取締役会の開催方法と運営の流れ|招集手続きから書面決議まで

  • 2026/6/11

「取締役会の招集通知はいつまでに出せばいいのか」「オンラインで開催しても有効なのか」「書面決議はどんな場合に使えるのか」——取締役会を設置したものの、適法な運営方法がわからないというご相談は少なくありません。取締役会の開催には、会社法で定められた手続きがあり、これを怠ると決議が無効になるリスクがあります。本記事では、取締役会の開催頻度から招集手続き、決議方法、オンライン開催、書面決議(みなし決議)の活用まで、実務に即して詳しく解説します。

取締役会の開催頻度

法定の開催頻度

取締役会設置会社(取締役会を置いている会社)では、3ヶ月に1回以上の取締役会開催が義務づけられています(会社法363条2項)。これは、各取締役が自己の職務執行の状況を取締役会に報告する義務があるためです。

つまり、年に最低4回は取締役会を開催する必要があります。この報告義務は書面決議(みなし決議)で省略することができないため、実際に取締役会を開催しなければなりません。

実務での推奨頻度

法律上は3ヶ月に1回で足りますが、実務上は毎月1回の定例開催が推奨されます。定例化することで以下のメリットがあります。

  • 経営課題を定期的に議論し、迅速な意思決定ができる
  • 招集手続きのルーティン化で事務負担が軽減される
  • 決議が必要な案件を次回の定例会で処理でき、臨時開催の頻度を減らせる

取締役会の招集手続き

招集権者

取締役会の招集は、原則として各取締役が行うことができます(会社法366条1項)。ただし、定款または取締役会の決議によって特定の取締役を招集権者と定めた場合は、その取締役が招集します。

招集権者以外の取締役が取締役会の開催を求めたい場合は、招集権者に対して取締役会の目的事項を示して招集を請求できます。請求後5日以内に、請求の日から2週間以内の日を取締役会の日とする招集通知が発せられない場合は、請求した取締役が自ら招集できます(会社法366条2項・3項)。

招集通知の期限と方法

招集通知は、取締役会の日の1週間前までに各取締役および監査役に発しなければなりません(会社法368条1項)。ただし、定款でこの期間を短縮することが可能です。実務上、「3日前まで」と定めている会社も多くあります。

招集通知の方法に法律上の制限はなく、以下のいずれの方法でも有効です。

  • 書面(郵送・手渡し)
  • 電子メール
  • 電話
  • 口頭

また、招集通知に記載すべき事項は「日時」と「場所」です。株主総会の招集通知とは異なり、議題(目的事項)を記載する義務はありません。ただし、実務上は議題と関連資料を事前に共有しておくことで、充実した議論が可能になります。

招集手続きの省略

取締役および監査役の全員の同意がある場合は、招集手続きを省略できます(会社法368条2項)。全員が偶然集まっている場合(全員出席取締役会)も、同様に招集手続きなしで有効な取締役会を開催できると解されています。

取締役会の成立要件と決議方法

定足数

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数の賛成で成立します(会社法369条1項)。定款でこの要件を引き上げることはできますが、引き下げることはできません。

例えば、取締役が5名の場合、3名以上の出席が必要で、出席者の過半数(3名出席なら2名以上)の賛成が必要です。

特別利害関係人の排除

決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法369条2項)。例えば、取締役との利益相反取引の承認決議では、利益相反する取締役は議決に参加できません。

特別利害関係人は定足数の算定からも除外されます。取締役5名のうち1名が特別利害関係人の場合、残り4名で定足数を計算し、3名以上の出席が必要です。

議長

取締役会の議長について、会社法に規定はありません。定款で定めることが一般的で、多くの会社では代表取締役(社長)が議長を務めます。

→ 決議事項の詳細は『取締役会の決議事項と報告事項』をご覧ください。

オンラインでの取締役会開催

テレビ会議・Web会議の要件

取締役会は、必ずしも対面で開催する必要はなく、テレビ会議やWeb会議システムを利用してオンラインで開催することも認められています。法務省も、以下の条件を満たせば出席として認められるとの見解を示しています。

  • 出席者が相互に意見を述べ合える環境であること
  • 議事の内容をリアルタイムで確認できること

具体的には、Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなどのビデオ会議ツールを利用した開催が一般的です。

ハイブリッド開催

一部の取締役が対面で出席し、一部がオンラインで参加する「ハイブリッド開催」も有効です。遠隔地にいる取締役や、出張中の取締役が参加しやすくなるため、中小企業にとっても実用的な方法です。

注意点

  • 電話のみ(音声のみ)でも、相互に十分な意見交換ができれば有効と解されます
  • 通信が途切れた場合は出席とみなされない可能性があるため、安定した通信環境が必要です
  • 議事録には「テレビ会議システムを利用して出席」等の記載が必要です

書面決議(みなし決議)の活用

書面決議とは

書面決議(みなし決議)とは、実際に取締役会を開催することなく、書面や電磁的記録による全員の同意によって決議を成立させる制度です(会社法370条)。

書面決議の要件

書面決議を行うには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 定款に書面決議を認める旨の定めがあること
  2. 取締役の全員が、提案された決議事項について書面または電磁的記録で同意すること
  3. 監査役が異議を述べないこと

特に重要なのは、あらかじめ定款に根拠規定を設けておくことです。定款に定めがない場合は書面決議を行えません。

書面決議の実務フロー

  1. 提案者(代表取締役等)が決議事項の提案書を作成
  2. 全取締役に提案書を送付(メール可)
  3. 全取締役から書面またはメールで同意を取得
  4. 監査役に提案内容を通知し、異議がないことを確認
  5. 全員の同意が揃った日をもって決議が成立
  6. 議事録を作成し、同意書とともに10年間保管

なお、電子メールでの同意は「電磁的記録」に該当するため有効ですが、口頭での同意は認められません。

書面決議の注意点

  • 職務執行の報告は書面決議で省略できない:3ヶ月に1回の取締役の職務執行報告は、実際に取締役会を開催して行う必要があります。書面決議はあくまで「決議事項」の省略手段です
  • 緊急性の高い案件や、機動的な意思決定が求められる場面での活用に適しています

取締役会運営でよくある問題点と対策

形骸化

中小企業では、取締役会が形だけの存在になっているケースが多く見られます。代表取締役が事実上すべてを決定し、他の取締役は追認するだけというパターンです。形骸化した取締役会は、取締役の監督義務違反を問われるリスクがあります。

対策: アジェンダ(議題)を事前に配布し、各取締役が意見を述べる機会を確保する。重要事項は必ず取締役会の議題に上げるルールを定める。

招集手続きの不備

招集通知を出さずに取締役会を開催するケースがあります。全員が出席していれば問題ありませんが、欠席取締役がいた場合、決議の有効性が争われる可能性があります。

対策: 定例開催のスケジュールを年初に決定しておく。臨時開催の場合も、必ず所定の手続きを踏む。

議事録の不備

議事録を作成していない、または記載が不十分なケースも問題です。議事録は決議内容の証拠となる重要書類であり、不備があると決議の有効性に疑義が生じます。

対策: 議事録のテンプレートを整備し、記載漏れを防止する。議事録の作成について詳しくは、『取締役会議事録の作成方法と保管義務』をご覧ください。就業規則の変更など、労務に関する決議については、『就業規則の作成・見直し』も参考にしてください。

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経営判断としてのアドバイス

代表弁護士は複数法人の代表を兼任する経営者でもあります。「この案件は取締役会決議が必要か」「書面決議で対応できるか」といった判断を、法律と経営の両面からアドバイスいたします。

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まとめ

取締役会の開催方法と運営の流れについて解説しました。本記事のポイントを整理します。

  • 取締役会は3ヶ月に1回以上の開催が必要(実務上は毎月の定例開催を推奨)
  • 招集通知は1週間前までに発送(定款で短縮可)。全員の同意で省略も可能
  • 決議は出席取締役の過半数の賛成で成立
  • オンライン開催も有効(相互に意見交換できる環境が必要)
  • 書面決議は定款の定めと全員の同意が要件(職務執行報告には使えない)
  • 形骸化・招集手続き不備・議事録不備は重大なリスク

→ 取締役会全般については『取締役会とは?設置義務・運営方法・決議事項を弁護士が解説』をご覧ください。

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監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

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