取締役会議事録の作成方法と保管義務|記載事項・署名・電子化
「取締役会の議事録には何を書けばいいのか」「署名は全員必要なのか」「電子データで保管しても問題ないのか」——取締役会議事録の作成に不安を感じている経営者や総務担当者の方は多いのではないでしょうか。取締役会議事録は、会社法によって作成と保管が義務づけられた重要書類です。記載内容に不備があったり、保管を怠ったりすると、決議の有効性に疑義が生じるだけでなく、過料(罰金)の制裁を受ける可能性もあります。本記事では、取締役会議事録に記載すべき事項、署名・押印のルール、保管義務、電子化の方法まで、実務に必要な知識を網羅的に解説します。
INDEX
取締役会議事録の作成義務
法的根拠
取締役会を開催した場合、議事録を作成しなければなりません(会社法369条3項)。これは取締役会設置会社にとって法律上の義務であり、省略することはできません。
議事録は書面で作成することも、電磁的記録(電子データ)で作成することも認められています(会社法369条3項・4項)。
議事録を作成しないリスク
議事録の作成を怠った場合、以下のリスクがあります。
- 過料の制裁: 記載すべき事項を記載しなかった場合や虚偽の記載をした場合、100万円以下の過料に処せられる可能性があります(会社法976条)
- 決議の立証困難: 議事録がなければ、取締役会でどのような決議が行われたかを証明できず、後日トラブルになった際に不利になります
- 取締役の責任問題: 適切に議事録を作成・保管していないこと自体が、取締役の善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)違反と評価される可能性があります
議事録に記載すべき事項
法定記載事項
会社法施行規則101条3項に基づき、取締役会議事録には以下の事項を記載する必要があります。
| 記載事項 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 開催の日時・場所 | 年月日、開始・終了時刻、開催場所(オンライン参加がある場合はその旨) |
| 議事の経過の要領・結果 | 議題ごとの審議内容の要約と、賛成・反対の結果 |
| 特別利害関係人の氏名 | 決議について特別の利害関係を有する取締役がいた場合、その氏名 |
| 述べられた意見・発言の概要 | 各取締役・監査役の重要な発言の要旨 |
| 出席した取締役・監査役の氏名 | 出席者全員の氏名(オンライン出席の取締役も含む) |
| 議長の氏名 | 議長が存在する場合、その氏名 |
実務上記載すべき事項
法定事項に加えて、実務上は以下の事項も記載しておくことをおすすめします。
- 議案番号: 複数の議案がある場合、番号を付けて整理
- 配布資料の一覧: 取締役会で配布・参照された資料の名称
- 決議の方法: 挙手、投票、異議なしなどの決議方法
- 報告事項: 取締役の職務執行報告など、決議事項以外の報告内容
「議事の経過の要領」の書き方
「議事の経過の要領」は、発言の一言一句を記録する必要はありません。審議の要点と結論が分かる程度で十分です。ただし、反対意見があった場合や、重要な条件付きで可決された場合は、その内容を具体的に記載しておくことが重要です。
取締役会の開催手続きについて詳しくは、『取締役会の開催方法と運営の流れ』をご覧ください。
議事録の署名・記名押印
署名・記名押印の義務
書面で議事録を作成した場合、出席した取締役および監査役が署名または記名押印しなければなりません(会社法369条3項)。
注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 署名義務があるのは出席者のみ(欠席した取締役・監査役には署名義務なし)
- 代表取締役だけでなく、出席した全取締役・全監査役が署名する必要あり
- 「署名」と「記名押印」はいずれでも可(実務上は記名押印が多い)
- 使用する印鑑に法律上の制限はなく、実印・認印いずれでも可
署名を拒否された場合
出席した取締役が署名を拒否した場合でも、議事録自体が無効になるわけではありません。ただし、署名拒否があった旨を議事録に記載しておくことが望ましいです。
議事録の保管義務と閲覧
10年間の保管義務
取締役会議事録は、取締役会の日から10年間、会社の本店に備え置かなければなりません(会社法371条1項)。
閲覧・謄写請求権
取締役会議事録に対しては、以下の者が閲覧・謄写を請求できます。
| 請求権者 | 要件 |
|---|---|
| 株主 | 権利行使に必要な場合、裁判所の許可を得て閲覧・謄写が可能(会社法371条2項) |
| 債権者 | 取締役の責任を追及するために必要な場合、裁判所の許可を得て閲覧・謄写が可能(会社法371条3項) |
| 親会社社員 | 権利行使に必要な場合、裁判所の許可を得て閲覧・謄写が可能(会社法371条4項) |
株主総会議事録とは異なり、取締役会議事録の閲覧には裁判所の許可が必要です。これは、取締役会の議事には経営上の機密情報が含まれることが多いためです。
議事録の電子化
電磁的記録での作成
取締役会議事録は、紙の書面だけでなく電磁的記録(電子データ)でも作成できます(会社法369条4項)。PDFファイルやWordファイルなど、一般的な電子文書形式で作成可能です。
電子署名の要件
電磁的記録で議事録を作成する場合、署名・記名押印に代えて電子署名を行う必要があります(会社法施行規則225条)。会社法上認められる電子署名の方式は以下のとおりです。
- 法務省令で定める電子署名(公的個人認証サービスなど)
- クラウド型電子署名サービス(DocuSign、クラウドサイン等)も一定の要件を満たせば利用可能
電子化のメリット
- 保管スペースの削減: 10年分の紙の議事録を保管する必要がなくなる
- 検索性の向上: 過去の議事録をキーワードで検索できる
- リモートワーク対応: オンラインで署名・確認が完結する
- 改ざん防止: 電子署名やタイムスタンプにより、改ざんリスクを低減
議事録の電子化にあたっては、自社の規模や運用体制に合った方法を選択することが重要です。お悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
書面決議の場合の議事録
書面決議(みなし決議)を行った場合も、議事録の作成は必要です。書面決議の議事録には、通常の議事録とは異なる特有の記載事項があります(会社法施行規則101条4項)。
書面決議の議事録に記載すべき事項
- 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
- 上記事項の提案をした取締役の氏名
- 取締役会の決議があったものとみなされた日
- 議事録の作成にかかる職務を行った取締役の氏名
注意点
書面決議の議事録では、「議事の経過の要領」の記載は不要です。実際に会議を開催していないため、議事の経過は存在しないからです。ただし、全取締役の同意書と監査役の異議がない旨の確認書を、議事録と併せて保管しておく必要があります。
議事録作成でよくある失敗と対策
失敗1:記載漏れ
特別利害関係人の氏名や、監査役の発言の記載が漏れているケースが多く見られます。
対策: 議事録のテンプレートにチェック項目を設け、記載漏れを防止する。
失敗2:署名の不備
出席した監査役の署名が漏れている、退席した取締役の署名がある(出席していない取締役の署名は不要)といった不備が発生しがちです。
対策: 出席者名簿と照合し、署名漏れ・誤署名がないか確認するプロセスを設ける。
失敗3:保管の不備
議事録を作成したものの所在が不明、保管期限前に廃棄してしまったなどのケースがあります。
対策: 議事録ファイルの管理台帳を作成し、保管場所と保管期限を一元管理する。電子化を導入すれば、紛失リスクを大幅に低減できます。
弁護士に議事録作成を相談するメリット
議事録テンプレートの整備
弁護士法人エースでは、会社の実情に合わせた議事録テンプレートを作成し、記載漏れのない運用体制を構築するお手伝いをしています。決議事項の種類別テンプレートや、書面決議用のテンプレートも整備可能です。
グループ内の士業連携
所属弁護士は全員が通知税理士登録済みで、グループ内に社労士法人も持っています。決算承認の議事録、就業規則変更の議事録など、税務・労務に関連する議事録作成もワンストップで対応できます。
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「この記載内容で問題ないか」「電子署名はどのサービスを使えばいいか」といった実務的な疑問にも、LINEで迅速に対応いたします。
まとめ
取締役会議事録の作成方法と保管義務について解説しました。本記事のポイントを整理します。
- 取締役会議事録の作成は法律上の義務(不備があると100万円以下の過料)
- 法定記載事項:開催日時・場所、議事の経過と結果、特別利害関係人の氏名など
- 出席した取締役・監査役全員が署名または記名押印
- 10年間本店に保管する義務あり
- 電子化も可能(電子署名が必要)
- 書面決議の場合は通常の議事録とは記載事項が異なる
→ 取締役会全般については『取締役会とは?設置義務・運営方法・決議事項を弁護士が解説』をご覧ください。
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監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
竹内 省吾
- 経歴
-
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
成田 翼
- 経歴
-
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員