会社設立時の株主・役員構成|共同経営・親族経営のリスク対策
「友人と一緒に会社を立ち上げたい」「親族で経営する会社を作りたい」——このようなご相談は少なくありません。しかし、設立時は良好な関係であっても、事業が軌道に乗り始めた頃に経営方針の違いで対立したり、利益配分をめぐってトラブルになったりするケースは珍しくありません。
特に出資比率を50:50にした結果、重要な意思決定ができなくなったという相談や、共同経営者の退任時に株式買取をめぐる紛争に発展したという事例は、弁護士として数多く目にしてきました。
本記事では、会社設立時の株主構成・役員構成について、将来のトラブルを防ぐための設計方法を解説します。共同経営や親族経営を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
INDEX
株主構成を決める際の基本
会社設立において、株主構成の設計は極めて重要です。株主は会社の所有者であり、議決権を通じて会社の重要事項を決定する権限を持ちます。
議決権と支配権の関係
株式会社における議決権は、原則として1株につき1議決権です。株主総会の決議には、以下の3つの種類があります。
普通決議(過半数で可決)
– 役員の選任・解任
– 役員報酬の決定
– 計算書類の承認
特別決議(3分の2以上で可決)
– 定款変更
– 事業譲渡
– 合併・解散
– 株式の発行
特殊決議(全株主の同意など)
– 役員等の損害賠償責任の免除
– 全株株式を会社が取得できる内容にする定款変更
– 組織再編の一部
このため、持株比率によって、会社に対する支配力が大きく異なります。
重要な議決権割合とその意味
| 持株比率 | 支配力 |
|---|---|
| 100% | 完全支配。すべての決議を単独で可決できる |
| 66.7%(3分の2)以上 | 特別決議を単独で可決できる。定款変更や組織再編も可能 |
| 50%超 | 普通決議を単独で可決できる。役員の選解任が可能 |
| 50% | 単独では何も決められない。相手方と同数のため膠着状態に陥るリスク |
| 33.4%(3分の1)以上 | 特別決議を否決できる。拒否権を持つ |
| 33.3%以下 | 単独では決議を否決できない |
特に注意すべきは50%対50%の出資比率です。この場合、両者の意見が対立すると、どの決議も可決できなくなり、会社経営が完全に停滞してしまいます。
→ 定款で株主構成を設計する方法については『定款の作成と記載事項|会社の憲法を正しく作るポイント』をご覧ください。
共同経営でよくあるトラブル
共同経営では、設立時には想定していなかったトラブルが発生することがあります。実際に弁護士として相談を受けた事例をもとに、よくあるトラブルパターンを解説します。
方針対立(50:50問題)
事例
IT企業を友人2人で設立し、出資比率を50:50としたAさん。設立から3年が経ち、事業が成長してきたところで、友人は「新規事業に投資したい」、Aさんは「既存事業を深掘りしたい」と意見が対立。株主総会で何も決まらない状態が半年以上続いた。
このケースでは、どちらかが折れるか、第三者を入れて調停するしかありません。しかし、設立時に以下のような対策を取っていれば、このような事態は防げた可能性があります。
対策例
– 出資比率を51:49にして、最終的な意思決定権限を明確にする
– 株主間契約で「意見が対立した場合の解決方法」を定めておく
– 取締役会を設置し、意思決定の迅速化を図る
→ 取締役会の設置については『取締役会の設置義務とメリット・デメリット』で詳しく解説しています。
株式買取をめぐる紛争
事例
飲食業を共同経営していたBさん。共同経営者が「別のことがやりたい」と退任を希望し、「自分の持株を買い取ってほしい」と要求してきた。しかし、会社の株価をどう算定するかで意見が合わず、最終的に訴訟に発展した。
非上場会社の株価は、取引所で決まるわけではないため、評価方法によって金額が大きく変わります。純資産方式、類似業種比準方式、DCF法など複数の評価方法があり、どれを採用するかで数倍の差が生じることもあります。
対策例
– 株主間契約で「退任時の株式買取ルール」を定めておく
– 株価の算定方法をあらかじめ合意しておく
– 「退任者は額面で売却する」などの条項を設ける
役員報酬の不公平感
事例
兄弟で会社を設立したCさん。出資比率は50:50で、二人とも取締役として経営に参画。しかし、兄は営業で会社に大きく貢献しているのに対し、弟はあまり働いていない。それなのに役員報酬が同額であることに不満を感じている。
役員報酬は株主総会の普通決議で決定します。50:50の出資比率では、両者の同意がなければ報酬額を変更できません。貢献度に差があるのに報酬が同額という状態は、不公平感につながりやすく、トラブルの原因となります。
対策例
– 役員報酬の決定方法を株主間契約で定めておく
– 貢献度に応じた報酬体系を設計する
– 第三者(顧問税理士など)が報酬を決定する仕組みを作る
→ 株主総会でのトラブル対策については『株主総会のトラブル事例と対策』をご覧ください。
親族経営のリスクと対策
親族間で会社を経営する場合、共同経営とは異なるリスクが存在します。特に相続と離婚は、経営に大きな影響を与える可能性があります。
相続発生時のリスク
事例
父が創業した会社を長男が継いでいたDさん。父が急逝し、株式は相続財産として長男・次男・長女の3人に分割されることに。長男は経営を継続したいが、次男・長女は株式を現金化したいと主張。経営権をめぐる争いに発展した。
株式も相続財産の一部です。遺言がない場合、法定相続分に応じて相続人全員に株式が分割されます。事業承継を予定している場合、このリスクへの対策は不可欠です。
対策例
– 経営者が遺言を作成し、株式の承継先を指定する
– 株式の譲渡制限を定款に定めておく
– 株主間契約で「相続人への譲渡制限」を設ける
– 生前贈与で計画的に株式を後継者に移転する
離婚時の株式分割問題
事例
夫婦で会社を経営していたEさん。離婚することになり、妻が「婚姻中に増加した株式の価値は財産分与の対象だ」と主張。会社の株式の半分を渡すか、相当額を現金で支払うよう求められた。
婚姻中に取得した財産は、原則として財産分与の対象となります。これには会社の株式も含まれます。特に婚姻中に会社が成長し、株式の価値が大きく上昇した場合、その増加分が財産分与の対象となる可能性があります。
対策例
– 婚前契約で株式を財産分与の対象外とする
– 配偶者には株式を持たせない(他の方法で報いる)
– 会社法上の株式の譲渡制限を活用する
事業承継との関連
親族経営の会社では、事業承継を見据えた株式設計が重要です。現経営者が保有する株式を、いつ、誰に、どのように引き継ぐかを計画的に進める必要があります。
事業承継には主に以下の3つの方法があります。
| 方法 | 概要 | 留意点 |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 子や親族に株式を承継 | 相続税・贈与税対策が必要 |
| 従業員承継 | 従業員や役員に承継 | 買取資金の確保が課題 |
| M&A | 第三者に株式を譲渡 | 事業の継続性確保が重要 |
いずれの方法でも、株主間契約や定款の設計が承継の成否を左右します。早い段階から専門家に相談し、計画的に準備を進めることが重要です。
→ 事業承継の方法について詳しくは『事業承継の3つの種類と選び方|親族内・社内・M&Aの比較』をご覧ください。
株主間契約とは
株主間契約(株主同士で取り決めを結ぶ契約)は、複数の株主がいる会社において、株主間のルールを定める契約です。定款とは異なり登記されないため、外部に知られることなく、柔軟な取り決めが可能です。
契約で取り決めるべき事項
株主間契約で定めるべき主な事項は以下のとおりです。
1. 株式の譲渡に関する事項
– 先買権(他の株主が優先的に買い取る権利)
– ドラッグ・アロング条項(多数株主が株式を売却する際、少数株主も一緒に売却させる権利)
– タグ・アロング条項(少数株主が多数株主の売却に参加する権利)
2. 経営に関する事項
– 取締役の指名権
– 重要事項の承認手続き
– 情報開示義務
3. 株主間の紛争解決に関する事項
– デッドロック条項(意思決定が膠着した場合の解決方法)
– 仲裁条項
4. 退出に関する事項
– 株式買取請求権(プットオプション)
– 株式売渡請求権(コールオプション)
– 株価の算定方法
定款との違い
| 項目 | 株主間契約 | 定款 |
|---|---|---|
| 効力範囲 | 契約当事者間のみ | 会社・株主・役員に及ぶ |
| 登記 | 不要(非公開) | 必要(公開) |
| 変更手続き | 当事者の合意 | 株主総会の特別決議 |
| 違反時の効果 | 債務不履行(損害賠償) | 法的に無効となる |
| 柔軟性 | 高い | 会社法の制約あり |
株主間契約は、定款を補完するものとして活用されます。例えば、定款では定めにくい「株式の評価方法」や「デッドロック時の解決手順」などを、株主間契約で詳細に規定することができます。
→ 株主間契約は契約書の一種です。契約書作成について詳しくは『契約書の作成・リーガルチェック』をご覧ください。
デッドロック条項の設計
デッドロック(膠着状態)とは、株主間の意見が対立し、会社の意思決定ができなくなる状態を指します。特に50:50の出資比率の場合、デッドロックに陥るリスクが高いため、あらかじめ解決方法を定めておくことが重要です。
デッドロックが発生する場面
- 経営方針(事業拡大か縮小か)で意見が対立
- 役員人事(誰を取締役にするか)で合意できない
- 大型投資の可否で意見が分かれる
- 配当政策で対立する
具体的な条項例
1. 協議条項
一定期間(例:30日間)、当事者間で誠実に協議することを義務付ける条項です。多くの株主間契約で最初のステップとして設定されます。
2. 調停・仲裁条項
協議で解決しない場合、第三者(弁護士、仲裁機関など)の判断に委ねる条項です。
3. ロシアン・ルーレット条項
一方の株主が株式の買取価格を提示し、相手方が「その価格で売る」か「その価格で買う」かを選択する条項です。公正な価格を提示しないと自分が不利になるため、適正価格での解決が期待できます。
4. テキサス・シュートアウト条項
両当事者が封印入札で買取価格を提示し、高い価格を提示した側が相手の株式を買い取る条項です。
5. 強制売却条項
一定期間内にデッドロックが解消しない場合、会社全体を第三者に売却する条項です。
条項設計のポイント
デッドロック条項を設計する際は、以下の点に注意が必要です。
- 発動要件を明確にする:どのような状態が「デッドロック」に該当するかを具体的に定義する
- 段階的な解決手順を設ける:いきなり強制買取ではなく、協議→調停→買取という段階を設ける
- 資金力の差を考慮する:買取条項は資金力のある株主に有利になりやすいため、バランスを考慮する
- 税務・会計上の影響を検討する:株式の買取は課税関係が生じる可能性があるため、専門家と相談する
弁護士に相談するメリット
株主構成や役員構成の設計は、会社設立時の重要な意思決定です。この設計を誤ると、将来的に深刻な紛争に発展する可能性があります。
紛争予防の観点
弁護士に相談する最大のメリットは、紛争を予防する設計ができる点です。司法書士や税理士は登記や税務の専門家ですが、紛争解決の実務経験は限られています。一方、弁護士は日常的に紛争対応を行っているため、「どのような設計がトラブルを招くか」を熟知しています。
実際、弁護士として共同経営や親族経営のトラブルに対応する中で、「設立時にこの条項を入れておけば防げた」と感じるケースは少なくありません。
弁護士法人エースの強み
1. 経営者視点でのアドバイス
代表弁護士は複数法人の代表を兼任しており、弁護士でありながら経営者としての実体験を持っています。法的に正しいだけでなく、経営的に実効性のあるアドバイスが可能です。
2. 株主間契約・定款の作成実績
共同経営や親族経営の会社設立について、多数の相談実績があります。業種や規模、株主関係に応じた最適な設計をご提案します。
3. 紛争対応の経験
万が一トラブルに発展した場合も、弁護士として交渉・訴訟対応が可能です。紛争の予防から解決まで一貫してサポートできます。
4. 設立後の顧問契約でトータルサポート
会社設立時から弁護士と関係を構築しておくことで、設立後に発生する契約書チェック、労務問題、取引先とのトラブルなどにもスムーズに対応できます。
→ 取締役の法的責任については『取締役の責任と義務|会社設立前に知っておくべきリスク』をご覧ください。
まとめ
会社設立時の株主・役員構成は、将来の経営に大きな影響を与えます。特に共同経営や親族経営を予定している場合は、以下のポイントを押さえて設計することが重要です。
株主構成のポイント
– 50:50の出資比率は避ける(意思決定の膠着リスク)
– 議決権割合と支配権の関係を理解する
– 将来の株式承継も見据えて設計する
株主間契約で定めるべきこと
– 株式の譲渡制限・先買権
– 退任時の株式買取ルール
– デッドロック時の解決方法
– 株価の算定方法
親族経営の注意点
– 相続発生時のリスクに備える
– 離婚時の株式分割問題を想定する
– 事業承継を見据えた設計を行う
会社設立は単なる登記手続きではなく、会社の将来を左右する重要な意思決定の連続です。株主構成や株主間契約の設計は、専門家のサポートを受けることをお勧めします。
→ 会社設立全体の流れについては『会社設立の法律相談|弁護士に依頼するメリットと手続きの流れ』をご覧ください。
弁護士法人エースでは、会社設立に関するご相談を初回無料でお受けしています。共同経営や親族経営のリスク設計、株主間契約の作成など、お気軽にご相談ください。
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電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
竹内 省吾
- 経歴
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慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)
監修者プロフィール
弁護士法人エース 代表弁護士
成田 翼
- 経歴
-
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員