株主総会の決議の種類と要件|普通決議・特別決議・特殊決議の違い

  • 2026/6/11

「取締役の選任は普通決議で良いが、定款変更には特別決議が必要」——株主総会の決議には、議案の重要度に応じて異なる要件が定められています。必要な決議方法を誤ると、せっかく開催した株主総会の決議が取り消されるリスクがあります。

特に中小企業では、「株主は自分だけだから問題ない」と考えがちですが、外部株主がいる場合や将来的に株主構成が変わる可能性を考えると、正しい決議要件を理解しておくことは経営者として不可欠です。

この記事では、株主総会の決議の基本的な仕組みから、普通決議・特別決議・特殊決議それぞれの要件と決議事項、決議要件を間違えた場合のリスク、定款による要件の変更まで、経営者が知っておくべきポイントを網羅的に解説します。

株主総会の決議とは

株主総会の決議とは、株式会社の最高意思決定機関である株主総会において、議案について株主が賛否を表明し、一定の要件を満たした場合に成立する意思決定のことです。

議決権の基本的な考え方

株主総会での議決権は、原則として1株につき1個の議決権が与えられます(会社法308条1項)。つまり、多くの株式を保有する株主ほど、意思決定に対する影響力が大きくなります。

ただし、以下の株式には議決権がありません。

  • 自己株式(会社が自ら保有する株式)
  • 相互保有株式(一定の要件に該当する場合)
  • 単元未満株式(単元株制度を採用している場合)
  • 議決権制限株式(種類株式として議決権を制限されている場合)

定足数と議決要件

決議が成立するためには、2つの要件を満たす必要があります。

  1. 定足数(出席要件): 一定数以上の議決権を持つ株主が出席していること
  2. 議決要件(賛成要件): 出席した株主の議決権のうち、一定割合以上の賛成があること

この2つの要件は、決議の種類によって異なります。以下、普通決議・特別決議・特殊決議に分けて解説します。

→ 株主総会の開催手続きの全体像については『株主総会の流れと手続き』をご覧ください。

普通決議の要件と決議事項

普通決議は、株主総会で最も多く用いられる決議方法です。

普通決議の要件

普通決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の過半数の賛成で成立します(会社法309条1項)。

項目 要件
定足数 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
議決要件 出席株主の議決権の過半数の賛成
定款による変更 定足数は定款で排除・緩和が可能(ただし役員選解任は1/3未満にできない)

普通決議の主な決議事項

決議事項 根拠条文
取締役・会計参与・監査役の選任 会社法329条1項
取締役・会計参与・監査役の解任(累積投票で選任された取締役を除く) 会社法339条1項
取締役・監査役の報酬等の決定 会社法361条・387条
計算書類の承認 会社法438条2項
剰余金の配当 会社法454条1項
資本金の額の増加 会社法450条
準備金の額の増加 会社法451条

普通決議は日常的な会社運営に関する事項が対象です。中小企業では、定時株主総会での計算書類の承認や役員報酬の決定が最もよく行われる普通決議です。

特別決議の要件と決議事項

特別決議は、会社の根幹に関わる重要事項を決定する際に必要となる、普通決議よりも厳格な決議方法です。

特別決議の要件

特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(会社法309条2項)。

項目 要件
定足数 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
議決要件 出席株主の議決権の3分の2以上の賛成
定款による変更 定足数は1/3以上の範囲で緩和可能。議決要件は引き上げのみ可能(2/3以上を下回ることはできない)

特別決議の主な決議事項

決議事項 根拠条文
定款の変更 会社法466条
事業の全部または重要な一部の譲渡 会社法467条1項
合併・会社分割・株式交換・株式移転の承認 会社法783条等
募集株式の発行(非公開会社) 会社法199条2項
資本金の額の減少 会社法447条1項
解散の決議 会社法471条3号
累積投票で選任された取締役の解任 会社法339条1項・342条6項
監査役の解任 会社法343条4項
役員等の責任の一部免除 会社法425条1項
株式の併合 会社法180条2項

特別決議が必要な事項は、いずれも会社の組織や資本に重大な影響を及ぼす事項です。定款の変更は中小企業でも頻繁に生じるため、特別決議の要件を正確に理解しておく必要があります。

→ M&A(事業譲渡・合併等)に必要な株主総会決議については『M&Aの流れと手続き|検討開始からクロージングまでの全体像』もご覧ください。

→ 定款の具体的な記載事項と作成方法については『定款の作成と記載事項』をご覧ください。

特殊決議の要件と決議事項

特殊決議は、株主の利害に特に重大な影響を及ぼす事項について、特別決議よりもさらに厳格な要件が求められる決議です。

特殊決議の類型

特殊決議には主に2つの類型があります。

類型1(会社法309条3項)

項目 要件
定足数 なし(ただし、議決権を行使できる株主の半数以上の出席が実質的に必要)
議決要件 議決権を行使できる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上の賛成

この類型に該当する決議事項は以下のとおりです。

  • 発行する全部の株式を譲渡制限株式とする定款変更
  • 非公開会社における、剰余金の配当・残余財産の分配・議決権について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款変更(会社法109条2項)

類型2(会社法309条4項)

項目 要件
定足数 なし
議決要件 総株主の半数以上であって、総株主の議決権の4分の3以上の賛成

この類型に該当する決議事項は以下のとおりです。

  • 非公開会社において、株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款変更のうち、一定の場合

特殊決議が問題になる場面

特殊決議が必要となるケースは限定的ですが、中小企業で特に注意すべきは、株式の譲渡制限を設ける定款変更です。もともと公開会社であった会社が全株式に譲渡制限を付ける場合には、通常の特別決議ではなく特殊決議が必要になります。

この点を見落とすと、定款変更決議が取り消されるリスクがあるため、注意が必要です。

決議要件を間違えた場合のリスク

決議要件を間違えた場合、その決議は法的に問題のある「瑕疵ある決議」となります。

決議の瑕疵に基づく3つの訴え

株主総会の決議に瑕疵がある場合、以下の3種類の訴えが認められています。

訴えの種類 原因 提訴期限 効果
決議取消しの訴え 招集手続き・決議方法の法令・定款違反、特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議 決議の日から3か月以内 判決確定により遡及的に無効
決議不存在確認の訴え 株主総会が実際に開催されていない場合 期限なし いつでも争える
決議無効確認の訴え 決議の内容が法令に違反する場合 期限なし いつでも争える

決議取消しが認められた場合の影響

決議が取り消されると、その決議に基づいて行われた行為(例:取締役の就任登記、定款変更の登記など)もすべて効力を失います。

中小企業では、「特別決議が必要な議案を普通決議で可決した」「定足数を満たしていなかった」といったケースが起こりがちです。こうしたミスは、後になって株主から決議取消しの訴えを起こされる原因となります。

→ 決議の瑕疵に関する具体的な事例と対策については『株主総会のトラブル事例と対策』をご覧ください。

決議要件に不安がある場合は、事前に弁護士に相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、株主総会の議案設計から決議方法の確認まで、経営者の視点に立ったアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

定款による要件の加重・緩和

会社法では、一定の範囲内で定款により決議要件を変更することが認められています。自社の状況に応じた適切な設計が可能です。

定足数の変更

普通決議の定足数は、定款の定めにより排除または緩和することができます。つまり、定款に「定足数を問わない」と定めれば、出席株主の数にかかわらず決議を行うことが可能です。

ただし、役員の選任・解任に関する普通決議については、定足数を議決権の3分の1未満にすることはできません(会社法341条)。

特別決議の定足数は、定款で議決権の3分の1以上まで緩和できます(会社法309条2項)。3分の1未満にすることはできません。

議決要件の変更

議決要件は、引き上げのみが可能であり、法定の要件を下回る変更はできません。

決議の種類 定足数の変更 議決要件の変更
普通決議 排除・緩和可能(役員選解任は1/3以上) 引き上げのみ可能
特別決議 1/3以上まで緩和可能 引き上げのみ可能(2/3以上を下回れない)
特殊決議 引き上げのみ可能 引き上げのみ可能

定款設計のポイント

中小企業では、以下のような定款設計が実務上よく行われます。

  • 普通決議の定足数を排除する: 株主が少数の場合に、全員が出席できないケースに備える
  • 特別決議の定足数を3分の1に緩和する: 出席が難しい株主がいる場合の対応策として
  • 議決要件を引き上げる: 少数株主の権利を保護するため、重要事項について全員一致を要求する

ただし、定款の設計は会社のガバナンスに大きな影響を与えるため、変更にあたっては専門家への相談をおすすめします。

まとめ

株主総会の決議には、議案の重要度に応じて普通決議・特別決議・特殊決議の3種類があり、それぞれ異なる定足数と議決要件が定められています。この記事のポイントを整理します。

  • 普通決議は出席株主の議決権の過半数の賛成で成立する最も一般的な決議方法
  • 特別決議は出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要で、定款変更や合併などの重要事項が対象
  • 特殊決議はさらに厳格な要件が設けられ、全部の株式を譲渡制限とする定款変更などが該当
  • 決議要件を間違えると、決議取消しの訴えにより決議が無効になるリスクがある
  • 定款により定足数の緩和や議決要件の引き上げが一定の範囲で可能

→ 株主総会全般については『株主総会の基礎知識と運営ガイド』をご覧ください。

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監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

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