M&A・事業承継の基礎知識|中小企業の後継者問題を解決する方法

  • 2026/6/11

「後継者がいない」「子どもが会社を継いでくれない」――中小企業の経営者にとって、事業承継は避けて通れない重要な経営課題です。中小企業庁の調査によると、2025年には70歳以上の中小企業経営者が約245万人に達し、そのうち約127万人が後継者未定とされています。後継者問題を放置すれば、黒字であっても廃業を余儀なくされるケースも少なくありません。

しかし、事業承継の方法は親族への引き継ぎだけではありません。M&A(Mergers and Acquisitions:合併・買収)を活用すれば、第三者に会社を引き継ぐことも可能です。この記事では、事業承継の基礎知識から具体的な方法、税金対策、弁護士に依頼するメリットまで、中小企業の経営者が知っておくべきポイントを総合的に解説します。

事業承継とは?M&Aとの関係

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。単に代表者が交代するだけでなく、以下の3つの経営資源を次世代に移転する必要があります。

承継すべき3つの経営資源

経営資源 内容 具体例
人(経営権) 経営者としての地位・権限 代表権の移転、後継者の育成
資産 会社の財産・株式 自社株式、事業用不動産、設備、資金
知的資産 目に見えない経営資源 経営ノウハウ、技術、人脈、ブランド、顧客基盤

特に中小企業では、経営者個人の人脈やノウハウに依存している部分が大きく、これらの「知的資産」をいかにスムーズに引き継ぐかが事業承継の成否を分けるポイントになります。

M&Aは事業承継の方法のひとつです。親族や社内に後継者が見つからない場合でも、第三者への株式譲渡や事業譲渡によって会社を存続させることができます。近年は中小企業のM&A件数が増加しており、後継者問題の有力な解決策として注目されています。

→ 詳しくは『事業承継の3つの種類と選び方|親族内・社内・M&Aの比較』をご覧ください。

事業承継の3つの方法

事業承継の方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴を理解したうえで、自社に最適な方法を選ぶことが大切です。

親族内承継

経営者の子どもや親族に事業を引き継ぐ方法です。従来もっとも一般的な承継方法でしたが、近年は子どもが家業を継がないケースが増えています。

  • メリット: 社内外の関係者から理解を得やすい、早期に後継者を決めて十分な育成期間を確保できる
  • デメリット: 後継者の経営能力が不十分な場合がある、相続税・贈与税の負担が大きくなりやすい

親族外承継(社内承継)

役員や従業員など、親族以外の社内人材に経営を引き継ぐ方法です。MBO(Management Buyout:経営陣による買収)やEBO(Employee Buyout:従業員による買収)とも呼ばれます。

  • メリット: 事業内容を熟知した人材に引き継げる、経営の継続性を確保しやすい
  • デメリット: 株式取得のための資金調達が課題になりやすい、個人保証の引き継ぎが難しい場合がある

M&A(第三者承継)

社外の第三者に会社を譲渡する方法です。株式譲渡(会社ごと売却)と事業譲渡(特定の事業のみ売却)の2つの方式があります。

  • メリット: 後継者がいなくても事業を存続できる、譲渡対価を得られる(オーナーの引退資金)、シナジー効果による事業拡大の可能性
  • デメリット: 希望する条件の買い手が見つからない場合がある、従業員の雇用条件や企業文化が変わる可能性がある

→ 各方法の比較や選び方について、詳しくは『事業承継の3つの種類と選び方|親族内・社内・M&Aの比較』をご覧ください。

→ M&Aの具体的な進め方については『M&Aの流れと手続き|検討開始からクロージングまでの全体像』で解説しています。

→ 事業の再建については『事業再生とは?中小企業が知るべき手法・手続きの流れと弁護士活用のポイント』をご覧ください。

M&A・事業承継の手続きの流れ

M&Aによる事業承継は、一般的に以下のステップで進みます。準備から完了まで、半年〜1年程度かかるケースが多いため、早めの着手が重要です。

Step 1:準備・検討

事業承継の方針を決定し、自社の企業価値を把握します。弁護士やM&Aアドバイザーなど、信頼できる専門家に相談するのもこの段階です。

Step 2:マッチング・交渉

NDA(秘密保持契約)を締結したうえで候補先を選定し、トップ面談を経てLOI(Letter of Intent:意向表明書)や基本合意書(MOUとも呼ばれます)を取り交わします。

Step 3:デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンス(DD)とは、買い手が売り手の法務・財務・税務・労務などを詳細に調査する「買収監査」のことです。DDの結果は最終的な譲渡条件や契約内容に大きく影響します。

→ DDの種類や進め方の詳細は『デューデリジェンス(DD)とは?種類・進め方・チェックポイント』をご覧ください。

Step 4:最終契約・クロージング

DDの結果を踏まえて最終条件を交渉し、株式譲渡契約書(SPA)や事業譲渡契約書(APA)を締結します。取締役会や株主総会での承認決議を経て、クロージング(最終的な取引実行・引き渡し)を迎えます。

→ M&A契約書の重要条項については『M&A・事業承継の契約書|株式譲渡契約・事業譲渡契約の重要条項』で詳しく解説しています。

Step 5:PMI(統合プロセス)

PMI(Post Merger Integration:統合プロセス)は、M&A後に両社の事業・組織・人材を統合する作業です。従業員への説明、取引先への対応、社内制度の統一など、PMIの成否がM&A全体の成功を左右します。

→ M&Aの手続き全体について、詳しくは『M&Aの流れと手続き|検討開始からクロージングまでの全体像』をご覧ください。

事業承継に関する税金と対策

事業承継では、承継方法に応じてさまざまな税金が発生します。特に中小企業のオーナー経営者にとって、自社株の評価額と税負担は大きな関心事です。

承継方法別の主な税金

承継方法 主な税金
贈与による承継 贈与税
相続による承継 相続税
M&A(株式譲渡) 所得税(譲渡所得)、住民税
M&A(事業譲渡) 法人税、消費税

自社株評価のポイント

非上場の中小企業の株式は、類似業種比準方式・純資産価額方式などの方法で評価されます。業績が好調な企業ほど評価額が高くなり、承継時の税負担が大きくなる傾向があります。

事業承継税制の活用

事業承継税制(非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予制度)を活用すれば、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税が猶予・免除されます。特例措置の適用期限は2027年12月末までとなっているため、制度の活用を検討している場合は早めの対応が重要です。

→ 税金対策の具体的な方法は『事業承継の税金と自社株評価|事業承継税制の活用ポイント』で詳しく解説しています。

このような事業承継の税務・法務に関するお悩みは、弁護士法人エースにお気軽にご相談ください。経験豊富な弁護士が、経営者の視点に立って最適な解決策をご提案いたします。

M&Aで必要となる契約と法務

M&Aでは、手続きの各段階でさまざまな契約書の作成が必要になります。契約内容が将来のリスクを左右するため、専門家のサポートを受けることが重要です。

M&Aで必要となる主な契約書

段階 契約書 内容
初期段階 秘密保持契約(NDA) M&A情報の漏洩を防止
交渉段階 意向表明書(LOI) 買い手の買収意向を書面化
交渉段階 基本合意書(MOU) 主要条件の合意を確認
最終段階 株式譲渡契約書(SPA) 株式の譲渡条件を確定
最終段階 事業譲渡契約書(APA) 事業の譲渡条件を確定

特に重要なのが、最終契約書に含まれる表明保証条項です。売り手・買い手がそれぞれ一定の事実を「表明」し、その正確性を「保証」するもので、DDで把握しきれなかったリスクをカバーする役割を果たします。

→ 各契約書の重要条項については『M&A・事業承継の契約書|株式譲渡契約・事業譲渡契約の重要条項』をご覧ください。

→ DDの進め方やチェックポイントは『デューデリジェンス(DD)とは?種類・進め方・チェックポイント』で解説しています。

事業承継・M&Aを弁護士に依頼するメリット

事業承継やM&Aを進める際、M&A仲介会社に依頼するケースも多いですが、弁護士に依頼することには独自のメリットがあります。

M&A仲介会社と弁護士の違い

M&A仲介会社は売り手と買い手の「マッチング」を主な役割としています。一方で、仲介会社は双方から手数料を受け取る仕組みのため、構造的に利益相反のリスクがあることが指摘されています(中小企業庁も2024年8月にM&Aトラブルに関する注意喚起を公表しています)。

弁護士は依頼者の利益を最優先にする法的義務を負っています。M&Aの交渉・契約締結において、経営者の味方として動ける存在です。

弁護士法人エースが選ばれる理由

経営者視点でのアドバイス
代表弁護士は複数法人の代表を兼任しており、弁護士でありながら経営者としての実体験を持っています。「法的には正しいが、経営的には得策ではない」といった判断も含め、経営者目線でアドバイスします。

法務・税務・労務のワンストップ対応
所属弁護士は全員が通知税理士登録済みで、事業承継税制や自社株評価にも対応可能です。また、グループ内に社労士法人を擁しており、労務DD(未払い残業代・雇用契約のリスク調査)や従業員の引き継ぎまで一貫してサポートできます。

複数担当制による迅速対応
M&Aはスピードが重要です。複数の弁護士・パラリーガルがチームで対応するため、レスポンスの早さに定評があります。

LINEでの気軽なコミュニケーション
「事業承継を考え始めたばかりで、まだ相談するほどではない」と感じる方も多いかもしれません。弁護士法人エースでは、LINEで担当弁護士と直接やり取りができるため、ちょっとした疑問や不安も気軽に相談できます。

→ 費用相場や相談先の選び方については『事業承継・M&Aの弁護士費用と相談先の選び方』をご覧ください。

まとめ

事業承継は、中小企業の経営者にとって会社の将来を左右する重要な経営判断です。この記事のポイントを整理します。

  • 事業承継には3つの方法がある: 親族内承継・親族外承継(社内承継)・M&A(第三者承継)。自社の状況に合った方法を選ぶことが大切
  • M&Aは後継者問題の有力な解決策: 後継者がいなくても、第三者への譲渡で事業を存続できる
  • 手続きには専門知識が必要: DD・契約書作成・税金対策など、法務・税務の専門知識が欠かせない
  • 早めの準備が成功の鍵: 事業承継には半年〜数年の準備期間が必要。事業承継税制の特例措置にも期限がある
  • 信頼できる専門家への相談が重要: 弁護士は依頼者の利益を最優先にする法的義務があり、M&A仲介会社とは異なる立場でサポートできる

「まだ先の話」と思っていても、事業承継は早めに動き始めることが大切です。まずは現状の把握と方針の検討から始めましょう。

弁護士法人エースでは、M&A・事業承継に関するご相談を初回無料でお受けしています。LINE・電話・メールでお気軽にお問い合わせください。経営者のパートナーとして、事業承継の準備から実行まで一貫してサポートいたします。

お問い合わせ
電話相談受付:0120-419-155(年中無休 8:00〜22:00)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

竹内 省吾

経歴
慶應義塾大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2011)
弁護士登録(2012)
第一東京弁護士会・こども法委員会 委員(2020まで)
三田法曹会 会員
日本交通法学会 会員
東京都子供の権利擁護調査員(2020まで)
静岡県弁護士会 会員(2020から2023まで)
第一東京弁護士会 会員(2023)

監修者プロフィール

成田 翼

弁護士法人エース 代表弁護士

成田 翼

経歴
明治大学法学部卒業(2009)
慶應義塾大学法科大学院卒業(2012)
弁護士登録(2013)
神奈川県弁護士会 所属
刑事弁護委員会 委員
三田法曹会 会員

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