、経営者の心理的負担を軽減できます。法的な根拠に基づいた交渉により、債権者の合意を得やすくなります。
エースならではの強み
弁護士法人エースでは、再生型M&Aに関して以下の特徴があります。
- M&A実務との連携: M&A・事業承継分野の実務経験を活かし、通常のM&Aと再生型M&Aの双方に対応
- 税理士・社労士とのワンストップ対応: 弁護士全員が通知税理士登録済み。グループ内に社労士法人もあり、再生に伴う税務・労務面もまとめて対応可能
- 経営者視点のアドバイス: 代表弁護士自身が経営者として複数法人を運営。法律論だけでなく「事業として残す価値があるか」という経営判断もサポート
- 複数担当制で迅速対応: 再生案件はスピードが重要。チームで対応することでレスポンスの早さを確保
まとめ
再生型M&Aは、経営が悪化した企業の事業を存続させる有力な手段です。事業譲渡、会社分割、第二会社方式といったスキームの選択、プレパッケージ型と入札方式の使い分け、否認リスクへの対応など、専門的な判断が求められる場面が多くあります。
再建の成否を左右するのは「早期の専門家への相談」です。資金繰りが完全に行き詰まる前に、事業に価値が残っている段階で動き出すことが重要です。
→ 事業再生全般については『事業再生とは?中小企業が知るべき手法・手続きの流れと弁護士活用のポイント』をご覧ください。
弁護士法人エースでは、再生型M&Aに関するご相談を初回無料でお受けしています。
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監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
竹内 省吾
- 経歴
-
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
成田 翼
- 経歴
-
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員