不正競争防止法の罰則・損害賠償|違反時のリスクと法的措置

  • 2026/6/11

「不正競争防止法に違反すると、どのような罰則を受けるのか」「被害を受けた場合にどのような法的措置がとれるのか」——不正競争防止法の罰則や損害賠償について、正確に把握している経営者の方は意外と少ないのではないでしょうか。不正競争防止法違反は、個人に対する拘禁刑・罰金だけでなく、法人に対しても最大10億円の罰金が科される可能性がある重大な問題です。一方で、被害を受けた企業には差止請求や損害賠償請求といった強力な救済手段が用意されています。この記事では、不正競争防止法の罰則の具体的な内容から、民事上の救済措置、さらに証拠収集から訴訟までの実務的な手順まで詳しく解説します。

不正競争防止法の刑事罰|違反行為の種類と罰則

不正競争防止法に違反した場合、行為の種類や悪質性に応じて刑事罰が科されます。特に営業秘密の侵害には重い罰則が設けられており、企業経営に与える影響は甚大です。

営業秘密侵害に対する罰則

営業秘密(秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす情報)の不正取得・使用・開示については、不正競争防止法のなかでも最も重い刑事罰が定められています。

対象 罰則内容
個人 10年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金、またはその両方
法人 10億円以下の罰金

営業秘密を海外で使用・開示した場合(海外重加重)は、個人に対する罰金の上限が3,000万円に引き上げられます。グローバル化に伴い、海外の競合企業への情報流出は特に厳しく取り締まられています。

さらに、営業秘密侵害罪は非親告罪です。被害企業が告訴しなくても、捜査機関が独自に捜査・起訴できる点も押さえておきましょう。

その他の不正競争行為に対する罰則

周知表示混同惹起行為(広く知られた他社の商品名や表示と類似したものを使い、混同を生じさせる行為)や著名表示冒用行為(著名な他社のブランド名等を無断で使用する行為)、商品形態模倣行為などにも刑事罰が設けられています。

対象 罰則内容
個人 5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方
法人 5億円以下の罰金

→ 不正競争行為の各類型について詳しくは『不正競争行為の種類と具体例』をご覧ください。

両罰規定|従業員の行為で会社にも罰金が科される

不正競争防止法には「両罰規定」が設けられています。これは、従業員が業務に関連して不正競争行為を行った場合、その従業員個人だけでなく、会社(法人)にも罰金刑が科される制度です。

つまり、「従業員が勝手にやったこと」であっても、会社として管理監督を怠っていれば法人としての責任を問われる可能性があります。経営者にとっては、従業員の行為も含めたコンプライアンス体制の整備が不可欠です。

民事上の救済措置|差止請求・損害賠償・信用回復

不正競争の被害を受けた企業は、刑事告訴だけでなく、民事上の法的措置をとることができます。実務では、まず民事上の対応から検討するケースが一般的です。

差止請求(侵害行為の停止・予防)

差止請求とは、不正競争行為を行っている相手方に対して、その行為の停止や予防を裁判所に求める手続きです(不正競争防止法3条)。

差止請求が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 相手方の行為が不正競争行為に該当すること
  • 自社の営業上の利益が侵害され、または侵害されるおそれがあること

差止請求の特徴は、損害の発生を待たずに行使できる点です。「まだ実害は出ていないが、このままでは被害が生じる」という段階でも請求できます。

また、侵害行為の停止だけでなく、侵害に使用された物の廃棄や設備の除去も求められます。たとえば、模倣品の在庫の廃棄、営業秘密を保存したデータの削除などを命じてもらうことが可能です。

緊急性が高い場合は、本訴に先立って「仮処分」を申し立てることで、迅速に侵害行為を止められる場合もあります。

損害賠償請求と損害額の算定方法

不正競争行為によって営業上の利益を侵害された場合、相手方に対して損害賠償を請求できます(不正競争防止法4条)。

損害賠償請求で最も難しいのが「損害額の立証」です。不正競争防止法は、この立証の困難さを軽減するために、損害額の推定規定(5条)を設けています。

算定方法 計算式 適用場面
逸失利益方式(5条1項) 侵害者の譲渡数量 × 権利者の単位あたり利益 自社でも同種の商品を販売している場合
侵害者利益方式(5条2項) 侵害者が得た利益額=被害者の損害額と推定 侵害者の売上情報が入手できる場合
ライセンス料相当額(5条3項) 受けるべきライセンス料に相当する額 上記の立証が困難な場合の最低限の損害額

2024年4月施行の改正不正競争防止法では、損害賠償の算定方法が拡充されました。具体的には、ライセンス料相当額の算定において、「侵害があったことを前提とした交渉」を想定して算定できるようになり、被害企業により有利な金額を請求しやすくなっています。

この改正は、自社では大規模な製造・販売を行っていない中小企業にとって大きな意味があります。従来は自社の販売実績に基づく損害額の立証が難しいケースもありましたが、ライセンス料方式の拡充により、より実効性のある損害賠償を請求できるようになりました。

信用回復措置

不正競争行為によって企業の信用が傷つけられた場合、裁判所に信用回復のための措置を求めることもできます(不正競争防止法14条)。

  • 新聞や業界紙への謝罪広告の掲載
  • 取引先への訂正通知の送付
  • ウェブサイト上での訂正文の掲載

信用回復措置は、金銭的な損害賠償だけでは回復できない企業の信頼やブランドイメージを守るための重要な手段です。

被害を受けた企業がとるべき手順|証拠収集から訴訟まで

不正競争の被害を受けた場合、迅速かつ適切な対応が結果を左右します。以下のステップで対応を進めましょう。

ステップ1:証拠の確保・保全

最も重要なのが初動での証拠確保です。不正競争行為の立証には、以下のような証拠が必要になります。

  • 侵害品の現物やスクリーンショット、販売サイトの記録
  • 情報漏洩の痕跡(社内システムのアクセスログ、メール送信記録、USBメモリ等の接続記録など)
  • 自社が先に使用していたことを示す資料(販売実績、商標登録証、デザインの制作日時記録など)
  • 営業秘密の管理状況を示す資料(秘密管理規程、アクセス制限の設定状況など)

デジタル証拠は改ざんや消去されるリスクがあるため、発見次第、日時が分かる形で保全することが重要です。

ステップ2:弁護士への相談・法的分析

証拠を確保したら、不正競争問題に詳しい弁護士に相談し、以下の点を検討します。

  • 不正競争防止法上の「不正競争行為」に該当するか
  • 営業秘密の場合、3要件を満たしているか
  • どの法的措置(差止請求・損害賠償請求・刑事告訴)が最も有効か
  • 請求が認められる見通しと期待できる回収額

このような不正競争問題でお困りの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

ステップ3:警告書(内容証明郵便)の送付

法的分析の結果、不正競争行為が認められる場合、まずは相手方に対して警告書を送付するのが一般的です。警告書には以下の内容を記載します。

  • 具体的な不正競争行為の内容と根拠
  • 行為の即時停止の要求
  • 損害賠償の請求と回答期限の設定
  • 応じない場合は法的措置をとる旨の通知

弁護士名義の内容証明郵便で送付することで、相手方が任意に行為を中止し、訴訟に至る前に解決するケースも多くあります。

ステップ4:仮処分の申立て

警告書に相手方が応じない場合や、被害拡大の緊急性が高い場合は、裁判所に仮処分を申し立てます。仮処分は本訴に比べて迅速に判断が下される(通常、数週間〜数か月程度)ため、早期に侵害行為を止めたい場合に有効です。

ステップ5:本訴(訴訟)の提起

最終的に、差止請求や損害賠償請求を正式に行うために訴訟を提起します。不正競争に関する訴訟は、東京地方裁判所または大阪地方裁判所の知的財産部が管轄します。

訴訟では立証責任は原則として原告(被害企業)側にありますが、前述の損害額推定規定により、損害額の立証負担は大幅に軽減されています。

自社が加害者にならないために|コンプライアンス体制の整備

不正競争防止法は、被害者として保護を受けるだけでなく、知らないうちに加害者になるリスクへの備えも重要です。

従業員教育・研修の実施

不正競争行為の多くは、従業員の認識不足が原因で発生します。以下のような内容を定期的に研修で周知しましょう。

  • 競合他社の商品名やデザインに類似した表示を使わないこと
  • 前職で得た営業秘密を現在の職場で使用してはならないこと
  • 他社の商品を参考にする際の適法・違法の境界線
  • 違反した場合の個人・法人への罰則の具体的内容

中途採用時の対応

中途採用者が前職の営業秘密を持ち込むことで、会社が知らないうちに加害者になるケースは少なくありません。以下の対策が有効です。

  • 入社時に前職の秘密情報を持ち込まない旨の誓約書を取得する
  • 前職での競業避止義務(退職後に同業他社への転職や競合する事業を行わない義務)の有無を確認する
  • 前職の営業秘密に触れないよう業務範囲を調整する

商品開発・ブランディング時の事前調査

新商品の開発やブランド戦略の策定時には、以下のチェックを行いましょう。

  • 商品名やロゴが他社の周知表示・著名表示と類似していないか
  • 商品デザインが他社商品のデッドコピーにあたらないか
  • 特許・商標・意匠の権利調査を事前に実施しているか

→ ブランドや商品の模倣被害への対処法は『ブランド・商品の模倣被害への対応』をご覧ください。

弁護士に相談するメリット

不正競争防止法の問題は、被害者側・加害者側のいずれであっても、早期の弁護士相談が結果を大きく左右します。

弁護士法人エースでは、不正競争問題について以下の体制でサポートしています。

  • 経営者視点のアドバイス: 代表弁護士自身が複数法人の代表を兼任しており、法的な正しさだけでなく「訴訟を起こすことの経営面でのメリット・デメリット」も含めた総合的な判断をご提案します
  • 複数担当制による迅速な初動: 営業秘密の漏洩や模倣品の流通は、時間が経つほど被害が拡大します。複数の弁護士・パラリーガルがチームで対応し、証拠保全や仮処分の申立てを迅速に進めます
  • 社労士法人との連携: 退職者による営業秘密持ち出し事案では、グループ内の社労士法人と連携し、競業避止義務の確認から労務対応までワンストップで対応します
  • LINEでの気軽な相談: 「取引先から不正競争だと指摘された」「他社に模倣されている気がする」といった段階でも、LINEで気軽にご相談いただけます

まとめ

不正競争防止法の罰則と損害賠償について、この記事のポイントを整理します。

  • 刑事罰は行為の種類によって異なり、営業秘密侵害は最も重い。個人で10年以下の拘禁刑・2,000万円以下の罰金、法人で10億円以下の罰金が科される
  • 両罰規定により、従業員の行為であっても法人として責任を問われる可能性がある
  • 民事上の救済措置として、差止請求・損害賠償請求・信用回復措置が利用できる
  • 損害額の推定規定(5条)により、被害企業の立証負担が軽減されている
  • 2024年改正でライセンス料相当額の算定方法が拡充され、中小企業にも有利に
  • 被害発覚時は証拠保全→弁護士相談→警告書→仮処分→訴訟の流れで対応する
  • 自社が加害者にならないためのコンプライアンス体制の整備も不可欠

→ 不正競争防止法全般については『不正競争防止法とは?企業が知るべきリスクと実務対策ガイド』をご覧ください。

弁護士法人エースでは、不正競争防止法に関するご相談を初回無料でお受けしています。

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電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

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