取締役会の設置義務とメリット・デメリット|中小企業は設置すべきか

  • 2026/6/11

「取締役会は設置しなければならないのか」「設置すると何が変わるのか」——会社設立時や事業拡大のタイミングで、このような疑問を持つ経営者の方は多いのではないでしょうか。取締役会の設置は、会社の種類によって義務の場合もあれば任意の場合もあります。特に中小企業では、設置することで得られるメリットと、運営にかかるコストのバランスを慎重に見極める必要があります。本記事では、取締役会の設置義務、設置会社と非設置会社の違い、メリット・デメリット、そして中小企業が設置すべきかの判断基準を詳しく解説します。

取締役会とは?設置会社と非設置会社の違い

取締役会とは、取締役全員で構成される会社の意思決定機関です。3名以上の取締役で構成され、会社の業務執行に関する重要事項の決定と、取締役の職務執行の監督を行います。

取締役会設置会社

取締役会設置会社(取締役会を置いている会社)では、以下のような特徴があります。

  • 取締役は3名以上必要
  • 原則として監査役の設置も必要
  • 株主総会の決議事項は、会社法・定款で定められた事項に限定
  • 日常的な業務執行の意思決定は取締役会が行う
  • 代表取締役は取締役会で選定

取締役会非設置会社

取締役会非設置会社(取締役会を置いていない会社)では、以下のような特徴があります。

  • 取締役は1名以上でよい
  • 監査役の設置は原則任意
  • 株主総会であらゆる事項を決議できる
  • 各取締役が業務執行権限を持つ
  • 取締役が1名の場合、その取締役が当然に代表取締役となる

つまり、取締役会を設置するかどうかで、会社の意思決定の仕組みや必要な役員数が大きく変わるのです。

取締役会の設置義務がある会社

すべての株式会社に取締役会が必要なわけではありません。会社法上、取締役会の設置が義務づけられるのは以下の会社です。

必ず設置が必要な会社

会社の種類 根拠条文
公開会社(株式の譲渡制限がない会社) 会社法327条1項1号
監査役会設置会社 会社法327条1項2号
監査等委員会設置会社 会社法327条1項3号
指名委員会等設置会社 会社法327条1項4号

設置が任意の会社

非公開会社(全株式に譲渡制限がある会社)は、取締役会の設置が任意です。日本の中小企業の大多数は非公開会社に該当するため、取締役会を設置するかどうかは経営者自身の判断に委ねられています。

2006年の会社法施行前は、株式会社であれば取締役3名以上と取締役会の設置が必須でした。しかし、現行の会社法では取締役1名のみでの運営も認められるようになり、中小企業にとっては柔軟な機関設計が可能になっています。

会社設立時の機関設計について詳しくは、『会社設立の法律相談』をご覧ください。

取締役会を設置するメリット

中小企業が取締役会を設置することには、以下のようなメリットがあります。

迅速な意思決定が可能になる

取締役会設置会社では、日常的な業務執行の意思決定を取締役会で行うことができます。株主総会を開催せずとも重要事項を決定できるため、意思決定のスピードが上がります。特に、株主が多数いる場合や、株主と経営者が分離している会社では、機動的な経営が可能になります。

対外的な信用力が向上する

取締役会を設置している会社は、複数の取締役による監督体制が整っていると評価され、金融機関からの融資や取引先との契約において有利に働くことがあります。上場を目指す企業にとっては、将来的に取締役会の設置が必須となるため、早期に設置しておくことは準備としても有効です。

経営の監督機能が強化される

取締役が相互に職務の執行を監督するため、ワンマン経営の弊害を防止できます。重要事項について複数の取締役が議論し、合議で決定するプロセスは、経営判断の質を高め、不正防止にもつながります。

権限と責任が明確になる

取締役会で代表取締役を選定し、業務分担を決定することで、各取締役の権限と責任が明確になります。組織としてのガバナンスが強化され、内部統制の基盤となります。

取締役会を設置するデメリット

一方で、取締役会の設置には以下のようなデメリットも存在します。

役員の確保とコスト負担

取締役会の設置には最低3名の取締役が必要です。さらに、原則として監査役1名以上の設置も義務づけられるため、最低でも4名の役員を確保しなければなりません。小規模な企業にとって、役員報酬の負担は決して軽くありません。

運営の事務的負担

取締役会は3ヶ月に1回以上の開催が法律上義務づけられています。開催にあたっては、招集通知の発送、議案の作成、関連資料の準備、議事録の作成・保管といった事務作業が発生します。総務部門が手薄な中小企業にとっては、この負担が大きくのしかかることがあります。

株主の権限が制限される

取締役会設置会社では、株主総会で決議できる事項が法定事項と定款で定めた事項に限定されます。オーナー経営者が株主として直接経営判断に関わりたい場合、取締役会の存在がかえって意思決定の柔軟性を妨げる場合があります。

形骸化のリスク

実態として取締役会を適法に運営していない中小企業は少なくありません。名ばかりの取締役を置き、議事録も形式的にしか作成していない場合、かえって法的リスクが高まります。形骸化した取締役会は、万が一のトラブル時に決議の有効性を争われる原因にもなりかねません。

取締役会の機関設計にお悩みの場合は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。弁護士法人エースでは、経営者の視点に立った実践的なアドバイスを行っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

中小企業は取締役会を設置すべきか?判断基準

取締役会の設置は、会社の規模や経営スタイルによって最適解が異なります。以下の判断基準を参考にしてください。

設置をおすすめするケース

  • 株主と経営者が分離している会社: 株主からの経営の委任を受ける形として、取締役会は適切な機関設計
  • 将来の上場やIPOを検討している会社: 上場審査では取締役会は必須。早期に設置して運営実績を積むべき
  • 取引先や金融機関から信用力を求められる会社: ガバナンス体制の強化をアピールできる
  • 共同経営者が複数いる会社: 意思決定のルールを明確化し、紛争予防に役立つ

役員構成の設計については、『会社設立時の株主・役員構成』も参考になります。

設置しなくてもよいケース

  • オーナー経営者が1人で意思決定する会社: 株主=経営者の場合、取締役会の必要性は低い
  • 取締役が2名以下の小規模企業: 物理的に3名以上の取締役を確保できない場合
  • 迅速な判断が最優先の会社: 取締役会の運営手続きが意思決定の妨げになりうる
  • コスト負担が重い創業初期の会社: 役員報酬や事務コストを最小限にしたい場合

判断のポイント

重要なのは、形式だけ設置して運営しないことが最もリスクが高いということです。設置するなら適法に運営する覚悟を持つこと。設置しないなら、その他の方法でガバナンスを確保する方法を検討しましょう。

取締役会の設置・廃止の手続き

取締役会を新たに設置する場合

  1. 株主総会の特別決議: 定款を変更し、「取締役会を置く」旨の規定を追加
  2. 取締役の選任: 取締役が3名未満の場合、株主総会で追加の取締役を選任
  3. 監査役の選任: 監査役がいない場合、併せて選任(会計参与で代替も可能)
  4. 取締役会の開催: 代表取締役の選定など必要事項を決議
  5. 変更登記の申請: 効力発生日から2週間以内に管轄法務局へ登記

取締役会を廃止する場合

  1. 株主総会の特別決議: 定款を変更し、取締役会に関する規定を削除
  2. 必要に応じて役員変更: 取締役の人数制限がなくなるため、減員も可能。監査役の廃止も検討
  3. 変更登記の申請: 効力発生日から2週間以内に管轄法務局へ登記

いずれの手続きも、定款変更に必要な株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。登記費用は3万円程度(登録免許税)が目安です。

弁護士に取締役会の設置を相談するメリット

取締役会を設置するかどうかは、単に法律上の要否だけでなく、会社の経営方針や将来の展望を踏まえた総合的な判断が求められます。

最適な機関設計の提案

弁護士法人エースの代表弁護士は、自身も複数法人の代表を務める経営者です。法律の知識だけでなく、経営者としての実体験を踏まえ、会社にとって最適な機関設計をご提案します。「取締役会を設置すべきか」「監査役は必要か」といった判断を、経営の実情に即してアドバイスいたします。

定款変更・登記手続きのサポート

取締役会の設置・廃止に伴う定款変更、株主総会の運営、登記手続きまで一貫してサポートします。グループ内の社労士法人や、連携する司法書士とも協力し、ワンストップで対応が可能です。

設置後の運営もフォロー

取締役会を設置した後の運営(招集手続き、議事録作成、決議事項の判断など)についても、LINEで気軽にご相談いただけます。「この案件は取締役会決議が必要か?」といった日常的な疑問にも迅速に対応いたします。

→ 設置後の運営について、詳しくは『取締役会の開催方法と運営の流れ』をご覧ください。

まとめ

取締役会の設置義務とメリット・デメリットについて解説しました。本記事のポイントを整理します。

  • 公開会社等は取締役会の設置が義務、非公開会社は任意
  • 設置のメリット:迅速な意思決定、信用力向上、監督機能の強化
  • 設置のデメリット:役員確保のコスト、事務的負担、株主権限の制限
  • 中小企業は、会社の規模・経営スタイル・将来の展望に応じて判断
  • 形式だけ設置して運営しないことが最もリスクが高い
  • 設置・廃止には株主総会の特別決議と登記手続きが必要

→ 取締役会の運営全般については『取締役会とは?設置義務・運営方法・決議事項を弁護士が解説』をご覧ください。

弁護士法人エースでは、取締役会の設置に関するご相談を初回無料でお受けしています。

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電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

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